上 下
41 / 63

40

しおりを挟む

「無事と言えば無事かな。クロの前の飼い主は、あの子供だったんだね…」

近付いて来るミネルバにネロが後退りすると、腕を物凄い力で引っ張られ、抱きしめられた

「溺れて死んでしまったかと思った…私のクロが…靴だけ見つかって、居場所も奴隷印の反応もなくて…!本当に無事で、良かった…!」

辛さを堪えて吐き出すようなミネルバの言葉に、胸が痛む

たしかに死んだように見えればいいかとは思ったけれど、ミネルバが心配してくれるとは思わなかった

「………ごめん、ミネルバ。あと、これ、返そう、返そうと思っていたんだけど、これのおかげで助かったから…」

ミネルバを抱き返しながら、あのブレスレットを収納庫から出してミネルバの腕に通す

国宝級と言われていたブレスレットは、ずっと返さなければと思っていたものだ

「いや、これはネロが着けていてくれ…」

ミネルバは、ブレスレットをネロの腕に通して再び抱きしめてくる

色々あったけれど、今までの辛い仕打ちも溶け出していくかのようだった

不意にカチリと首元で音がする

ミネルバがネロの首に何か着けたようだった

首元を触ると、チェーンで通したネックレスがつけられたようで、再びミネルバに抱きつく

「…顔を見せてくれ」

ウサギのお面が取り払われ、ミネルバの綺麗な顔が息が触れるくらい近づき、何度も顔を両手で擦られる

「…ネロを失ってしまったと思った。こんな事なら初めから閉じ込めてしまえば良かったと何度後悔したことか…」

目前に、ポップアップが現れる

"全スキルを封鎖しました"

「……ミネルバ?何これ?え?」

ぎゅうと抱きしめる力が強くなる。怖気が走り、体がぶるぶる震える

「聖女が出ている状態で、スキルも使えないのに外出しようなんてネロでも思わないだろう?」

先程首からぶら下げたネックレスにキスをして、ミネルバは昏い瞳のままネロを見上げる

慌ててネックレスを外そうとしたが、金色のそれは、一向に外れない

掻きむしるようにネックレスを引っ張るネロをミネルバは優しく抱き上げる

「ミネルバ、ミネルバ、俺、しなきゃいけない事があって!お願い、それが終わったら何でも言うこと聞くから!ねえ、これ、取って!ねえ!」

半泣き状態のネロを宥めるように何度も髪にキスを落としながら迷いなく屋敷に向かっていくミネルバの腕の中で暴れると、ミネルバが冷たい唇を耳たぶに当てて囁いた

「バロイがどうなってもいいの?」

ぴたりと抵抗をやめたネロにミネルバは優しく微笑む
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

誕生日会終了5分で義兄にハメられました。

天災
BL
 誕生日会の後のえっちなお話。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

割れて壊れたティーカップ

リコ井
BL
執着執事×気弱少年。 貴族の生まれの四男のローシャは体が弱く後継者からも外れていた。そのため家族から浮いた存在でひとりぼっちだった。そんなローシャを幼い頃から面倒見てくれている執事アルベルトのことをローシャは好きだった。アルベルトもローシャが好きだったがその感情はローシャが思う以上のものだった。ある日、執事たちが裏切り謀反を起こした。アルベルトも共謀者だという。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

処理中です...