ブラック・スワン ～『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る～

転生メイドは挫けない！ ４

（リリア視点）


　正直、このお二人以外のルートならベアトリクス様は邪魔をなさらない気がします。

　特に今のベアトリクス様はゲームの我儘姫と違ってただの天使ないい子ですし。
　なのでヒロインちゃんがお二方以外を好きになってくれれば問題ないなと思っていた時期もありました。

　……が、
　ここにきて問題勃発！！

　カイザー様が学園の教師になられることにっ…！

　あの人絶対キャラじゃない？！

　記憶にないけど、寧ろあれで何のキャラでもないとかないし。
　学園の教師になることが何よりの証拠だし。

　アレだ、隠しキャラってやつでしょ？

　確か……隠しキャラって………黒いドラゴンって友達が言ってたっ！？

「っ！？」

　思わず声を上げそうになった口を両手で抑えた。
　危ない。叫ぶとこだった。

　ドラゴン……ってことはカイザー様魔族なのっ？！

　いや、でも……思い当ればそんな気もしてきたかも。
　だって人間離れした美しさだし、金色の瞳だって妖艶で怪しくて。

　しかも黒いし。

　思わぬ雇い主の秘密を知ってしまったことで早鐘を打つ胸を押えて落ち着ける。

　別にカイザー様が魔族だっていい。

　優しいし、美形だし、乙女ゲームの攻略対象者なら悪いキャラではないのだろう。
　そんなことよりも、カイザー様が攻略対象者なら即ちそれはヒロインのターゲットの一人ということ。大大大好きなお兄様を取られたらベアトリクス様の悪役令嬢フラグが立つじゃないっ！？

　……と、いうことで私はカイザー様の元に直談判に向かった。


「カイザー様、大切なお話がございます」

　時間を取って頂いた私は改めてマジマジとカイザー様の顔を見つめた。

　すんごい美形。
　これはヒロインにロックオンされる可能性大だと危機感を高める。