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────1・可視交線────
37公開告白④
しおりを挟む夏葉は見た目に反して武闘派らしい。
トチ狂って襲うように告白してくる体格のいい上級生を何度も投げ飛ばしているうちに、夏葉への告白はそういうものとなったのだそうだ。
だから、さっきの先輩のように振られるとわかっていて、諦めるために敢えて告知して襲ってくる人も増えてきたのだとか。
そこまで考えて、うーん、と首をひねる。
襲われることが日常化しているとか、小さな身体で自分より大きな男を投げ飛ばすとか、周囲もそれを見てもさほど驚かないことに驚いた。
──驚くポイントおかしいよ。おかしいよね?
まあ、話を聞くと、さっきの先輩はとても健全のような気もする。誰もいないところで襲う人だっていたということなのだろうし。
公でしっかり告知した上で潔く去っていった。だから、周囲も普通だったのだろうかとも思うわけだが……。
なんだか不安だ。
この学園にきて一ヶ月しか経っていないのに、マジョリティとマイノリティがわからなくなってくる。
蒼依が常識だと思っていたものは、ここではことごとく斜め上をいっている。
「ま、いつものことだし。そういうことも含めアオイもそのうち慣れるよ。それよりも、食堂に行こうよ」
「あ、うん」
何事もなく夏葉が話を進める。いちいち気にしていられないってことなのだろう。
無理しているようには見えないから、当事者が気にしていないのなら蒼依が気にするのも変である。
これが慣れなのか、夏葉の性格なのかわからないが、ここで生活するには多少のことでいちいち驚いて立ち止まっていたら身がもたなさそうだ。
同じ体格のものとして、その姿は頼もしく映る。
とにかく、寮部屋も二つ離れただけでそんなに遠くもないので、常日頃から夏葉や律樹には大変お世話になっていた。
彼らと早々に知り合えてラッキーだ。
「俺も一緒に行く」
二人で食堂に行く話をしていると、爽やかに手を上げた律樹。
「律樹も~?」
「悪いか?」
「悪くないけど、律樹も食堂あまり好きじゃないでしょ?」
「確かに好きではないけどアオイも行くんだろ? なら俺も久しぶりにスペシャルランチ食べたいし」
「ふ~ん」
「なに?」
「べつにー」
なんだかんだで、ここ最近は三人で行動することが多いので彼らのこれもただの戯れ合いだ。
蒼依はくすりと笑い、そのくらいにしてとくいっと二人の袖を引っ張った。
「二人とも、仲がいいよね。律樹も気になるスペシャルランチってすごく気になる。行くならそろそろ移動した方がいいんじゃない?」
「いや、言葉にされるとどうなのか」
律樹が微妙な顔で蒼依を見て、それから夏葉と視線を合わせた。
夏葉は肩を竦め、あははっと笑う。
「まあ、仲は悪くないわけだしいいんじゃない? それより食堂。すでに出遅れた感はあるけど、ゆっくり食べたいしね。じゃあ、行こっか」
「うん」
夏葉の言葉に、蒼依は力強く頷き席を立った。
ツンケンしているようでにやっと笑ながらの会話は、二人の仲の良さがうかがえる。
蒼依を挟んでいるように見える会話は、まだこの学園に来て日の浅い蒼依が二人の仲に遠慮しないようにするためなのだろうと思っている。
──本当、いい友人だっ!!
彼らの人の良さと出会えた幸運に、蒼依はふよっと笑みを浮かべた。
すると、二人同時に眦を緩め微笑まれ、ぽんぽんと頭を叩かれる。
「「ほんと、アオイは」」
「ほっこりするな」
「癒されるよねー」
その言葉とともに、律樹と夏葉のにこにこと年下でも見るような眼差しで蒼依を見てくる。
「ちょっ、子どもじゃないんだから」
しかも、夏葉とは身長もあまり変わりないのに……。
むぅっと頬を軽く膨らませるとまた左右から頭を叩かれ、「もうっ!!」と声を上げた。
「ごめん」
笑った表情のまま目を細めてはいるが、律樹がすぐに謝ってくる。
「同じ年なんだけど」
不服を申し立てると、夏葉が取り成すように言葉を重ねた。
「わかってるんだけどさ。アオイって何か構いたくなるんだよねー。雰囲気かな?」
「そうだな。なんか、見ておかないとどっかいきそうっていうか。なんだろうな。話せばアオイがしっかりとした考えを持ってるってわかるし、ふらふらしてるわけじゃないのに……。やっぱり、ほわんとした雰囲気かな? 色素の薄い灰色の瞳も神秘的だし」
んんーっと、律樹に上からおもむろに覗き込まれる。
「ちょっと失礼」
そう言うと、くいくいっと顎を掴まれてあらゆるところから観察し、その横に「ふむふむ」と夏葉も覗き込んで見分しだす。
雑誌モデルのイケメン爽やか代表みたいな律樹と、美少女代表みたいな夏葉にずいっと詰め寄られ、好き勝手に触られ蒼依はされるがままだ。
襟足をすっきり揃えた律樹は文字通り爽やかな笑顔なんだけど、さすが夏葉の友人だけあって今みたいにさりげなくだけど強引だ。
ここで抵抗しても、顎を掴まれた時点で蒼依には拒否権はない。
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