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「こりゃ傀儡かもしれねぇな…。無理矢理解除すると元に戻らねえ可能性がある。クロ、これを掛けた人物に心当たりはあるか?あー、スタンピートでそれどころじゃねぇってのに!」

頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜるギルド長に頷いてみせる

ミネルバが傀儡をグリフォンにかけていたとして、頼んだとしてもグリフォンを簡単に元に戻してくれるだろうか?

考えこむネロを横目にギルド長はクーとパーチェスを肩に担ぎ出した

「とりあえず3人はギルドで預かっとくからよ。スタンピートも対応しないといけねぇし。クロはとりあえずグリフォン運んでくれ。グリフォン治す手立てをまた探してくりゃいいさ。今夜のオンズの花忘れるなよ?」

きっちりとギルド長に釘を刺されて、ネロはとぼとぼとギルドを出た

本当ならば、3人での再会を祝っているはずだったのに

肩を落として、自動筆記で通信の魔法陣を描く

もしかしたら、大橋が何か知っているかもしれないからだ

『もしもーし?ネロ?今、大変じゃん?助けに呼んでる?もしかして?』

呑気な大橋の言葉に気が抜ける

「うっす、何が大変なんだよ?あのさ、大橋、傀儡って知ってる?解除ってどうしたらいい?」

『えっ?傀儡は知ってるけどさあ、今ね、号外が出て、お前めっちゃ載ってるよ?聖女をアーチェスト宰相が独り占めしてるって。写真で顔つきで。大丈夫?屋敷取り囲まれてるって聞いたけど』

「へー、ふーん、はぁ!?え?俺?」

思わぬ大橋の言葉に驚きすぎて、暫く思考が止まったかのようだった

屋敷が取り囲まれている?

『聖女ってほら、国あげて分け合うもんだから。だから大丈夫かなあって。大丈夫そうだな』

全然大丈夫ではないかもしれないが、大橋はあまり心配してないかのように呑気な声だ

「え?それってどうなるの?てか、めっちゃ他人事じゃん?」

『どうなるって民衆で押し掛けてるみたいだから、聖女を分け合うまでヤバいんじゃない?他人事だしねぇ』

大橋は心底ネロの事など、どうでもいいらしい

腹立たしい

「どうしよ。大橋、ミネルバと連絡とれる?」

『えー、いいけど何くれんの?』

見返りまで求め出した大橋は本当にがめつい

「おま、何が欲しいんだよ?」

『えー、じゃあ聖女の祈りくれない?付与したやつ何でもいいから』

「わかったよ。てか、これミネルバに通信繋げばよくね?」

『あー、うん、そうそう。じゃあ傀儡についての情報て事で頂戴。傀儡はかけた本人が解除しないと、かけられた人は崩壊するから気をつけてね。ミネルバに渡しておいて。絶対くれよ。じゃあな』

ぷちんと通信が途切れ大橋の声が消える

光が消えた通信の魔法陣に、次はミネルバに繋いでくれるように念じる

本当に便利だ

携帯みたいなものだな

『ネロ!?無事か!?部屋にいないから心配していた!』

開口一番、焦ったようなミネルバの声に胸を撫で下ろす

ミネルバはネロを民衆に突き出す気はなく、心配していたようだ
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