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【国際会議】
101.国際会議㊴
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翌日、俺とセドは剣の手合わせをしに訓練場を借りれないかと思いロキ陛下を探した。
すると今日は朝から訓練場で騎士達を鍛えているらしく、ずっとそこにいるらしい。
その話を聞いて俺とセドはそちらへと直接向かってみたのだが……。
「死屍累々だな」
そこには沢山の騎士達が息も絶え絶えに地面で死にかけていた。
どうやら相当長時間扱かれたらしい。
最初はロキ陛下は剣の腕もないし、体力もそんなにありそうには見えないし、一言で言えば弱いからまともに指導なんてできないだろうと思っていた。
でも、ここまで酷い騎士達相手だとそれなりに形にはなるようで、鞭をビシバシ振るいながらドS全開で騎士達を鍛えていてちょっとビビってしまったくらいだ。
でもその内容は至って真面そうだったのでちょっと安心してしまう。
「そんな体たらくで兄上を守れると思っているのか?ほら、こうだろう?俺でも出来るのに本職ができないはずがない」
そう言いながら剣をひと振り手にし、綺麗な木の葉斬りをやってみせるロキ陛下。
「いつの間に?」
「本当にな…」
国際会議の時は全く剣の腕はなかったはずなのに、いつの間に木の葉斬りをあんなに綺麗にできるようになったんだろう?
そう思っていたら、街歩きの時に一緒だった近衛騎士が近づいてきて、あれは自分が教えたのだと言ってきた。
「ロキ陛下の体術が段々形になってきたので、試しに教えたらできるようになりました」
「へぇ…。やればできるんだな」
「その…これができるようになればいざという時カリン陛下を助けられますよと言ったら一回で形を頭で覚えて下さって、後は反復して身体で覚え込んでできるようになったんです」
「え?つまりあれはカリン王子への愛情から覚えたってことなのか?」
「はい…。ロキ陛下はカリン陛下中心に世界が回っているので…」
正直言ってそんな不純っぽい理由で剣技を覚える奴がいるなんてと衝撃を受けた。
俺の周りにそんな奴は一人もいない。
「えぇ……?」
やっぱりロキ陛下は俺とは住む世界が全然違うんだなと、思わず頬を引き攣らせてしまう。
そうこうしているうちに休憩っぽい感じになったのでその近衛がロキ陛下に声を掛けてくれた。
「陛下。セドリック王子とアルフレッド妃殿下がお見えです」
「そうか。セドリック王子、何か御用でも?」
「ああ。アルフレッドと剣を振りたいと思ってな。場所を貸してもらえないか?」
「ええ。構いませんよ。見ての通りここは騎士達が寝そべっているので、あちらの空いている場所をお使いください」
「助かる。アルフレッド、行くぞ」
「あ、ああ」
俺は倒れ伏す騎士達を横目に、指定された場所へとセドと向かう。
ここなら広いから木々や花など気にせずセドと全力で打ち合う事ができるから十分だ。
(庭でやるとそのあたりが気になるから全力を出せなかったんだよな…)
だからこれ幸いと俺は嬉々として剣を手にし、鬱屈した気持ちを振り払うように余すところなく剣を振るった。
一閃二閃、肩慣らしに振ってから段々とそのスピードを上げていく。
キンキンッと小気味よく鳴る音が耳に心地いい。
(やっぱこうでないとな)
剣を手に持つ者として、手を抜くなんて考えは一切ない。
寧ろこんな楽しいことをするのに手を抜く奴の気が知れない。
楽しい鍛錬をサボる奴なんて騎士には不向きだ。
やる気がないなら辞めてしまえばいいのに。
ガヴァムの騎士はそれくらい俺には理解不能だった。
