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第一章(謎解きのはじまり)
そして明かされる彼女の正体とは。
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「ま……間宮なのか?」
久しぶりに再会した親友は、どっからどう見ても女になっていた。すでにロングヘアーのカツラは右手に握られていたが、正直、スカート(スーツ)姿が似合いすぎて、むしろ短い髪の毛になった方が違和感があるほどだ。
「いやー、参っちったよー! CMのイメージ映像で、まさかのモデル役やらされてさあー」
そうバツが悪そうに苦笑いを浮かべると、間宮は、キョロキョロと席を見渡した。
「それにしても美人ばっかで壮観だな。まったく、山田もいい身分になったもんだよ」
そうして、僕とは向かい側に当たるあたりで、女の子たちに、「ゴメンねー」と手を擦り合わせて、一人分の席を空けてもらっていた。
ようやく座ると開口一番に、
「うっわー! コレ、完全にキャバクラ状態じゃん」
なんて言うもんだから、その広告マンとは思えぬデリカシーの無さに、僕は、女の子たちが気を悪くするんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたが、みんな顔色一つ変えずに笑顔で対応していたので安心した。営業スマイルすぎて、ちょっと怖かったけど。
まあ、見た目はともかくとして、間宮のモデル選考プレゼンはそれはそれは見事なものだった。
最初こそ、予期せぬ姿での登場に、場がザワついたものの、間宮の熱の入った説明に、その場にいる誰もが心を持ってかれていたと思う。
高校時代、八重歯すら気にしてマスクを外せなかった男が、今や遅刻したとなると、女装姿なのもお構い無しに猛然と駆けつけてくる、その心意気も素晴らしいと思う。
僕は、お酒が入ってることもあって、なんだか妙に湿っぽい気分になり、涙腺まで緩んできてしまった。
「大丈夫ですか?」
隣に座っていた女の子が、僕の様子を気にかけて声をかけてくれた。きっと人生すら決めかねない大事な会合中だろうというのに、なんて親切な人なんだろう。
僕は、平気であることを伝えるために、そっと手を上げたけれど、もう、その状況がすでに深酒していることを物語っていた。
口を開いて何かを言おうとすると、頭の中で言葉たちがグルグルと回り続けて、目眩を起こしそうになる。ついに平衡感覚まで失った僕は、自分の意思とは無関係に、女の子の肩にもたれ掛かるような体勢になっていた。
突き放してくれて良かったのに、女の子は自分の膝の上に、僕の頭を乗せようと、ゆっくりと僕の身体を誘導していく。
その時、状況に気がついた間宮が、僕に向かって何か言っているようだったけれど、もはや山びこのように遠くで鳴っているだけで、聞き取ることなどできなかった。
ああ、本当に、僕はなんて間抜けな男なのだろう。
明日、会社を休んで、間宮の会社へお詫びしに行かなくては……。
そして、僕の意識は途絶えた。
久しぶりに再会した親友は、どっからどう見ても女になっていた。すでにロングヘアーのカツラは右手に握られていたが、正直、スカート(スーツ)姿が似合いすぎて、むしろ短い髪の毛になった方が違和感があるほどだ。
「いやー、参っちったよー! CMのイメージ映像で、まさかのモデル役やらされてさあー」
そうバツが悪そうに苦笑いを浮かべると、間宮は、キョロキョロと席を見渡した。
「それにしても美人ばっかで壮観だな。まったく、山田もいい身分になったもんだよ」
そうして、僕とは向かい側に当たるあたりで、女の子たちに、「ゴメンねー」と手を擦り合わせて、一人分の席を空けてもらっていた。
ようやく座ると開口一番に、
「うっわー! コレ、完全にキャバクラ状態じゃん」
なんて言うもんだから、その広告マンとは思えぬデリカシーの無さに、僕は、女の子たちが気を悪くするんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたが、みんな顔色一つ変えずに笑顔で対応していたので安心した。営業スマイルすぎて、ちょっと怖かったけど。
まあ、見た目はともかくとして、間宮のモデル選考プレゼンはそれはそれは見事なものだった。
最初こそ、予期せぬ姿での登場に、場がザワついたものの、間宮の熱の入った説明に、その場にいる誰もが心を持ってかれていたと思う。
高校時代、八重歯すら気にしてマスクを外せなかった男が、今や遅刻したとなると、女装姿なのもお構い無しに猛然と駆けつけてくる、その心意気も素晴らしいと思う。
僕は、お酒が入ってることもあって、なんだか妙に湿っぽい気分になり、涙腺まで緩んできてしまった。
「大丈夫ですか?」
隣に座っていた女の子が、僕の様子を気にかけて声をかけてくれた。きっと人生すら決めかねない大事な会合中だろうというのに、なんて親切な人なんだろう。
僕は、平気であることを伝えるために、そっと手を上げたけれど、もう、その状況がすでに深酒していることを物語っていた。
口を開いて何かを言おうとすると、頭の中で言葉たちがグルグルと回り続けて、目眩を起こしそうになる。ついに平衡感覚まで失った僕は、自分の意思とは無関係に、女の子の肩にもたれ掛かるような体勢になっていた。
突き放してくれて良かったのに、女の子は自分の膝の上に、僕の頭を乗せようと、ゆっくりと僕の身体を誘導していく。
その時、状況に気がついた間宮が、僕に向かって何か言っているようだったけれど、もはや山びこのように遠くで鳴っているだけで、聞き取ることなどできなかった。
ああ、本当に、僕はなんて間抜けな男なのだろう。
明日、会社を休んで、間宮の会社へお詫びしに行かなくては……。
そして、僕の意識は途絶えた。
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