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────1・可視交線────
30通り名④
しおりを挟む「これも話そうと思ってたことなのだけど、この学園は寮対抗でイベントがあります。そういう時は桐生先輩や、南条先輩の頭脳と采配は見事ですから」
「へえ。イベント……。体育祭や文化祭以外にってこと?」
「そうです。他にもいろいろね。寮によって特色が違うし、毎年競い合い方も違うのだけど。まずは新歓イベントかな」
「そんなのがあるんだ?」
「説明受けてない?」
「うん。バタバタしてこっちに帰ってきたのが一昨日だったから、実は何も知らないんだ。通り名の話でもう一つ気になっていたことがあるのだけど、やっぱり翠が氷の女王?」
「嫌なんですけどね。会長職は特にそういうのつけられやすいみたいなんで」
ちらりと翠を見ると、不承不承小さく頷いた。
「やっぱり翠なんだ。うーん。女王?」
そこまでイメージは外れていないが、なぜ女王なのかと首を傾げると、翠の代わりに桐生が答えてくれた。
「ああ、それな。如月はあまり感情表に出さないからな氷で、高等部の会長が王だからこっちは女王になっただけ。で、西園寺が王子」
「結構、安直というか。西園寺先輩のは見た目をそのままって感じですね」
「ここは男子校だからそっち方面の娯楽が少ないからな。迷惑行為に及ばず、きゃっきゃっはしゃいでる分には問題ないらしいな。思春期真っ只中だから、仕方がないのだろう。一時しのぎでもこういうので発散してたらまだマシだろうしな。そういう意味では西園寺は一番わかりやすい位置だな」
「まさしくアイドル的な位置なんですね」
「役職と見た目がな」
「今の会長が甘んじて受け入れるべきだというので仕方がなくね」
なるほど、と蒼依が頷くと、西園寺が苦笑する。
「会長もそういうの好きだから」
確か南条もそのようなことを言っていた。この場合の、も、は南条や桐生のことを指すのだろう。
トップがその方針で、実権を握っている南条や桐生がそういったイベントに生き生きするのも頷ける。
「他人事のように聞いているけど、だからこそ姫は定着しやすいってことだぞ」
「……? あっ、えっ、そういう意味ですかっ!?」
桐生の言葉に蒼依は目を見張り、思わず翠と西園寺を交互に見た。
朝の高等部会長の俺様王、そしてここには女王と呼ばれる中等部会長の翠に、まさしく王子と呼ぶに遜色のない容姿の西園寺。
もともとそういった通り名が揃っているのなら、話題を提供している外部からきた自分の姫呼ばわりは、蒼依が思っている以上に浸透しているのかもしれない。
──おっそろしぃな~。
何が恐ろしいって、そういう思考がこの学園では当たり前になっていることだ。やっぱり、ここは自分の常識は通用しないことが多そうだ。
「男子校でこう言ってはなんなんですけど、自分なんかより女性のように可愛らしい顔の人は他にいると思うんですけど」
「まあ、いるにはいるけど。インパクトの問題だな。なにせ相手が悪かった。加賀も通り名あるからな」
「ああ~~、そうなんですね……」
そんなに有名なんだ。通り名付けるのそんなに流行ってるの?
娯楽みたいなものだと言っていたし、わからないでもないかなとも思うのだが、他に楽しいことなんて探せばもっとあるだろうし、やっぱりエネルギーも持って行き方この学園は独特だ。
目の前で、桐生がにっと楽しそうに笑う。
「なんだと思う?」
「少ししか接触してないので、知りませんよ」
「あいつは孤高の一匹狼だ」
「……ぽいですね」
聞いてもいないの教えられたそれは、非常に納得のいくものだった。
「そうだろ? 誰が見てもそれだしな。その孤高というのが今回のポイントで外せないらしい」
「ああぁぁぁ~、なるほど……」
蒼依は顔を埋めたくなった。
状況把握。いろいろ、本当にいろいろ理解した。
さすがにここまで説明されれば、自分のことがなぜここまで取り沙汰されるのかわかった。
外部生というだけで話題性があるのに、孤高というからには一人を好む青年が誰かと一緒。しかも、姫抱っこしたからだ。
──ありえない。なに、それ?
やっぱり始まりを間違ったのだ。あのとき、もっと必死で抵抗していればよかった。
蒼依は何度目かの後悔に、また打ちのめされた。
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