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長いものには巻かれよ 2

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「初めまして。不躾ぶしつけに呼びつけてすまないね」

「別に。お貴族様の傲慢ごうまんなんて慣れてるし?」

 あざけりを露わに肩を竦める青年に更に飛ぶ殺気。
 後ろからも前からも……。

 もうやめてっ……!!

 心の声から強がってるだけのことを知ってる俺は心の中でそう叫んだ。
 世の中には敵に回してはいけない方達がいるんだよ青年!!

「で、お貴族様が俺に何の用だよ?殺して欲しい奴でもいんの?」

『とっとと用件言って解放してくれっ!!あの忍者マジ恐いっ!!何なのっ?!俺が逃げられねぇーとかマジ無いんだけど!!人間技じゃねぇーし!!!』

 冷静取り繕いつつ心の中は突っ込みの嵐とか何となくシンパシー……。

 因みに現在俺はいつも敢えて聴かないようにしている心の声を意識を集中して聴くようにしている。
 だからよく聴こえる。

 この青年……確実に転生者ですね!!

 ハンゾーのこと「忍者」ってずっと呼んでるしね!!

「聞きたいことがあって。君は『異能』持ちかい?」

 俺の言葉に青年が僅かに眼を見開いた。
 無意識にか、小さく後ろへと後ずさる。
 だけどすぐに取り繕うように首を傾げて「さぁ?」と業とらしく肩を竦めた。

 だけど心の声は正直だった。
 俺の質問を呼び水に勝手に答えを教えてくれる。

『何でバレてんだよ?!つか、目的は何だよ?もしかしてバレてんの?俺が暗殺者とかいいつつターゲット殺してねぇーことバレてるとか?いや、それはないか。だって標的は俺の異能で全部遥か遠い地まで転移させてるし、そう簡単に見つかるような距離じゃないし。でも、じゃあ何で…。血痕や髪切り落としたりしたけど死体すらないことを怪しまれた…?』

 はい。ご丁寧な説明有難う御座いますー!!

 あ、殺してないんですね。
 そっか、そっか転移かー。成程、納得!!

 やっぱあれですかね、平和な世界で生きてた転生者的に安易な殺生に抵抗あるタイプですか?
 俺もです。

 但し、マイエンジェルsに手を出したらただじゃおかん!

 折角特殊な能力手に入れたからはっちゃけて伝説の暗殺者気取っちゃった感じですか。
 そもそも異能持ちってことは片親ないし両親が貴族か。

 とか心の中で会話をしつつ(相手に俺のは伝わらないから会話といいつつ一方通行)俺はにっこり微笑んだ。
 指を一本立たせる。

「では、もう一つ。私に雇われてみる気はないかい?」

「断ったら?」

「別に?如何どうするつもりもないよ。ただ、そうだね」

 言葉と共に、抜き放った剣を振り下ろした。

 振り下ろした切っ先は白い喉のすぐ隣。ほんの僅かな位置で止まる。

 青年が俺に向かって伸ばした腕よりも長さもある剣が首筋に届く方が速い。
 あと単純に動き自体も俺の方が断然に。
 その上、青年が動きかけた時点でハンゾーがすぐさま攻撃体勢に入ったし。

 危っねー!!手を出さないよう言っといてよかった!!!

 じゃなきゃ青年の手、今頃串刺しでしたよ完璧。

「断るのは構わない。だけど一つだけ覚えておいてくれるかい?もしも君が我が家に手を出そうとしたら私は君をゆるさない。その時は……」

 耳元に唇をよせ低くささやく。

「例えどれだけ遠い地からでも、それこそ地獄の底からだろうと絶対に君を殺しにいくよ」

 息を呑む音を聞きながら、お返しのように唇を三日月に歪める。

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