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第二章(謎解きのおわり)
僕、なんちゃって転生する。
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大都心の街中から人が消えていなくなるだなんてことが、現実世界で起きてるとは、未だに信じがたい。
でも、事実、誰もが食品を買い占めて自宅に引き籠もっている。
日中の渋谷のスクランブル交差点に、人っ子一人いない光景を、映画の撮影でもないのに観られる日が来るだなんて。信じがたすぎるから、逆に信じられる。
職場でのコンプライアンスに抵触して、絶賛、自宅謹慎中だった僕の現在は、驚くほど慌ただしい。
この世紀の大悲劇によって、まさかのチャンスを得たのが僕だなんて、空気の読めなさ加減にも程がありすぎる。
実は、人材派遣会社のはずの、僕の会社は、今回のウィルス蔓延の非常事態宣言を受けて、小売店の顧客たちに、「人材」ではなく、「店舗」を派遣することにしたのだ。
なんと、インターネットのサイトで百貨店ショップを作ることにしたのである。
ネットのショッピングサイトなんて、有名どころが、いくつもすでに定着しているけれど、百貨店のようなブランドをメインで推してる老舗店たちは、そういうネットショップを敢えて利用していないところがまだまだ多い。
要は、敷居が高くありたいのだろう。イメージ戦略だ。そして、実店舗しかなくても、顧客が足を運んでくれるほど実際に人気もあるのだ。
でも、今回まさかまさかのことが世界規模で起きてしまった。
さすがに日本で暮らしていて、外出自粛令が出される世の中になるとは、誰も夢にも思わなかったはずだ。
まず、しわ寄せは立場の一番弱い派遣社員にやってきた。働き場所が閉店状態ということは、シンプルに仕事を失ったという意味になる。
次に、その派遣社員を派遣する仕事をしている僕の職場も、当然ながら大打撃を受けた。
そしてもちろん、百貨店に店を構える老舗の小売店が、あっという間に潰れだしたのである。
実店舗を営業することができず、ネットショップも無いとあれば、大手であるほど、受けるダメージはバカでかい。
つまり、リアルの世界のみに存在する小売業がドミノ倒しのように、共倒れ状態になっていったのだ。
僕に声が掛かったのは、老舗百貨店の実店舗を、そのままネットショップに置き換えるようなサイトの発案についてだった。
サイトデザインのアイデア出しはもちろん、老舗店への写真提供願いやネットでの商品アプローチの提案、販売スタッフへ対しては、お客様電話対応や、注文および配送の仕事などの振り分け、梱包作業の場所に関しては閉店中のクローズ店舗をそのまま利用した。
つまり、会社の起死回生を賭けた新規事業のほとんどの決定権が、僕に委ねられたことになる。
では、なぜ、こんな万年窓口業務の冴えない、いち平社員に、そんな転生レベルの待遇が与えられたのか?
それは、僕がネットショッピングの達人だったからである。
元々は、リアル店舗での買い物が苦手だったことがきっかけだ。
服屋では、「店員さんゼッタイに話しかけないでね恐怖症」だったし、スーパーでさえ、商品が多すぎて「何を買えばいいのか分からず気持ち悪くなる症候群」だった。
こんな風に、僕なりの、ネットショッピング至上主義となったれっきとした理由はあったのだが、実店舗に販売スタッフを派遣する生業をしていた僕の会社からすると、僕はただの反逆者でしかなかった。
だから、僕が職場で、「買い物は全てネット派ですね」と言ったときの、凍てついた空気は、今でも忘れられない。
そんな僕が、だ。
まさかまさかまさかの事態宣言すぎる。
ガチでマジで、本当にこれだけは言っておきたいのだけれど、人生、何に身を救われるか、分かったもんじゃない。
でも、事実、誰もが食品を買い占めて自宅に引き籠もっている。
日中の渋谷のスクランブル交差点に、人っ子一人いない光景を、映画の撮影でもないのに観られる日が来るだなんて。信じがたすぎるから、逆に信じられる。
職場でのコンプライアンスに抵触して、絶賛、自宅謹慎中だった僕の現在は、驚くほど慌ただしい。
この世紀の大悲劇によって、まさかのチャンスを得たのが僕だなんて、空気の読めなさ加減にも程がありすぎる。
実は、人材派遣会社のはずの、僕の会社は、今回のウィルス蔓延の非常事態宣言を受けて、小売店の顧客たちに、「人材」ではなく、「店舗」を派遣することにしたのだ。
なんと、インターネットのサイトで百貨店ショップを作ることにしたのである。
ネットのショッピングサイトなんて、有名どころが、いくつもすでに定着しているけれど、百貨店のようなブランドをメインで推してる老舗店たちは、そういうネットショップを敢えて利用していないところがまだまだ多い。
要は、敷居が高くありたいのだろう。イメージ戦略だ。そして、実店舗しかなくても、顧客が足を運んでくれるほど実際に人気もあるのだ。
でも、今回まさかまさかのことが世界規模で起きてしまった。
さすがに日本で暮らしていて、外出自粛令が出される世の中になるとは、誰も夢にも思わなかったはずだ。
まず、しわ寄せは立場の一番弱い派遣社員にやってきた。働き場所が閉店状態ということは、シンプルに仕事を失ったという意味になる。
次に、その派遣社員を派遣する仕事をしている僕の職場も、当然ながら大打撃を受けた。
そしてもちろん、百貨店に店を構える老舗の小売店が、あっという間に潰れだしたのである。
実店舗を営業することができず、ネットショップも無いとあれば、大手であるほど、受けるダメージはバカでかい。
つまり、リアルの世界のみに存在する小売業がドミノ倒しのように、共倒れ状態になっていったのだ。
僕に声が掛かったのは、老舗百貨店の実店舗を、そのままネットショップに置き換えるようなサイトの発案についてだった。
サイトデザインのアイデア出しはもちろん、老舗店への写真提供願いやネットでの商品アプローチの提案、販売スタッフへ対しては、お客様電話対応や、注文および配送の仕事などの振り分け、梱包作業の場所に関しては閉店中のクローズ店舗をそのまま利用した。
つまり、会社の起死回生を賭けた新規事業のほとんどの決定権が、僕に委ねられたことになる。
では、なぜ、こんな万年窓口業務の冴えない、いち平社員に、そんな転生レベルの待遇が与えられたのか?
それは、僕がネットショッピングの達人だったからである。
元々は、リアル店舗での買い物が苦手だったことがきっかけだ。
服屋では、「店員さんゼッタイに話しかけないでね恐怖症」だったし、スーパーでさえ、商品が多すぎて「何を買えばいいのか分からず気持ち悪くなる症候群」だった。
こんな風に、僕なりの、ネットショッピング至上主義となったれっきとした理由はあったのだが、実店舗に販売スタッフを派遣する生業をしていた僕の会社からすると、僕はただの反逆者でしかなかった。
だから、僕が職場で、「買い物は全てネット派ですね」と言ったときの、凍てついた空気は、今でも忘れられない。
そんな僕が、だ。
まさかまさかまさかの事態宣言すぎる。
ガチでマジで、本当にこれだけは言っておきたいのだけれど、人生、何に身を救われるか、分かったもんじゃない。
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