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「も…嫌だ、見られたし…う、ん、ミネルバ、やめ…ちょっ…」

ミネルバは全く止める気はないらしく、ネロの脚を掴んで、深く腰を動かす

少しは羞恥心を持ってほしい。アクロワナが来た時も、全く慌てていなかった

ミネルバの腕に抗議のために爪を立ててもびくともしない

ここはミネルバの所有する敷地内でミネルバが主だから構わないだろうが、プーアール嬢は侯爵家の娘である

もしも外でこのことを言いふらされれば、とても不味いのではないだろうか?

「不安はなくなった?信じてくれる?」

額をくっつけてくるミネルバは花が綻ぶような笑顔を見せる

まさかプーアール嬢との関係を疑ったから、こんな事をしたとでもいうのだろうか?

かぁっと体が熱くなるくらい恥ずかしくなって、身を捩るとミネルバにしっかり腰を掴まれて抱え上げられる

「誤解も解けたようだし、続きは部屋でしよう……ゆっくりと」

この間までのギクシャクした関係も嫌だが、性格が豹変したように甘い空気を出してくるのも同一人物とは思えないほど気まずい

ずるりと体内から引き抜かれるのに身震いすると、ミネルバがふと笑ったような気がした

「大丈夫だから…でも暫く外には出ないように」

姫抱きで部屋まで連れて行かれて、全身あますところなく唇を落とされる

ネロが少しでも反応する所があれば、執拗にねぶり、弄られ、あまりの快感にネロの短い悲鳴はその日止むことはなかった







連日、ミネルバから部屋から出ないようにと言われていたが、今日が3日目の洞窟で自動攪拌しながら作っていた石化を解く薬が出来る日である

早朝にミネルバが、やけに甘くベタベタしてから名残り惜しそうに出て行ったがネロは朝からそわそわしていた

軽装に着替えて、あの洞窟に飛べば自動付与していた攪拌は止まっており鍋の中には異臭を放つドロリとした液体が入っていた

鑑定をかけると石化解除の薬と出たので、ほっとする

パーチェス達の状態を考えると、一人一人石化を解き、オンズの花の露を飲ませて聖女の祈りをかけるのがベストだろう

あの大百足の呪いがかかったままでは3人とも石化が解けて回復したとしても、冒険者としては生命を断たれているも同然なので遅かれ早かれ野垂れ死になるだろう

石を適当に拾って、その小石3個に聖女の祈りを付与していく

こうしておけば、ギルド長がいてもアイテムで見つけてきた事に出来るだろう

パーチェスに買ってもらった狐のお面と服に着替えて、石化解除の鍋ごとギルドに飛ぶと俄にギルドは騒がしかった

受付嬢が号令を出していたので、近くの冒険者に聞くとスタンピートが近くで起こったらしい

スタンピートとは魔物が爆発的に発生する謎の現象だが

オーガやベヒモスまでいて近くの都市が滅びたらしい

あんまり自分には関係ないかと思いながら、受付嬢にギルド長の面会を申し込むと、もう余裕がないのか勝手に行くように言われてしまった

ギルドの執務室をノックすれば、目の下に隈を作ったギルド長にネロが鍋を持ったまま軽く礼をすると、ギルド長のクマみたいな顔が破顔した

「クロ!薬ができたのか!?…いや、この際、冒険者は1人でも多い方が助かる!」

喜んでいるギルド長に、何となく嫌な予感がしつつもギルド長にオンズの花の露の瓶を渡す

「はい、俺が1人ずつ石化を解くので、ギルド長は3人にオンズの花の露を飲ませて欲しいんです。お願い出来ますか?」

「ああ、いや、しかし…!オンズの花の露は勿体無くないか…!?」

なんとなく渋るギルド長を訝しく思いながらも、ネロは首を振る

「回復だと傷跡が残ってしまいます。クーはともかく、パーチェスやグリフォンに傷跡は残せません。それにあの出来事は2人には忘れてもらうつもりです」

ネロは、あの出来事をパーチェスやグリフォンに覚えていて欲しくなかった

冒険者なのに甘いと思われそうだが、部分的に記憶を消す魔法陣をパーチェスとグリフォンには施す予定だ

そしてクーにはクランの長として辛いだろうが、しっかり覚えておいてもらう

パーチェスやグリフォンを今後も守ってもらう為だ

「いや、しかし…」

まだギルド長が躊躇っていたので、オンズの花を今後また取ってくるからと約束したが、まだ納得していないようだった

「いや、今後…負傷者が沢山出るし、三人はすぐに解除しなきゃいけない理由なんてないし…必要だろう!?今使うわけには…」

うろうろするギルド長はスタンピートのせいで渋っているのだろう。こんなことになるなら解除することを言わなければ良かったとも思うが、ギルド長なしには回復の手順が上手くいくかわからないしパーチェス達が今後の扱いがよろしくなくなっても困る

