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8章 アレクシアと竜の谷の人々

さぁ!アウラードに帰りますよ!!

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事情を聞いたアランカルトの目が急に輝き出した。

「では⋯私はミルキルズ様の部下になるんですね!ああ!素晴らしい!!⋯⋯ですがそのお姿は⋯?」

アランカルトは気配でミルキルズだと分かってはいたが、若々しいその姿に驚きを隠せない。

「ちょっと!シアの面倒も見るんでしゅよ!!」

アランカルトが全く別の事で感動しているのを見てプンスカ怒るアレクシアと、そんな愛娘を宥めるルシアード。

「わしの事は先輩と呼ぶんじゃぞ!若造!!」

「はい!誠心誠意、ミルキルズ先輩に忠誠を誓います!」

「馬鹿ちんがーー!!」

牢から出て真っ直ぐにミルキルズの前に跪くアランカルトを見て、アレクシアの怒りに満ちた鉄拳がアランカルトの頭にヒットして彼は崩れ落ちた。

「ほぉ~!さすがわしのひ孫じゃな!!」

「ふん!もしアランカルトがミスしたら先輩のミル爺のお給料を減額でしゅよ!」

アレクシアの怒りを察したミルキルズが拍手をしながら褒めるが逆効果だった。

その後、アランカルトの仲間達も厳重に処罰される事になった。ロウゴイヤ率いる屈強な老戦士による地獄の更生訓練三百年の刑だ。その刑を言い渡された瞬間に彼らは今すぐに殺して下さいと泣いて懇願してきたらしい。アランカルトの両親は誇りだった戦士から強制的に引退させられて、地獄の更生訓練に参加させられる事になった。そしてアランルドも完全に隠居して孫の更生する日を待つ事にした。

そしてアレクシアは約束していたロウゴイヤの亡き妻であるミミアのお墓にやって来ていた。

「ミミアオババ!お久しぶりでしゅね!親友が帰って来まちたよ!」

墓前でそう報告するアレクシアを見ていたロウゴイヤやロウリヤが嬉しくて涙を流していた。

「うぅ⋯ミミア、良かったのう~!わしもこの光景を見れて幸せじゃ!」

「そうですね⋯父上もここにいれば⋯」

ロウリヤは父親であるロウジがずっと心配であった。孫であるロウにも早く会わせてあげたいのに一度も里に帰ってこないのだ。アリアナの死後、魂が抜けた様な父親を心配していたが、いきなり旅に出ると言い出した。その時は少しでも元気になればと軽い気持ちで賛成したのだが、まさかこんなにも音沙汰がないとは思ってもみなかった。

心配だったが、息子であるロウを育てるのとウリドの畑を手伝うのに精一杯で探す事が出来なかった。だが、アリアナが生まれ変わって現れてくれたので、また竜族も、父上にも変化があると信じたいロウリヤはまた奇跡を願うのであった。

一方ランゴンザレスは一足早く帰還する事を報告する為にアウラード帝国に戻り(アレクシアが機嫌悪いから逃げてきたわけじゃないわよ!)、すっかり大人しくなりミルキルズの横にピッタリと張り付いているアランカルトを睨みつつ屋敷に戻って来たアレクシアと一同を迎えたオウメだが、やはりアランカルトを警戒していた。

