闘技者と演技者

崎田毅駿

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2-2.時は流れて……今に至る経緯その二

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 太平洋プロレスの落日を感じ取ったイースタンプロレスは、ここぞとばかりに志貴斗と電撃的に契約を結び、“連合軍”を結成。テレビ中継の復活を機に、対抗戦の火蓋を切り、過去の浅からぬ因縁で煽った上で、双方のトップである実木と獅子吼の一騎打ちをここぞとばかりに投入。Tドームでのビッグイベントを催すに至り、人気回復したかに見えた。なるほど、会場は超満員、対抗戦は白熱し、各団体を支持する客達による小競り合いを起こさせるほどだった。しかし、盛り上がりすぎは、メインに対するハードルを高くする。獅子吼はベテランでスタミナに難が出始めた頃。短期の決着を狙い、速攻を仕掛ける。実木も相手の作戦は百も承知、距離を取って長引かせようとする。突っ込んでいく獅子吼、かわす実木という構図が長々と続く。この鬼ごっこ的展開に輪を掛けたのが、両者の立場だ。共に団体の長で負けられない。事前に取り決めをするのであれば少なくとも緒戦は引き分けとし、決着戦としての第二、第三戦を催して一層稼ぐのが興行の常道かもしれない。だが、筋書きのない試合に賭ける考え方は両者一致していた。打ち合わせ一切なし、結果の取り決めは無論のこと、途中で出すべき技や見せ場についても、一毫の示唆すらせずに試合に臨んだ。
 その結果、試合がだらだらと長引く場合は、ある程度想像できたはず。一応、実木の思惑に近い試合展開ではあったが、野次が飛び始めると、彼のプロレスラー魂が色気を出す。敢えて技を受けて、退屈な流れに活を入れようとした。
 けれども、獅子吼には実木の見せた“穴”に、加減をした攻撃をする余裕はなかった。顎と脇腹に強烈な打撃を連続して打ち込み、一気に形勢逆転。しかし勝ちきれず。スタミナをなくした。実木は再逆転を企図し、ダメージの色濃い肉体にむち打って、反撃する。不細工で、原始的で、泥臭い、ともすれば子供の喧嘩のような手段で。
 もはや、きれいな決着は絶望的で、両者ノックアウトしかない状況なのは、観客の誰もが思っていただろう。そしてその通りのエンディングを迎えたものだから、観客の一部が騒ぎ出した。いや、一部ではなく、半分は優に超えていた。
 こうした観客の不満を抑制するのが主催団体の務めだが、あいにくとこのイベントはイースタンプロレスと志貴斗の共催。責任の所在や組織としての指揮系統がいささか曖昧で、観客への対応が後手後手になった。志貴斗側の若い者が大会場に不慣れで、騒ぐ観客に対してさらに煽るような台詞を吐いたのがとどめとなった。こうして世紀の格闘技イベントと謳われた実木vs獅子吼は、Tドームで初となる暴動騒ぎを起こすという最低最悪の結末で幕を閉じた。
 以降、国内のプロレス及び格闘技の興行は暗黒期に入る。
 そんな中でもプロレス業界を支えたのが、イースタンプロレスの小石川拓人であり、太平洋プロレスの宇城宙馬だ。十三年前の時点ではまだイースタンプロレス期待の若手に過ぎなかった二人が、各団体のトップに立ち、牽引する存在に育った。共に若手時代から小石川は実木二世、宇城は長羽二世と呼ばれるほどファイトスタイルや体格の似ていた彼らは、往年のファンを再びプロレスに連れ戻す力を有していた。こうして少しずつではあるが人気回復の兆しが出て来た。この流れを確固たるものにすべく、動いたのは実木率いるイースタンプロレスの方だった。
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