「わかりました。3人の為にも今夜オンズの花を取れるだけ取ってきますから…お願いします」

今夜、花を取ってくるの言葉にギルド長の目は輝き、ようやく鍵を持ってパーチェス達の所に連れて行ってくれる気になったようだ

あんまりミネルバから外に出ないように言われているが、まだ帰る時間ではないし大丈夫だろうが急ぎたい

現金なギルド長に着いて重たい鍋を運ぶ

ギルドの地下室は相変わらずカビ臭く、重たい金属の扉が開けば、あの日と変わらないままのパーチェス達の石像がそこにはあった

「まず、クーからいきましょう。剣が刺さりまくってますね…即死とかしないですよね?」

「どうだろうな…クロが石化をといたらワシが一気に剣を抜くから、クロがオンズの花の露を飲ませた方がいいかもしれないな」

死人には回復も何も効かないと呟くギルド長に一気に緊張が高まる

絶対に失敗できない

「いっせーのうで、いくぞ?いっせーのうで!」

ギルド長の掛け声に鍋の液体をクーにかけると、みるみるうちに血が噴き出し、クーの顔色に赤みが刺し顔色が戻る

ギルド長が器用に全ての剣を抜き去って、よし!と叫んだので、クーにオンズの花の露を飲ませると、血が止まり苦悶に歪んでいたクーの顔が穏やかに落ち着いていく

鑑定をかけると、やはりステータス異常なので、ポケットに入っていた聖女の祈りを付与した石を使うと、石は黒く変色して崩れ、クーのステータスが元に戻った

石を使った時、ギルド長が悲鳴を上げていたが、これに関しては無視をした

「こんなっ!勿体無い!聖女の祈りを付与した石だって!!?」

口端に泡を飛ばすギルド長に首を振ってみせる

オンズの花の露だけで満足しろと

口をぱくぱくさせたギルド長だったが、早く次のパーチェスの準備をしろと言わんばかりにオンズの花の露の瓶を渡すと、むっすりと口をつぐんだ

「いっせーのーで!」

パーチェスも剣が刺さったままだったので、石化の薬をかけて、ギルド長が剣を抜いて、オンズの花の露を飲ませる

顔色に朱が差し出して、ほっと力を抜いたら、パーチェスはガタガタと震えて叫び出した

「嫌だあああ!!やめろ!殺す!殺してやるっ!!」

錯乱して暴れるパーチェスをギルド長に押さえてもらいながら、聖女の祈りを使い、魔法陣を書いた紙を頭に当てる

「その嫌な記憶は全部無くなる。何も起こっていない、大百足の後の事は全部忘れる」

魔法陣がバチバチッと光ると、パーチェスは力を抜いて倒れた

青褪めたまま気絶したパーチェスをクーの横に並べながら、ギルド長は何か言いたげにコチラを見てくる

「……本当に忘れさせていいのか?何があったかは聞かないが、冒険者だとザラにある…乗り越えられる…いや、乗り越えないといけない事かもしれないじゃないか」

ギルド長の言葉に返しようもなかった

これは俺が覚えていてほしくないだけのエゴかもしれないからだ

「俺が嫌なんだよ」

正直に言うと、ギルド長はあまり良い顔をしなかったがグリフォンを見て悲しそうに首を振った

「……グリフォンには必要ないこった。次はグリフォンだろ?剣はないから、早く戻してやろう」

グリフォンには石化の薬をかけて、ギルド長がオンズの花の露を飲ませる

グリフォンはぐったりと虚な目を見開いていて、聖女の祈りと魔法陣をしたが変わらず空虚な目のままだった

その目はあの死人であるはずのニーナ様の目を思い起こさせて嫌な予感がする

「ん?グリフォンの坊主だけ様子が変だな?」

ギルド長が呟くと、グリフォンはカタカタと震え出した

「おいっ!」

「グリフォン!?グリフォン!!しっかりしろ!グリフォン!」

痙攣のように激しくのたうち回ると、グリフォンは虚な目のまま、ネロを指差してきた

『くろちゃ…クロちゃ……どうして助けてくれなかったの?』

訝しい顔のギルド長と顔を見合わせる

あの日、洞窟でグリフォンだけ現れた

土塊になったグリフォンを思い出して、思わずグリフォンを抱きしめる

「ダメだ…ダメだ…ギルド長、どうしよう?グリフォンが変だ…」

鑑定をかけても、何度も弾かれてグリフォンが土塊になってしまうんじゃないかと怖くなり何度も回復をかける

「落ち着け!クロ!グリフォン坊主はお前のこと、クロちゃんなんて呼んでたか?あいつはクランの仲間は家族だから、そんな呼び方しねぇはずだ!グリフォンなら、にぃにと呼ぶから、別人に乗っ取られているかもしれない…とにかく眠らせるから、落ち着け!」

ギルド長が何か唱えると、グリフォンはぐったりと力を抜き、寝息を立てて眠っているようだった

グリフォンをパーチェスの横に並べて、考える

ミネルバが、多分グリフォンに何かしているのだと思う

素直にミネルバに相談するか?不安そうなクロに、ギルド長がそっと背中をさすってくる

慰めているつもりなのだろう
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