【完結】元主人が決めた婚約者は、まさかの猫かぶり野郎でした。

オレンジペコ

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8.馬車の中

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別荘まで向かう馬車の中、『まるで威嚇する猫みたいだな』とルシアンに言われた。
猫を被ってる奴に猫みたいだなんて言われたくないって言ったら思い切り笑われて、『じゃあこれくらいならいいだろう?』って言われながら手を繋ぎ指を絡められた。

なんだこれ?
妙に恥ずかしい気がする。
そうは思ったけど、別に押し倒されたり襲われたりしてるわけでもないから、『変なの』と思いながら受け入れる。

「カイ。魔剣から生まれ変わってどうだ?人としての生活にはすっかり慣れたか?」

俺の前世が魔剣だったと知っているからこその質問がルシアンから飛んできて、俺は少し考えた。
こんな話は父ともしていないし、これまでもルシアンから聞かれたことがなかったから新鮮だ。

「そうだな。特に問題はない」
「そうか。だが…俺との触れ合いはやたらと抵抗感が強そうだな?」
「それは…お前が仇敵だってこともあるけど、それ以前に恋愛感情とか性的欲求とか、そういうのがちょっとわからないって言うか…」
「ああ、なるほど。よくわからないから戸惑っていたのか」

合点がいったと頷くルシアン。

「わかった。そういうことなら俺がお前にゆっくりじっくり教えてやろう」
「え?」
「初心なお前を俺が時間をかけて落としてやると言っているんだ」
「は?」
「お前を翻弄してやるのが今からとても……楽しみだ」

そしてフッと笑うと繋いだ手をそのまま持ち上げ、チュッと軽くキスを落とした後流し見るように俺の方を蠱惑的に見つめてきたからたまらない。

(こ、こ、こ、こいつっ…!絶対前世はタラシだ…!!)

前世のコイツのプライベートについては詳しくは知らないけど、見目は良かったと思うし、王弟という立場的にも当然モテただろう。
そんな奴相手に元魔剣の自分がこちら方面で勝てるはずがない。
意図せず顔が熱くなり、俺は振り払うように手を離すと、できるだけ馬車の壁に身を寄せ距離を取り、威嚇するよう叫んだ。

「だ、誰がお前の思い通りになってやるものか…!」
「ククッ。なるさ。お前がどう言おうと……お前は俺のものなんだからな」

グッと距離を縮め、あっという間に腰を抱き寄せて許可を取ることなく俺の唇をまた奪っていく。

チュッ、チュクッ…。クチュリ。

最初は触れるだけのキス。
そこから深くなってチロチロと唇を舌で擽られ、開けろとばかりに促され、文句を言おうと口を開きかけたところで舌を滑り込ませてきた。
慌てて押しのけようとするもののやっぱりできなくて、せめてとばかりに首を横に振り逃げようとするけどそれさえ許してもらえず、俺の反応を確かめるように熱く見つめながら翻弄されていく。

「んっ、んぅっ、ん~っ!」
「カイ。ちゃんと鼻で息をしろ。前に教えただろう?」

あまりにも長い口づけに苦しいと思っていたら不意にそんな言葉を掛けられて、一瞬きょとんとしていたらクスリと笑われ『ほら、忘れたなら練習だ』と促され何度も何度もまた唇を重ねられた。
苦しくなって口を開く度、口の端から飲み込み切れない涎が零れ落ちていき、それを舌で掬い取ってはまた舌を絡められてしまう。

「ん…ぁ……」
「上手だ」

教え込むようにそんな言葉を言いながら俺を抱き寄せキスをするルシアン。
気づけば俺の腕は何故かルシアンの背へと回っていて、されるがままに与えられるキスを受け入れてしまっていた。




それからどれくらいそうしていただろう?
ガタンッという音共に馬車が停車し、俺はハッと我に返ってルシアンから手を離す。
雰囲気に流されたとはいえ、どうして自分から抱き着いてしまったんだと羞恥に悶えてしまった。
そんな俺を見てもルシアンは気にすることなく、何事もなかったかのように笑顔で言ってくる。

「カイ。どうやら街に着いたようだ。取り敢えずその可愛い顔はしまおうか」
「は?」

言われている意味が分からなくて首を傾げていると、そっとハンカチで口元を拭われた。

「そんな顔は俺以外に見せるなよ?」

そんな顔ってどんな顔だろう?
俺にはさっぱりわからない。

そしてガチャッと外から開かれた扉から先に降り、笑顔で俺へと手を差し伸べてきた。

「カイ。行こうか」

先程までの笑みとは違う柔和な猫を被った笑顔。
ギャップのあるその表情にドキッと胸が弾んでしまう。

(さっきまではあんなに偉そうだったのに…)

そう思いながらも反発するような気持は湧いてこなくて、俺はどこか複雑な気持ちになりながらそっとその手に自分の手を重ねたのだった。



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