【完結】王子の本命~ガヴァム王国の王子達~

オレンジペコ

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149.他国からの客人⑮ Side.ロキ&テリー

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テリーという従者を念入りに探させようと、俺は騎士達に指示を出すためパーティー会場の外に出た。
カール王子とユーフェミア王女にはテリーが会場内にいないかを探してもらっている。
無事に見つかるといいのだけれど…。

そう思いながら指示を出し、兄にもその旨を伝えてもらえるよう言伝を頼んだのだけど、そのすぐ後にオスカー王子に肩を貸すようにしながら半ば背負うように移動するキュリアス王子を見掛けた。

「キュリアス王子。オスカー王子はどうかされたんですか?」
「ああ、ロキ陛下。ちょうど良いところに。オスカーは学生時代の友人なので少々愚痴を聞いていたのですが、酔い潰れてしまいまして…」

どうやら縁談が潰れたことをキュリアス王子に愚痴っていてそのまま潰れてしまったらしい。
なんだか巻き込んでしまったようで申し訳なかった。

「わかりました。休憩室をお使いになられますか?」
「いえ。このまま部屋まで運んで寝かせておこうと思うのですが、流石に一人では大変なので少しお手伝いいただけないでしょうか?」
「ええ。構いませんよ」

確かにここからオスカー王子の客室までは距離があるし、いくらオスカー王子の友人とは言えキュリアス王子にだけ任せるわけにはいかないだろう。

「リヒター。悪いが兄上にキュリアス王子と一緒にオスカー王子を部屋に運ぶと伝えてきてくれないか?」
「ロキ陛下。念のためご一緒したいのですが…」
「大丈夫だ。ほら。オスカー王子は完全に酔い潰れて眠っているし、暴れる心配もないだろう?」
「…………わかりました。すぐに後から追い掛けますので、できるだけ単独行動はなさらないでください。今回はシャイナー陛下も来ていますし、他にも陛下を狙う者が潜んでいるかもしれません。カークは付いていますが、絶対に油断はしないようにして下さい」
「大げさだな。まああのテリーという従者もまだ見つかっていないし、一応気をつけてはおこう」
「そうしてください。キュリアス王子、ロキ陛下をお願いいたします」
「ああ。任せてくれ」

そうして俺はキュリアス王子と一緒にオスカー王子を運んだのだけど、その道すがら色々とロロイアの薬についても話を聞くことができ、なかなか有意義な時間を過ごすことができた。


***


【Side.テリー】

(何故だ、何故だ、何故だ?!)

俺は今よくわからない状況に陥ってしまっている。

カール王子に謹慎とばかりに部屋に閉じ込められ、レトロンから送られてきた父からの書状にも叱責するような内容が記されていた。
取り敢えず一度国に戻り、改めて家族揃ってロキ陛下に詫びの品を手に謝罪に向かおうとも書かれてあり、イライラしてしまった。
何故自分と仲間内だけで楽しもうと持ち込んだクスリのせいでそこまでしないといけないんだと正直言って腹立たしい気持ちでいっぱいになってしまう。
確かにネイトがあんなことになって騒動にはなってしまったが、それさえなければ別に何も問題はなかったはず。
それなのに────。

「パーティーに参加するなっておかしくないか?!」

そう言った俺にネイトもフリードリヒもお前のせいだろと言わんばかりに睨んできた。

「折角ロキ陛下と親しくなって楽しい夜を過ごせる機会を持てるかもしれなかったのに!!」

そう。
最初はそんな事思っていなかったものの、俺はふとそんな可能性に思い至ったのだ。
セドリック王子の愛人で、誰でも咥えこむ淫乱なら自分にだってチャンスはあるはず。
けれどそれも接点を作れなければアピールすることすらできない。

「折角自慢できると思ったのに!」

今注目されているロキ陛下と寝たというのはそれなりに自慢にもなる。
それなのに────。

そこからは寝室に閉じこもってイライラする気持ちを落ち着けていたのだが…。

(いや。まだチャンスはあるはずだ)

パーティーは今頃ちょうど中盤くらい。
酒が入って気分も良くなっているロキ陛下と話すことができればまだチャンスはあるはず。
そう思って他の二人の目を盗んでこっそり服装を整え、部屋から脱出した。

(絶対にロキ陛下を垂らし込んで寝てみせる!)