強い奴と切磋琢磨して剣技を極めていくのは快感以外の何ものでもないのに……。
(最高だ…)
全てを受け止め力の乗った剣で返してくるセドは本当に改めて魅力的だった。
周りに転がってる奴らがクソみたいな奴ばかりだから余計に輝いて見えて、ちょっとどころではなく惚れ直してしまう。
「ヤバいなセド。ここにきてお前との打ち合う日々が余計に好きになった」
「そうか。それは何よりだ」
そんな俺の言葉にセドが物凄く嬉しそうに笑ってくる。
そんな中でもどんどん激しさを増していく剣の応酬。
気づけば俺は周囲なんて目に入らないほどに集中してセドと打ち合い、気が済むまで剣を振り続けていた。
それから暫くして満足が行ったので切り上げたのだが、ロキ陛下が笑顔でタオルを差し出してきて、労ってくれた。
基本的にロキ陛下は俺じゃなくセドとしか話さないので俺は黙って横でやり取りを聞いている。
「お二人の素晴らしい剣技に感服しました」
どうやら先程の打ち合いをロキ陛下は見ていてくれたらしい。
「そうか。今日はロキ陛下はずっとここに?」
「ええ。兄が騎士達が情けなさ過ぎてレオナルド皇子にまで心配されてしまったと落ち込んでいたので、そんなにレベルが低いなら兄上を守れないんじゃないかと思ってちょっと活を入れに」
「カリン王子のためか…本当に徹底しているな」
「はい。俺は兄のためにしか動く気はありませんから。妃殿下は確か元々ミラルカの騎士でしたよね?兄上を守るためにも、レオナルド皇子の資料を参考にして妃殿下の剣技を目標に騎士達を鍛え直してみせます」
どうやら俺とレオナルド皇子が作った資料をちゃんと訓練に取り入れてくれるらしい。
人によってはプライドが勝って即却下したりもするもんだけど、ロキ陛下はこのあたりは柔軟で有難い限りだ。
二人であれこれ考えた甲斐があった。
あれを使ってもらえるのならきっとこの騎士達の不甲斐なさも徐々に改善されていくことだろう。
そうホッと安堵の息を吐いたのも束の間────。
「アルフレッドの剣技を目標に?ハハハッ!なかなかの心意気だ。そうは言ってもものにならない者もいるのではないか?」
セドがそう口にしたのを皮切りに、ロキ陛下は温和な顔で鬼畜な発言を口にし始めた。
「勿論そういう者もいるとは思いますが、ちょうどミスリルがこれから大量に必要になるので、やる気のない者達は全員鉱山に送って労働させようと思ってるんですよ」
「ほぉ?」
「体力もつきますし、規定量を採掘できなければ帰ってこれないのでその分やる気も出るでしょう?」
「…ちなみに規定量とは?」
「そうですね…なにせアンシャンテとゴッドハルトまでレールを敷きたいので沢山あるに越したことはないですし…一人一ティーナ程ですかね」
(い、一ティーナ…だと?)
「…………そうか。それは一度行ったら五年は帰ってこれないかもしれないな」
これには流石のセドもドン引きしたのかすぐに言葉が出てこない様子だった。
ミスリルって他の金属に比べて軽いんだぞ?
単純に採掘量を重さで言ってくるってどんだけ鬼畜なんだよ?!
「死ぬ気でやれば三年ほどで戻ってこれるのでは?兄上の役に立てない騎士なんて暫く戻ってこなくていいですよ。視界に入れたくありませんし、一日2食の粗末な食事で死ぬ気で働いてほしいです」
(ちょっ…!兄の役に立たない奴の顔なんて見たくないってはっきり言ったぞ?!)
死ぬ気で働けと言ってるけど、この場合比喩ではなく本気で言ってるんだろう。
条件的には強制労働そのもの。
騎士達に鉱山で5年も強制労働してこいと言うのは騎士をやめろと言っているに等しいから、かなり酷い話だ。
いや、騎士達の腑抜けっぷりに腹を立ててるのもわかるけど、なんか色々基準がおかしい気がする!
