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この幻覚が見えるのは俺だけだろうか? 2
しおりを挟む互いに教え合う二年生組の端、突き出した唇の上にペンを乗せたメラルドのやる気のなさ。
「メラルド、大丈夫かい?」
「大丈夫じゃないです。内容もテストの範囲も何もわからないです」
しょんぼりワンコ。
いや、内容は兎も角テストの範囲ぐらいは把握しとこうぜ?
二年生組に去年の出題範囲やポイントを教えてもらい、何とか勉強に戻るもののまたすぐに意識が他へと移るのが手に取るようにわかる。
そんな時、不意にこちらを眺めていたメラルドのエメラルドグリーンの瞳がキラキラと輝いた。
『いいなー、ガーネスト様はカイザー様いつでも手合わせ頼めて。勉強だって教えて貰えるし。はっ!!そうだ!!ベアトリクス様と結婚すればオレもいつでも手合わせして貰えるし“兄貴”って呼べる!!ベアトリクス様可愛いし』
おい。
ぶっとばすぞ、コラ?
そんな不純な動機でうちの可愛いベアトリクスはやらん!!
「ベアトリクス様、ここ聞いてもいいですか?」
輝かせた瞳のまま、いそいそとベアトリクスへ身を乗り出すメラルド。
「それなら僕が教えてあげるよ。ここをこうして、そのあとこれを二乗して」
そしてベアトリクスへの質問へ滑らかに答えるダイア。
「わかった?」
圧を感じさせるダイアの笑顔に「はい」とすごすごと引き下がるメラルド。
アレ完全に理解してねーよ。
本能の強そうなメラルドはダイアの圧に敗北した。
「宜しかったら私がお教え致しましょうか?私も数学はあまり得意でないのでお役に立てるかはわからないのですが」
明らかに理解していなさそうなメラルドを見かねて声を掛けるカトリーナ嬢。優しい。
そしてカトリーナ嬢が声を掛けた途端、ガーネストがちらっとそっちを気にした!
「数学でしたら得意なのでお教えしますよ」
「サフィア様は数学に限らず全教科お得意じゃないですか」
ベアトリクスの言葉に「そんなこと」とサフィアが小さく俯く。
「ずっと学年一位を保ってらっしゃいますものね」
「偶々です」
カトリーナ嬢の言葉に謙遜で応えるサフィアの表情は困ったような微笑で。
ゲームの通り色々抱え込んでるのかなと心配になる。
メラルドへの解説の他、女性陣からも時折質問が飛びそれにも丁寧に答えていくサフィア。彼の解説はシンプルでわかりやすい。
そして先程メラルドを露骨に牽制したダイアはサフィアにはそれを向けない。
下心がないからですかね。
何かダイアがゲームの性格よりも割と強かになった気がするのは気のせいだろうか?
「わかりやすいですね。サフィア様は文学はあまりお得意ではないですか?」
優秀な三年生組からの質問も途切れ、何とはなしにサフィアの解説を聞いていた俺の言葉に彼の動きが強張る。
他意はない言葉だったのだが、ショックを受けたような表情にこちらが焦る。
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