そうして意気揚々とパーティー会場に向かったはずなのに────。

「いたか?」
「いや。逃げられた」
「絶対に殺せ。報復だ。あいつがこの国にクスリを持ち込まなければ…」

(なんだ、なんだ、なんだ?!)

黒ずくめの暗殺者風の男達が暗器を手に俺の命を狙っている。
なんとか隠れることに成功したものの、見つかったら即殺されてしまうだろう。

「ネブリスはもう終わりだ」
「闇マーケットがガヴァムの奴らに全部潰された」
「最早戦争の資金源が断たれたに等しい。このままではあっと言う間にメルケに攻め入られるぞ」
「こうなるのが怖かったからレトロンの方に持ち込んだのにっ…!奴らに口実を与えたせいで…!」

どうやら男達はガヴァムとアンシャンテの間にある国の一つ、ネブリス国の者達のようだ。
間近でヒソヒソと話される内容を聞いて、自分がここにクスリを持ち込んだせいでネブリスの闇マーケットが潰されたらしいということが分かった。
それで長らく紛争が絶えなかったネブリス国とメルケ国の戦いに終止符が打たれようとしているらしい。

(なんだよそれ?!)

たかだか数日で長年続いていた国と国の均衡を崩すなんて────ガヴァム、怖い。
しかもそのせいでこっちにしわ寄せが来るって最悪ではないだろうか?

(俺は…俺は何も悪くないのに…っ)

狙うならガヴァムのトップであるロキ陛下を狙えばいいのに、何故自分なんだと泣きたくなった。
このままでは絶対にマズい。
けれど怖くてここから動くこともできない。

(誰か…誰か助けてくれ…)

こんなことになるならずっと部屋に籠っていればよかった。
そもそもガヴァムになんて来なければよかったのだ。
それもこれも、自分をここに連れてきたカール王子が悪い。

そうして俺はブルブル震えながらひたすら息を殺して彼らをやり過ごした。
どれくらいそうしていただろう?
長かったような気もするし、短かったような気もしたが、聞こえてきた声にホッと安堵の息を漏らせたのはその相手がこの国で絶大な力を持つ相手だったからだ。

「それで?ロキはキュリアス王子と一緒にオスカー王子の部屋に?」
「はい。この後すぐに俺はロキ陛下のところへ戻りますが、カリン陛下もテリーと言う者がまだ見つかっていないのでご注意ください」
「わかった」

(カリン陛下だ!)

しかも有難いことに近衛騎士も沢山一緒に居る。
あれなら暗殺者に狙われていても助けてもらえるかも。
そう思って、会話の内容もよく聞かずにそのままそこへと飛び出した。

「カリン陛下!お助け下さい!」
「?!」

そして気づけば俺は暗殺者ではなく近衛騎士に思い切り剣を突きつけられていて、蒼白になってしまう。

「…………テリー?」
「カール王子の従者のテリーか?」

そう問われ、両手を上げながら小さくコクリと頷く。
頼むから殺さないでほしい。
正直言ってあまりの怖さにちょっとチビってしまった。

「助けて欲しい、とは?」

俺が無抵抗なことに一応は話を聞く気になってくれたのか、カリン陛下がそう尋ねてくれる。

「じ、実は…」

そうして先程暗殺者達が話していた件について説明すると、頭が痛いと言いながら頭を抱えてしまった。

「つまり、ネブリスが潰されてメルケの勝利であそこの小競り合いが終結すると…?」
「はい。恐らくは」
「…参ったな」

カリン陛下的には頭の痛い案件になってしまったらしい。

「こちらまで攻めてくるでしょうか?」

一人の近衛がカリン陛下へと尋ねる。

「読めんな。裏の連中も戦争になるなんて考えもせずネブリスのマーケットを潰したはずだ」

どうやら下手をするとメルケ国が勢いに乗ってガヴァムまで攻めてくる可能性も出てきたようだ。

「向こうからすればネブリスの者達を焚きつけるのは簡単だろうし、うちはロキのお陰でかなり経済が潤っているからな。利を狙って攻めてきても全くおかしくはない」
「…………では宰相はじめ各大臣にも情報の裏付けと対策を考えてもらわないといけませんね」
「そうだな。取り敢えずロキにすぐ話をすべきかだが…」

カリン陛下的にはそれも悩みどころらしい。
普通は国王にはすぐに話を持っていくものなのではないのだろうか?
そんな事を思いながら二人の会話を聞いていた。


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