「そうだな。ロキ陛下は本当にカリン王子が絡むとSっ気が増すな」
「そうですか?そんなことはないと思うんですが」
「いや、いい。それよりも…後ろの騎士達が急に頑張り始めたな」
セドが言うようにさっきまで倒れ伏して今日はもう動く気はないぞと言わんばかりだった騎士達が急に焦ったように身を起こし、疲れ切った体に鞭打って動き始めていた。
けれどそんな騎士達を見てもロキ陛下の感想は至ってシンプルだ。
「え?ああ、休憩時間が終わったせいでは?」
(違うっ!!)
「…そうだろうな。皆やる気が出たようで何よりだ」
(ほら、セドだって俺と同じように心の中でツッコンでるぞ?!)
どうしてロキ陛下はこのあたり人の心がわからないんだろうか?
誰だって好き好んでそんな恐ろしい場所には行きたくないだろう。
どう考えてもロキ陛下の言葉に本気を感じて頑張り始めただけだろうに。
「ええ。では俺はまだまだ彼らがサボらないよう見ておきたいので、今日はこの辺で」
(しかもまだまだ付き合う気満々だし…)
ロキ陛下のカリン王子への愛の重さに頬が引き攣ってしまう。
これでは騎士達の性根が叩き直されるのが先か潰されるのが先かのどちらかだろう。
でも見たところロキ陛下は潰れないギリギリを見極めて嬲っているようにしか見えないから余計に怖い。
ドSを敵に回すのはこんなに怖いんだなとちょっとだけ震えてしまった。
「ああ。俺達は明日帰ろうと思っている。また挨拶の時に会おう」
「はい。今回は色々ありがとうございました。何やら俺の捜索も手伝ってくださったとか。この御礼はまたさせていただきますので」
「そうだな。楽しみにしている」
二人の会話がやっと終わったので俺はホッと息を吐き、早くブルーグレイに帰りたいなと強く思ったのだった。
***
翌日、いよいよブルーグレイへと帰る日がやってきた。
「ロキ陛下。機会があればブルーグレイにも遊びに来るといい。歓迎するぞ」
セドは別れ際にロキ陛下に遊びに来いとそうやって声を掛けていたけど、多分ロキ陛下はブルーグレイにわざわざ来たりはしないだろう。
なにせそこそこ距離があるし、基本的にカリン王子から離れる気がないからセドを怖がっているカリン王子を連れてわざわざブルーグレイに来る意味がない。
多分会う機会があるとしたら、それこそレールがゴッドハルトまで到達した時くらいじゃないだろうか。
今生の別れとは言わないが、それこそ数年単位で会うことはなくなるだろう。
(まあ…手紙のやり取りは続けるみたいだし、レオナルド皇子とも親交を深めてるみたいだから全く交流がなくなるわけではないだろうけど…)
何かしらの繋がりでまた会うこともなくはないのかもしれない。
(俺はできるだけ御免だけど…)
はっきり言って本当に、ロキ陛下ほど俺を慄かせ怖がらせた相手はいないと思う。
戦場の怖さとはまた違う、この背筋が寒くなる感覚はできればあまり味わいたくない類のものだ。
これまでの人生に同情できるところは多々あるが、あまり好んで関わり合いになりたい相手ではない。
「ではまた。お気をつけて」
二人の話が終わり、にこやかに俺達を見送ってくれるロキ陛下。
その隣にはカリン王子の姿も当然あるが、迎えてくれた初日ほど顔色は悪くないように思えた。
きっとロキ陛下を助けるのにこちらが手を貸したのが大きいのだろう。
少しはセドとの確執が緩和されたのなら良かったと思う。
こうして色々あったガヴァム訪問は終わったものの、ブルーグレイに戻ってからアンシャンテにいるセドの母親から手紙が送られてきたという話を聞き、折角機嫌よく帰ってきたセドの空気がピリピリしだして辟易したのはまた別の話。
この時ばかりはセドを笑わせてくれるロキ陛下にカムバックと言いたくなったのだった。
