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氷姫救出編
「ひさしぶり」
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扉を開けるとあの頃と何一つ変わっていない空間があった。
大理石のような石材で作られた真っ白な空間。光源は天井から突き出ているクリスタルのみ。
空間の中央には禍々しい像が祀られた祭壇がある。その正体は魔王を封じた像だ。そこには鎖で繋がれた少女が囚われていた。
天使のような真っ白く美しい少女。その少女は俺の最愛の人だ。
彼女は祭壇に横たわり、静かな寝息を立てていた。そんな姿でさえも愛おしい。
胸の底から暖かな気持ちが湧き出し、笑みが溢れた。
彼女は扉が開いたのを感じたのかゆっくりと目を開けた。身体を起こし寝惚け眼を擦る。
そして扉の前に立っていた俺をパチリと見た。その瞬間、目を大きく見開くとみるみるうちに表情を歪めた。
目からは輝く涙が溢れ出した。
俺の目からも、堪えきれずに涙が溢れる。
一歩一歩を踏み締めるようにして進む。大した距離では無いのに彼女の元へ辿り着くまでがとてつもなく長く感じた。
何分、何時間にも感じられる時間を経て俺は彼女――ラナの元へと辿り着いた。
ようやく、ようやく手が届く。
祭壇を登り、俺はラナの前に立った。
「ひさしぶり、ラナ」
万感の思いを込めて俺は言った。
記憶にあるラナとの思い出が色を取り戻していく。
あの頃と比べてお互い成長した。ラナは大人になった事で、より美しさが際立ったように思える。
彼女は時間が止まってしまったかのように固まっていた。澄んだ海のように蒼い瞳で俺を見つめている。次々と流れ落ちる涙だけが、時を刻んでいた。
真っ白な頬に触れると、宝石のような涙が俺の手を濡らす。
親指で拭ってやるが次から次へと流れてくる涙は止まる事を知らなかった。
ラナが頬に触れた手を愛おしそうに撫でる。
「ひさしぶり、レイ」
蕾がパッと花開くような、そんな笑顔を彼女は浮かべた。
「ごめん。遅くなって」
そう言ってラナを抱き締める。俺が成長したせいか、腕の中の身体がとても小さく感じた。
彼女は顔を綻ばせ、心地よさそうに俺の胸に頬を埋める。
「ううん。……私、信じてた。絶対に来てくれるって。約束したから」
ラナも俺の背中に手を回して、力を込めたのがわかった。
――俺はキミを必ず救い出す。
あの日の誓いは、あと少しで果たされる。
だから俺は新たな誓いを立てる事にした。絶対にこの手を離さないという誓いを。
ずっと、胸の内に秘めていたこの想いを伝える時だ。
「ラナ。キミに聞いて欲しいことがあるんだ」
抱擁を解き、ラナの目を見て言う。
ずっと決めていたことだ。この想いは再会した時に伝えると。気持ち、想いは変わっていない。
……いや、変わってないは嘘か。
離れていた分、想いは大きくなっている。
身を焦がすような、激しい感情だ。
「なに?」
ラナがニコッと笑みを浮かべて首を傾げた。
瞳の奥に僅かな期待が見えた。きっとこれから言うことも分かっているのだろう。
俺は想いを乗せて言葉を紡ぐ。
「キミのことが好きだ。心の底から愛している」
「……ッ!」
ラナが目を見開いた。止まりかけていた涙が溢れ出し、次から次へと流れていく。
そして次の瞬間、見たこともない美しい笑顔を浮かべた。
その表情に俺はまた心を奪われた。
「……うん! ……うん! 私も好き! 大好き! 愛してる!」
全身に温かな気持ちが広がっていく。
そしてどちらからともなく目を閉じ、口付けを交わした。
何秒そうしていたかはわからない。あるいは数分だったのかもしれない。
微笑みながら離れて額をくっつける。
お互いに気恥ずかしくてはにかんだ。ラナの顔は真っ赤だ。それは多分俺も。
「……私、初めてだったんだから。ちゃんと責任とってよ?」
「俺も初めてだったし、言われなくてもそのつもりだよ。もう二度と離さない」
「うん! 離したらぜっっったいに許さないから!」
俺の恋人は華やかな笑顔を浮かべた。
……俺の知らない顔がまだまだいっぱいあるな。
これから先、彼女の様々な表情を見ることになるのだろう。その度に俺は彼女に心を奪われる。だからその一瞬一瞬を胸に刻もう。
