170 / 234
149.他国からの客人⑮ Side.ロキ&テリー
しおりを挟む「この子、俺の子だった」
「へ?!」
「ど、どういう事かニャ?!」
ルイをお姫様抱っこして世界樹の中から出てきたアズの第一声に、エカとナムロ王様が困惑する。
それから、アズとルイが知った事を聞いて、アズの発言の意味を理解した。
実の子……正しくはその生まれ変わりと知ってから、アズのルイに対する溺愛っぷりは凄かった。
お城で暮らすルイに差し入れを持ってきたり、ルイがねだらなくてもお姫様抱っこしたり頬や額にキスしたり。
「学校の授業で必要な素材があれば獲ってきてあげるからね」
「は、はい……」
我が子の授業に使う素材の提供も惜しまないアズは、竜でも余裕でソロ狩り出来る特S級冒険者。
一方でアズに惚れかけていたルイは、前世のお父さんだと知ってしまい困惑気味だ。
「お母さんと話をしに行こう」
学園が長期休暇に入ると、アズはルイを誘ってアサギリ島に向かった。
世界樹の中で保管されている亡骸ではなく、この世に残されたルルの霊に会わせてあげるらしい。
アズが見せたいものがあるらしくて、エカとボクも同行したよ。
エカとボクにとっては、魔王討伐隊として行って以来のアサギリ島訪問だ。
アサケ大陸北東の海上に浮かぶ、アサギリ島。
草も生えない不毛の地で、かつては魔族と魔物がいる危険な場所だったけど、アズとルルが住むようになってから雰囲気が変わったと聞いていた。
「どう? ちょっと風景良くなっただろ?」
「ちょっとっていうレベルじゃない気がするよ」
エカがツッコミを入れる通り。
岩と土しか無かった大地が、一面の花畑に変わっていた。
「……綺麗~……コスモス畑みたいだ……」
元の世界にある花畑を連想したのか、ルイが呟いた。
咲き乱れる花々は種類も色も様々で、単色の花畑よりも華やかに見える。
「世界のあちこちから集めて植えたんだよ」
ベノワの背中の上から花畑を見下ろして、穏やかな声でアズが言う。
「最初はルルが花を育てようって言って、2人で行った場所から花を少しずつ持ち帰って植え続けたんだ。今はそれが自然に広がって咲いてるよ」
花々に慈しむような眼差しを向けた後、アズは花畑の中心にある小屋の隣に立つ、1本の木の近くにベノワを着陸させた。
「ルル、ただいま」
アズが声をかけると、瑞々しい緑の葉を茂らせる木の枝の間から、幻のように実体のない女性が現れた。
世界樹の中で眠る女性と同じ青いワンピース、長い黒髪と同じ色の犬耳とシッポ、開かれた黒い瞳は艷やかな宝石のように澄んでいる。
『おかえり、アズ。久しぶり、エカ』
念話が優しい波長で心に流れてくる。
精霊のように神秘的な雰囲気を漂わせて微笑むルルは、アズの隣にいるルイを見てハッとした。
『アズ、その黒髪の子は……?』
「ルルが異世界へ送った子だよ」
アズがルイの両肩に手を置き、微笑んで伝える。
『……よかった。生まれてきてくれて凄く嬉しい……』
その時浮かんだルルの微笑みは、切ないくらいに綺麗だった。
「……」
言葉の代わりに、ルイの瞳から涙が流れ始める。
何故泣いているのか、本人も分からない様子だった。
次々に頬を伝う涙が、地面に落ちて吸い込まれてゆく。
『日本のお父さんとお母さんは、どんな名前を付けてくれたの?』
「……る……【琉生】……です……」
問いかけられて、ルイは嗚咽しながらやっとの思いで答えた。
『素敵な名前、これからはルイって呼ぶね』
ルルがまた微笑む。
『……おかえり、ルイ……』
その【声】に呼応するように、周囲の花々から無数の花びらが舞った。
「へ?!」
「ど、どういう事かニャ?!」