****************
※気づけばトータル100話超えててちょっとびっくりしました。
国際会議編が長引いたので途中から短編から長編に変更しています(^^;)
これで長かった国際会議編もやっと終了です。
お付き合いくださった皆様、ありがとうございました。
他の止まってる作品もまたボチボチ再開していけたらと思いますので、よろしくお願いします。
すると今日は朝から訓練場で騎士達を鍛えているらしく、ずっとそこにいるらしい。
その話を聞いて俺とセドはそちらへと直接向かってみたのだが……。
「死屍累々だな」
そこには沢山の騎士達が息も絶え絶えに地面で死にかけていた。
どうやら相当長時間扱かれたらしい。
最初はロキ陛下は剣の腕もないし、体力もそんなにありそうには見えないし、一言で言えば弱いからまともに指導なんてできないだろうと思っていた。
でも、ここまで酷い騎士達相手だとそれなりに形にはなるようで、鞭をビシバシ振るいながらドS全開で騎士達を鍛えていてちょっとビビってしまったくらいだ。
でもその内容は至って真面そうだったのでちょっと安心してしまう。
「そんな体たらくで兄上を守れると思っているのか?ほら、こうだろう?俺でも出来るのに本職ができないはずがない」
そう言いながら剣をひと振り手にし、綺麗な木の葉斬りをやってみせるロキ陛下。
「いつの間に?」
「本当にな…」
国際会議の時は全く剣の腕はなかったはずなのに、いつの間に木の葉斬りをあんなに綺麗にできるようになったんだろう?
そう思っていたら、街歩きの時に一緒だった近衛騎士が近づいてきて、あれは自分が教えたのだと言ってきた。
「ロキ陛下の体術が段々形になってきたので、試しに教えたらできるようになりました」
「へぇ…。やればできるんだな」
「その…これができるようになればいざという時カリン陛下を助けられますよと言ったら一回で形を頭で覚えて下さって、後は反復して身体で覚え込んでできるようになったんです」
「え?つまりあれはカリン王子への愛情から覚えたってことなのか?」
「はい…。ロキ陛下はカリン陛下中心に世界が回っているので…」
正直言ってそんな不純っぽい理由で剣技を覚える奴がいるなんてと衝撃を受けた。
俺の周りにそんな奴は一人もいない。
「えぇ……?」
やっぱりロキ陛下は俺とは住む世界が全然違うんだなと、思わず頬を引き攣らせてしまう。
そうこうしているうちに休憩っぽい感じになったのでその近衛がロキ陛下に声を掛けてくれた。
「陛下。セドリック王子とアルフレッド妃殿下がお見えです」
「そうか。セドリック王子、何か御用でも?」
「ああ。アルフレッドと剣を振りたいと思ってな。場所を貸してもらえないか?」
「ええ。構いませんよ。見ての通りここは騎士達が寝そべっているので、あちらの空いている場所をお使いください」
「助かる。アルフレッド、行くぞ」
「あ、ああ」
俺は倒れ伏す騎士達を横目に、指定された場所へとセドと向かう。
ここなら広いから木々や花など気にせずセドと全力で打ち合う事ができるから十分だ。
(庭でやるとそのあたりが気になるから全力を出せなかったんだよな…)
だからこれ幸いと俺は嬉々として剣を手にし、鬱屈した気持ちを振り払うように余すところなく剣を振るった。
一閃二閃、肩慣らしに振ってから段々とそのスピードを上げていく。
キンキンッと小気味よく鳴る音が耳に心地いい。
(やっぱこうでないとな)
剣を手に持つ者として、手を抜くなんて考えは一切ない。
寧ろこんな楽しいことをするのに手を抜く奴の気が知れない。
楽しい鍛錬をサボる奴なんて騎士には不向きだ。
やる気がないなら辞めてしまえばいいのに。
ガヴァムの騎士はそれくらい俺には理解不能だった。