もちろんこの表情も、俺は一生忘れない。
大理石のような石材で作られた真っ白な空間。光源は天井から突き出ているクリスタルのみ。
空間の中央には禍々しい像が祀られた祭壇がある。その正体は魔王を封じた像だ。そこには鎖で繋がれた少女が囚われていた。
天使のような真っ白く美しい少女。その少女は俺の最愛の人だ。
彼女は祭壇に横たわり、静かな寝息を立てていた。そんな姿でさえも愛おしい。
胸の底から暖かな気持ちが湧き出し、笑みが溢れた。
彼女は扉が開いたのを感じたのかゆっくりと目を開けた。身体を起こし寝惚け眼を擦る。
そして扉の前に立っていた俺をパチリと見た。その瞬間、目を大きく見開くとみるみるうちに表情を歪めた。
目からは輝く涙が溢れ出した。
俺の目からも、堪えきれずに涙が溢れる。
一歩一歩を踏み締めるようにして進む。大した距離では無いのに彼女の元へ辿り着くまでがとてつもなく長く感じた。
何分、何時間にも感じられる時間を経て俺は彼女――ラナの元へと辿り着いた。
ようやく、ようやく手が届く。
祭壇を登り、俺はラナの前に立った。
「ひさしぶり、ラナ」
万感の思いを込めて俺は言った。
記憶にあるラナとの思い出が色を取り戻していく。
あの頃と比べてお互い成長した。ラナは大人になった事で、より美しさが際立ったように思える。
彼女は時間が止まってしまったかのように固まっていた。澄んだ海のように蒼い瞳で俺を見つめている。次々と流れ落ちる涙だけが、時を刻んでいた。
真っ白な頬に触れると、宝石のような涙が俺の手を濡らす。
親指で拭ってやるが次から次へと流れてくる涙は止まる事を知らなかった。
ラナが頬に触れた手を愛おしそうに撫でる。
「ひさしぶり、レイ」
蕾がパッと花開くような、そんな笑顔を彼女は浮かべた。
「ごめん。遅くなって」
そう言ってラナを抱き締める。俺が成長したせいか、腕の中の身体がとても小さく感じた。
彼女は顔を綻ばせ、心地よさそうに俺の胸に頬を埋める。
「ううん。……私、信じてた。絶対に来てくれるって。約束したから」
ラナも俺の背中に手を回して、力を込めたのがわかった。
――俺はキミを必ず救い出す。
あの日の誓いは、あと少しで果たされる。
だから俺は新たな誓いを立てる事にした。絶対にこの手を離さないという誓いを。
ずっと、胸の内に秘めていたこの想いを伝える時だ。
「ラナ。キミに聞いて欲しいことがあるんだ」
抱擁を解き、ラナの目を見て言う。
ずっと決めていたことだ。この想いは再会した時に伝えると。気持ち、想いは変わっていない。
……いや、変わってないは嘘か。
離れていた分、想いは大きくなっている。
身を焦がすような、激しい感情だ。
「なに?」
ラナがニコッと笑みを浮かべて首を傾げた。
瞳の奥に僅かな期待が見えた。きっとこれから言うことも分かっているのだろう。
俺は想いを乗せて言葉を紡ぐ。
「キミのことが好きだ。心の底から愛している」
「……ッ!」
ラナが目を見開いた。止まりかけていた涙が溢れ出し、次から次へと流れていく。
そして次の瞬間、見たこともない美しい笑顔を浮かべた。
その表情に俺はまた心を奪われた。
「……うん! ……うん! 私も好き! 大好き! 愛してる!」
全身に温かな気持ちが広がっていく。
そしてどちらからともなく目を閉じ、口付けを交わした。
何秒そうしていたかはわからない。あるいは数分だったのかもしれない。
微笑みながら離れて額をくっつける。
お互いに気恥ずかしくてはにかんだ。ラナの顔は真っ赤だ。それは多分俺も。
「……私、初めてだったんだから。ちゃんと責任とってよ?」
「俺も初めてだったし、言われなくてもそのつもりだよ。もう二度と離さない」
「うん! 離したらぜっっったいに許さないから!」
俺の恋人は華やかな笑顔を浮かべた。
……俺の知らない顔がまだまだいっぱいあるな。
これから先、彼女の様々な表情を見ることになるのだろう。その度に俺は彼女に心を奪われる。だからその一瞬一瞬を胸に刻もう。
もちろんこの表情も、俺は一生忘れない。
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