「お帰りなさいませ。ゆっくりは⋯してられないんですね?」

悲しそうに笑うオウメを抱きしめるアレクシア。

「たまに帰って来ましゅ!オウメの大福は世界一でしゅからね!!」

「ふふ⋯それは作り甲斐があります。体に気をつけてあまり暴れない様にして下さいよ?」

アレクシアを十分に抱きしめた後、オウメはミルキルズの元へ歩いて行く。

「ミルキルズ様、私はあの男が心配です⋯だからちゃんと見張って下さい。貴方が一緒に行く事はもう分かっていましたからそれぐらいの仕事はして下さいよ!」

「ああ、分かっておる!ここだけの話じゃが、彼奴には強力な監視魔法をかけたから何かしようと企んだら直ぐにわしに分かる様にしたんじゃ」

「ふふふ⋯あの子に危害を加えようとしたその時は私が手を下しますわ」

笑いながらも目が一切笑っていないオウメを見て苦笑いするしかないミルキルズだが、足元でアレクシアの五匹の子犬従魔達がブルブルと震えていた。

そして離れた所では魔国国王デズモンドと魔国の大賢者ポーポトスがウロボロスと何やら話していた。それが気になったアレクシアが聞き耳を立てていた。

「本当について行くのか?」ポーポトスがウロボロスを見ながら考え込んでいる。

『ああ、森はあいつらに任せても大丈夫だろうしな。それにアレクシアは俺が制御しないと何をするか分からないし!』

そう言いながら嬉しそうに尻尾を振るウロボロス。

「確かに魔ヒュドラ兄弟なら大丈夫でしょうが⋯あまりライバルが増えるのは気に入りませんので反対です」

『お前は少し遠慮した言い方が出来ないのか?』

弟子の失礼な発言に呆れるウロボロス。

原初の竜に対してもはっきり言うデズモンド。そんな彼も一緒に行くつもり満々だ。魔国は安定しているし、父上や子供達がいるので取り敢えずアウラード帝国に滞在する予定だ。ポーポトスもポーポトスでアレクシアとまた師弟として過ごしたいのだ。そんな魔国組の元へアレクシアがよちよちとやって来た。

「あんた達も来るんでしゅか?」

『そうだ!嬉しいだろ!?』

パタパタとアレクシアの周りを飛び回るウロボロス。

「そのままではダメでしゅよ!!擬態になれましゅか?」

『うっ⋯そうか。じゃあこれならどうだ!!』

そう言って光出したウロボロスは、漆黒の小鳥に擬態した。

「おお!カッコ可愛いでしゅね!!」

『だろ!』

アレクシアに褒められて嬉しそうに飛び回る小鳥のウロボロス。アレクシアの子犬従魔達も大興奮でウロボロスと戯れている。

「父上、そんなわけで大所帯でしゅ。合宿所を作らないとダメでしゅね!シアの庭に作っていいでしゅか?」

「む。そうだな、アレクシアの好きにしろ。だが⋯まずはクリアしなきゃいけない試練があるぞ」

感情をあまり出さないルシアードが、気のせいか少し動揺している様に見える。だがその理由が後に分かり地獄を見ることになる。

荷物をまとめて広場にやって来たアレクシアを里の皆が待っていてくれた。オウメから大福をたくさんもらい、ロウやトトからは宝物の木の実をたくさんもらった。そしてプニとピピデデ兄弟とは泣きながら近いうちの再会を誓った。ウリドはアレクシアが盗む前にたくさんのオレンをくれた。ロウゴイヤ率いる屈強な老戦士達からは何故か胴上げされアウラード帝国に帰る前にあわや死にかけたアレクシアであった。

アランカルトの元へやって来たアランルドは泣いて孫に謝り、手紙と荷物を渡していた。アランカルトは泣いているアランルドに驚いて戸惑っていたが、アレクシアに促されるままに握手をした。

「頑張って来なさい」

「⋯⋯ありがとうございます」

一言だけだったが、少し進歩した事に満足するアレクシアであった。

「あんたの仲間達は軽い刑でシアは不満でしゅが⋯ジジイにも考えがあってだと思うから何も言いましぇん」

「おい、ロウゴイヤ爺達の訓練三百年を甘く見るなよ?」

そこへやって来たゼストがアレクシアに苦言を言う。ゼストはリリノイスに正式に族長代理を言い渡し、当たり前に一緒に行く気満々だ。リリノイスも諦めているのか、胃の辺りをさすりながらやって来たのでアレクシアはそっと静かに合掌した。

「おい嫌味か、馬鹿娘。⋯⋯まぁ、たまには帰って来い。トトが悲しむからな。勝手に舎弟にしたんだ、責任は取れ」

「リリーしゃん!よっ!本当は良い竜!良い男!良い⋯イダっ!」

言いかけてリリノイスに頭をチョップされ、地味に痛くて蹲ったアレクシアを心配する子犬従魔達と小鳥ウロボロス。ルシアードは本気でリリノイスに攻撃を仕掛けるがポーポトスやロウゴイヤ達に止められている。

アランカルトはというと仲間達に下された刑を知りガタガタと震えていた。

「じゃあ⋯シアはまた戻って来ましゅから!皆んな元気でいて下しゃいな!」

またの再会を約束してアレクシアは大所帯を連れてアウラード帝国に戻って行ったのだった。


















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