強い奴と切磋琢磨して剣技を極めていくのは快感以外の何ものでもないのに……。
(最高だ…)
全てを受け止め力の乗った剣で返してくるセドは本当に改めて魅力的だった。
周りに転がってる奴らがクソみたいな奴ばかりだから余計に輝いて見えて、ちょっとどころではなく惚れ直してしまう。
「ヤバいなセド。ここにきてお前との打ち合う日々が余計に好きになった」
「そうか。それは何よりだ」
そんな俺の言葉にセドが物凄く嬉しそうに笑ってくる。
そんな中でもどんどん激しさを増していく剣の応酬。
気づけば俺は周囲なんて目に入らないほどに集中してセドと打ち合い、気が済むまで剣を振り続けていた。
それから暫くして満足が行ったので切り上げたのだが、ロキ陛下が笑顔でタオルを差し出してきて、労ってくれた。
基本的にロキ陛下は俺じゃなくセドとしか話さないので俺は黙って横でやり取りを聞いている。
「お二人の素晴らしい剣技に感服しました」
どうやら先程の打ち合いをロキ陛下は見ていてくれたらしい。
「そうか。今日はロキ陛下はずっとここに?」
「ええ。兄が騎士達が情けなさ過ぎてレオナルド皇子にまで心配されてしまったと落ち込んでいたので、そんなにレベルが低いなら兄上を守れないんじゃないかと思ってちょっと活を入れに」
「カリン王子のためか…本当に徹底しているな」
「はい。俺は兄のためにしか動く気はありませんから。妃殿下は確か元々ミラルカの騎士でしたよね?兄上を守るためにも、レオナルド皇子の資料を参考にして妃殿下の剣技を目標に騎士達を鍛え直してみせます」
どうやら俺とレオナルド皇子が作った資料をちゃんと訓練に取り入れてくれるらしい。
人によってはプライドが勝って即却下したりもするもんだけど、ロキ陛下はこのあたりは柔軟で有難い限りだ。
二人であれこれ考えた甲斐があった。
あれを使ってもらえるのならきっとこの騎士達の不甲斐なさも徐々に改善されていくことだろう。
そうホッと安堵の息を吐いたのも束の間────。
「アルフレッドの剣技を目標に?ハハハッ!なかなかの心意気だ。そうは言ってもものにならない者もいるのではないか?」
セドがそう口にしたのを皮切りに、ロキ陛下は温和な顔で鬼畜な発言を口にし始めた。
「勿論そういう者もいるとは思いますが、ちょうどミスリルがこれから大量に必要になるので、やる気のない者達は全員鉱山に送って労働させようと思ってるんですよ」
「ほぉ?」
「体力もつきますし、規定量を採掘できなければ帰ってこれないのでその分やる気も出るでしょう?」
「…ちなみに規定量とは?」
「そうですね…なにせアンシャンテとゴッドハルトまでレールを敷きたいので沢山あるに越したことはないですし…一人一ティーナ程ですかね」
(い、一ティーナ…だと?)
「…………そうか。それは一度行ったら五年は帰ってこれないかもしれないな」
これには流石のセドもドン引きしたのかすぐに言葉が出てこない様子だった。
ミスリルって他の金属に比べて軽いんだぞ?
単純に採掘量を重さで言ってくるってどんだけ鬼畜なんだよ?!
「死ぬ気でやれば三年ほどで戻ってこれるのでは?兄上の役に立てない騎士なんて暫く戻ってこなくていいですよ。視界に入れたくありませんし、一日2食の粗末な食事で死ぬ気で働いてほしいです」
(ちょっ…!兄の役に立たない奴の顔なんて見たくないってはっきり言ったぞ?!)
死ぬ気で働けと言ってるけど、この場合比喩ではなく本気で言ってるんだろう。
条件的には強制労働そのもの。
騎士達に鉱山で5年も強制労働してこいと言うのは騎士をやめろと言っているに等しいから、かなり酷い話だ。
いや、騎士達の腑抜けっぷりに腹を立ててるのもわかるけど、なんか色々基準がおかしい気がする!
「そうだな。ロキ陛下は本当にカリン王子が絡むとSっ気が増すな」
「そうですか?そんなことはないと思うんですが」
「いや、いい。それよりも…後ろの騎士達が急に頑張り始めたな」
セドが言うようにさっきまで倒れ伏して今日はもう動く気はないぞと言わんばかりだった騎士達が急に焦ったように身を起こし、疲れ切った体に鞭打って動き始めていた。
けれどそんな騎士達を見てもロキ陛下の感想は至ってシンプルだ。
「え?ああ、休憩時間が終わったせいでは?」
(違うっ!!)
「…そうだろうな。皆やる気が出たようで何よりだ」
(ほら、セドだって俺と同じように心の中でツッコンでるぞ?!)
どうしてロキ陛下はこのあたり人の心がわからないんだろうか?
誰だって好き好んでそんな恐ろしい場所には行きたくないだろう。
どう考えてもロキ陛下の言葉に本気を感じて頑張り始めただけだろうに。
「ええ。では俺はまだまだ彼らがサボらないよう見ておきたいので、今日はこの辺で」
(しかもまだまだ付き合う気満々だし…)
ロキ陛下のカリン王子への愛の重さに頬が引き攣ってしまう。
これでは騎士達の性根が叩き直されるのが先か潰されるのが先かのどちらかだろう。
でも見たところロキ陛下は潰れないギリギリを見極めて嬲っているようにしか見えないから余計に怖い。
ドSを敵に回すのはこんなに怖いんだなとちょっとだけ震えてしまった。
「ああ。俺達は明日帰ろうと思っている。また挨拶の時に会おう」
「はい。今回は色々ありがとうございました。何やら俺の捜索も手伝ってくださったとか。この御礼はまたさせていただきますので」
「そうだな。楽しみにしている」
二人の会話がやっと終わったので俺はホッと息を吐き、早くブルーグレイに帰りたいなと強く思ったのだった。
***
翌日、いよいよブルーグレイへと帰る日がやってきた。
「ロキ陛下。機会があればブルーグレイにも遊びに来るといい。歓迎するぞ」
セドは別れ際にロキ陛下に遊びに来いとそうやって声を掛けていたけど、多分ロキ陛下はブルーグレイにわざわざ来たりはしないだろう。
なにせそこそこ距離があるし、基本的にカリン王子から離れる気がないからセドを怖がっているカリン王子を連れてわざわざブルーグレイに来る意味がない。
多分会う機会があるとしたら、それこそレールがゴッドハルトまで到達した時くらいじゃないだろうか。
今生の別れとは言わないが、それこそ数年単位で会うことはなくなるだろう。
(まあ…手紙のやり取りは続けるみたいだし、レオナルド皇子とも親交を深めてるみたいだから全く交流がなくなるわけではないだろうけど…)
何かしらの繋がりでまた会うこともなくはないのかもしれない。
(俺はできるだけ御免だけど…)
はっきり言って本当に、ロキ陛下ほど俺を慄かせ怖がらせた相手はいないと思う。
戦場の怖さとはまた違う、この背筋が寒くなる感覚はできればあまり味わいたくない類のものだ。
これまでの人生に同情できるところは多々あるが、あまり好んで関わり合いになりたい相手ではない。
「ではまた。お気をつけて」
二人の話が終わり、にこやかに俺達を見送ってくれるロキ陛下。
その隣にはカリン王子の姿も当然あるが、迎えてくれた初日ほど顔色は悪くないように思えた。
きっとロキ陛下を助けるのにこちらが手を貸したのが大きいのだろう。
少しはセドとの確執が緩和されたのなら良かったと思う。
こうして色々あったガヴァム訪問は終わったものの、ブルーグレイに戻ってからアンシャンテにいるセドの母親から手紙が送られてきたという話を聞き、折角機嫌よく帰ってきたセドの空気がピリピリしだして辟易したのはまた別の話。
この時ばかりはセドを笑わせてくれるロキ陛下にカムバックと言いたくなったのだった。
****************
※気づけばトータル100話超えててちょっとびっくりしました。
国際会議編が長引いたので途中から短編から長編に変更しています(^^;)
これで長かった国際会議編もやっと終了です。
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*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
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