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しおりを挟むパーカーのフードを深く被り、なんとなくそのままギルドに行くと、ギルド長に歓迎された
「ニャージャーが陥落してから、ここも帝国領で皆んな奴隷に落ちてしまってなぁ!儂らも例外じゃないが、ギルド職員として全員、残れたから良かった。ただ、冒険者達はみんな奴隷商に連れて行かれて、帝国からの冒険者しかいないから、閑古鳥さ。クロは奴隷落ちしなかったんだな?」
奴隷は奴隷印が光るからわかりやすいのだが、ネロの体にそれがないのを見咎めて、ギルド長は興味深そうに言う
「ああ、潜ってたから国が変わったことも知らなかったんだよ。今からでも奴隷になってしまう?」
ネロが聞くと、ギルド長は首を緩く振った。元冒険者だけあって、筋肉ダルマのような体をゆすり、ネロを奥の部屋に誘導する
奴隷にはされなさそうなので、安心して奥の部屋に着いていくとギルドの様子と違い、煉瓦造りの牢屋のような造りの道をランタンの光を頼りにギルド長は歩いて行く
水漏れをしているのか、所々雨漏りがある
「実は、クロがいなくなってから湿地帯の近くの大草原におばけ大百足の死体と一緒に落ちていた物があってな…クロに見せるか悩んだのだが、最後を知っているのはクロだけだろう?確認してもらいたい物があるんだ…」
牢屋を抜けて、鉄格子にはめられた大きな扉に着くと、ギルド長はいくつもある鍵の束を取り出し、ガチャガチャと沢山の鍵を開けていく
ギィイと重い扉が開き、埃臭い室内は大きな蜘蛛の巣が張り巡らせられており、室内の中心に3体の石像が置かれていた
ギルド長が室内に入っていくので、恐る恐る後についていく
大きな石像を見上げれば、石像の顔に見覚えがあり固まる
「………クー?パーチェス?グリフォン…?」
3体の石像は苦悶に満ちた表情で固まっており、駆け寄る
クーはあの時のまま剣が刺さった状態でパーチェスやグリフォンは傷まみれの体で胸が苦しくなる
「やっぱり3人だよな?状態異常だろうか?それとも本当に石像なのか判断がつかないんだ。鑑定しようにも、帝国に奴隷化された我々はスキルを限定されていて、確認出来なかったんだ。クロ、百足の呪いは解けたのか?」
「うん。鑑定してみるよ」
ネロが頷いて鑑定をかけると、ギルド長は後ろに下がった
白い光が石像の周りを飛び回り、目の前にポップアップが現れる
状態異常、石化の文字に目を細める。そして、その横にあった名前に涙が出た
そこには確かに、クー、パーチェス、グリフォンの名前があった
「クー、パーチェス、グリフォン…ごめんなぁ…。絶対に元に戻してあげるから…」
石像にネロが泣きながら縋り付くと、ギルド長が唸る
「…やっぱり!運び込んで良かった…!クロ、大丈夫だ!石化なら治せるぞ!」
肩に置かれたギルド長の大きな手に見上げれば、力強く頷いてくれる
「…本当?どうしたらいい…?」
「帝国の王都のギルドに薬があるはずだ!材料を揃えれるなら薬師のマークがギルドにいるからそっちでもいいが、材料も今簡単に手に入るものを除くと帝国の王城で栽培されているネムの草とドラゴンの鱗が必要だな。それより、状態異常を解いたらすぐに回復をかけないといけないな。パーチェスから治してグリフォンとクーを治療するのが最善だな。治癒師も用意しないと…」
「俺、薬取りに行くよ!買えなかったら、材料を揃える…。3人は命の恩人なんだ。なんとかしたい!」
ネロの言葉にギルド長も頷く。しかし帝国の王都が何処なのか、ネロにはさっぱりわからなかったので尋ねると、ギルド長が地図をくれた
最悪、ネムの草さえ手に入れれば材料は揃う
帝国は船を乗り継がないと行けないが、移動魔法が使えるので転移をすればいいのだが、ネロが知っている王都の場所はミネルバの屋敷周辺だけである
流石に危険ではないかとも思う
ミネルバは逃げたクロを許さないだろう。また奴隷に落とされたら、ネロには抵抗する術がない。バロイも怒っているかもしれない
「…名前をクロからまた変えればいいか。流石にわからないだろうし…シロにでもするか」
ギルド長に名前を変えたいと伝え、シロで登録し直してもらった
お面もミネルバが見たことあるキツネのお面だから危険だろうと、ギルドから出た足で違うお面を買いに行く
手に取ったのは、ウサギのお面だった。白く丸いウサギのお面は張子のものでつるりとしている
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