ルイをお姫様抱っこして世界樹の中から出てきたアズの第一声に、エカとナムロ王様が困惑する。
それから、アズとルイが知った事を聞いて、アズの発言の意味を理解した。
実の子……正しくはその生まれ変わりと知ってから、アズのルイに対する溺愛っぷりは凄かった。
お城で暮らすルイに差し入れを持ってきたり、ルイがねだらなくてもお姫様抱っこしたり頬や額にキスしたり。
「学校の授業で必要な素材があれば獲ってきてあげるからね」
「は、はい……」
我が子の授業に使う素材の提供も惜しまないアズは、竜でも余裕でソロ狩り出来る特S級冒険者。
一方でアズに惚れかけていたルイは、前世のお父さんだと知ってしまい困惑気味だ。
「お母さんと話をしに行こう」
学園が長期休暇に入ると、アズはルイを誘ってアサギリ島に向かった。
世界樹の中で保管されている亡骸ではなく、この世に残されたルルの霊に会わせてあげるらしい。
アズが見せたいものがあるらしくて、エカとボクも同行したよ。
エカとボクにとっては、魔王討伐隊として行って以来のアサギリ島訪問だ。
アサケ大陸北東の海上に浮かぶ、アサギリ島。
草も生えない不毛の地で、かつては魔族と魔物がいる危険な場所だったけど、アズとルルが住むようになってから雰囲気が変わったと聞いていた。
「どう? ちょっと風景良くなっただろ?」
「ちょっとっていうレベルじゃない気がするよ」
エカがツッコミを入れる通り。
岩と土しか無かった大地が、一面の花畑に変わっていた。
「……綺麗~……コスモス畑みたいだ……」
元の世界にある花畑を連想したのか、ルイが呟いた。
咲き乱れる花々は種類も色も様々で、単色の花畑よりも華やかに見える。
「世界のあちこちから集めて植えたんだよ」
ベノワの背中の上から花畑を見下ろして、穏やかな声でアズが言う。
「最初はルルが花を育てようって言って、2人で行った場所から花を少しずつ持ち帰って植え続けたんだ。今はそれが自然に広がって咲いてるよ」
花々に慈しむような眼差しを向けた後、アズは花畑の中心にある小屋の隣に立つ、1本の木の近くにベノワを着陸させた。
「ルル、ただいま」
アズが声をかけると、瑞々しい緑の葉を茂らせる木の枝の間から、幻のように実体のない女性が現れた。
世界樹の中で眠る女性と同じ青いワンピース、長い黒髪と同じ色の犬耳とシッポ、開かれた黒い瞳は艷やかな宝石のように澄んでいる。
『おかえり、アズ。久しぶり、エカ』
念話が優しい波長で心に流れてくる。
精霊のように神秘的な雰囲気を漂わせて微笑むルルは、アズの隣にいるルイを見てハッとした。
『アズ、その黒髪の子は……?』
「ルルが異世界へ送った子だよ」
アズがルイの両肩に手を置き、微笑んで伝える。
『……よかった。生まれてきてくれて凄く嬉しい……』
その時浮かんだルルの微笑みは、切ないくらいに綺麗だった。
「……」
言葉の代わりに、ルイの瞳から涙が流れ始める。
何故泣いているのか、本人も分からない様子だった。
次々に頬を伝う涙が、地面に落ちて吸い込まれてゆく。
『日本のお父さんとお母さんは、どんな名前を付けてくれたの?』
「……る……【琉生】……です……」
問いかけられて、ルイは嗚咽しながらやっとの思いで答えた。
『素敵な名前、これからはルイって呼ぶね』
ルルがまた微笑む。
『……おかえり、ルイ……』
その【声】に呼応するように、周囲の花々から無数の花びらが舞った。
8
お気に入りに追加
1,086
あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。



僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる