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書籍表紙

番外編 もしこの世界にお正月があったなら⋯

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アレクシアは夕食を終えると、いつもの様に父親であるアウラード大帝国皇帝陛下ルシアードに大事そうに抱っこされて部屋に戻ってきた。

「⋯⋯父上、明日はおしょうが、つーでしゅね」

アレクシアはよちよちと寝巻きに着替えながらちらっとルシアードを見る。

「⋯おしょうが、つーではない。お正月だ。」真面目に突っ込むルシアード

「シアは楽しみでしゅ!祝った事がないでしゅから⋯」

そう言って悲しそうに下を向いてしまった愛娘を優しく抱きしめるルシアード。

「む、そうだな⋯全て俺のせいだ。だが明日は違うぞ?盛大にお祝いしよう!」

そう言ってアレクシアの背中を優しくさすりながら徐に抱き抱えるとベッドまで連れて行くルシアード。今まで苦労をかけてしまった愛娘と来年こそは共に新年を盛大に祝う為にこっそりと準備をしてきたルシアードは、その為に憎たらしい事この上ない奴等にも協力を求めた程だ。

「う⋯早くあちたにならないか⋯な」

「ああ、ほら早く寝ろ。そしたらすぐに朝になっている」

眠気と闘う愛娘を見て愛しそうに微笑む光景はまるで恋人の様だ。控えていた女官はそう思いながら部屋を出て行ったのだった。



そして次の日。

「朝でしゅ!!あけまちておめでとうごじゃいましゅ!!」

そう言いながら勢い良く起きた愛娘に驚いてこちらも勢い良く起き上がるルシアード。

「おい、まだ朝の五時だぞ?まだ寝ていよう。そのうちに女官がやって来⋯「馬鹿ちんでしゅか!!」

元気な愛娘を宥めてまた寝かせようとしたルシアードだが、久しぶりの言葉を浴びせられた。

「もうおしょうが、つーでしゅよ!!早く起きて下しゃいな!」ベッドを降りて小躍りをしているアレクシア。

「おしょうが⋯まぁいいか」

そんな楽しそうな愛娘を見て自然と笑顔になるルシアード。だが、こちらに近寄って来る嫌な気配に顔色が変わる。

「おい!アレクシアは起きてるか!?」

その声にいち早く気付いたアレクシアが嬉しそうによちよちと扉まで歩いていく。

「ジジイ!あけまちておめでとうごじゃいましゅ!!」

ドアの前でぴょんぴょん跳ねてドアの外にいる人物に挨拶するアレクシア。

「ああ、あけましておめでとう!っておい!ここを開けろ!娘の顔を見て挨拶したいんだ!」

「む。今何時だと思ってるんだ。まだ明け方だぞ?」

ドンドンと扉を叩くゼストと決して開けようとしないルシアード。彼の強力な結界が張られているので蹴破る事も出来ないはずだが、ゼストは最強種族“竜”でその長でもある。

ドドーーン!!!

次の瞬間には粉々になった扉とそれを見て唖然とするルシアード。アレクシアには事前にゼストが防御魔法をかけたので無事だ。

「おお、いたいた!アレクシア、こっち来い!!」

嬉しそうに両手を広げて待つゼストだが、アレクシアは動く前にもうある人物に抱えられていた。

「新年初めて見るのは絶対にお前にしたかった」

「⋯デズモンド。あけまちておめでとうごじゃいましゅ」

愛おしそうにアレクシアを抱きしめるのは、いつの間にか現れた魔国国王デズモンド。ルシアードもゼストも全く気付かなかった。多分転移魔法で来たのだろう。

「む。おい、アレクシアを離せ。ここはアウラード大帝国皇帝の部屋だぞ?勝手に入るとはな。国際問題にするぞ!」二人を睨み付けるルシアード。

「フッ。勝手にしろ。そのかわりアレクシアは魔国に連れて行くぞ?」不敵に笑うデズモンド。

「いや、こいつは竜の谷に俺と帰るんだ!」堂々と宣言するゼスト。

そう言ってお互いに睨み合う最強トリオ。

「良い加減にしなちゃい!!この馬鹿ちん共が!!せっかくのおしょうが、つーが台無しでしゅよ!!」

アレクシアの言葉に首を傾げるデズモンドとゼスト。

「おしょうが、つー⋯プッ」笑いを堪えるのに必死なデズモンド。

「者ども!ここに正座しなちゃい!!」

怒り爆発のアレクシアは三人を床に正座させ、説教を始めた。この中のたった一人だけでも世界を滅ぼせる力を持っているが、この幼子の前では形なしである。怒られているのに何処か嬉しそうな三人に呆れ果てているアレクシア。

「はぁ⋯言っても無駄でしゅね⋯。もう許まちゅから早くお年玉を下しゃいな!」

そう言って嬉しそうに両手を差し出す愛しい人に、先程までの歪み合いが嘘のように自然と笑顔になってしまう最強トリオであった。




「⋯⋯早く下しゃいな!」それでもぶれないアレクシアであった。





アレクシア『今年もお世話になりまちた!来年もシアをよろちくでしゅ!』
白玉『主しゃまをよろちくわ!!』
黒蜜『ちくわ!!』
みたらし『お腹減ったでしゅ!』
きなこ『ちくわ!!』
あんこ『ちくわ⋯!』
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