【完結】攻略対象×攻略対象はありですか?

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【番外編】

8.腐なメイドと腐な侍女

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※リクエスト第八弾。腐なメイドさんのお話。
一人より二人かなと思ったのでメイドさんと侍女でタッグを組ませてみました。
二人でキャッキャウフフとこんな風に本作りに精を出し広めてくれたはずです(^^)

****************

私の名はメイリーン。
ここラクサノーラ国の城で働くメイドですわ。
そして私には趣味がありますの。
それは────ズバリ、男×男の素敵な日常を描いた本作り!
これまでの私はただの妄想を駆使して作ってきたのですが、なんと素晴らしいことに第一王子が宰相のご嫡男を射止めてくっついてしまったのです~!
なんてハッピーな展開なのでしょう!
これはもう黙っているなんて到底できそうにありませんわ。
一に観察、二に観察、三、四を飛ばして五に製本!これですわ!

「ああ…素敵……」

今日もダレス王子とノルディック様はあちらこちらでイチャついておられますわ。
お二人がこっそり愛を深めている姿を見る度に胸がときめきますの。
そんな日々を過ごしていたところ、この城に新しい侍女の方が入ってこられました。
どうやらブラウン王子の婚約者ユリエンヌ様の口利きで入られた方のようですね。
ダレス王子の専属侍女になるようです。

(むむっ。これは由々しき事態ですわ)

もしやお手付きを狙ってのことでしょうか?
ダレス王子とノルディック様の愛が更に燃え上がる予感…!

(これはチェックですわ!)

私は嬉々としてすぐさまリサーチを開始し始めました。
今日も扉の外でそっと耳を押し当て中の様子をチェック!

「んん…ノル、ここ、扉の前だか…ら……」
「大丈夫。ほら口を塞いでいたら聞こえないから…」
「んぅ…」

(キャー!まさかまさかの扉前エッチに遭遇ですわ!)

ふふふっ!
ああ、妄想が止まりません。
きっとノルディック様は恥ずかしがるダレス王子にあんなことやこんなことをされるんですね?

「んっんっ…」

まさに今、この扉一枚向こうで致しているのですね?!
扉が時折軋むのはそのせいですね?!
想像するだけで鼻血が出そうですわ!
立ったままあ~んなことやこ~んなことを囁かれて、乱れまくるわけですね?!
時折漏れ聞こえるダレス王子の切なげな声でご飯三杯はいけますわ!

それからどれくらい妄想を膨らませていたでしょうか?
間が悪いことに最後まで聞くことはできず、その新しく入った侍女の方がやって来て私に声を掛けてきてしまいました。

「そこの貴女。何か?」
「いえっ!激しい夜にはシーツの替えは如何ほどご用意しようかと…!いや、その…え~っと…」

妄想しすぎて頭の中でシーツは何枚取り換えるのかしらと絶倫ノルディック様を想像していたので、思わずそんな言葉が口から飛び出してしまいました。
失敗です。
でもそんな私に彼女は呆れる様子もなく、淡々と答えました。

「三枚はいるのでは?」
「やっぱり?!ですよね!」

そうやって力説していたら背後の扉が徐にゆっくりと開いてしまいます。
どうやら我々の存在に気づかれてしまった様子。
不覚でしたわ。

「……盗み聞きかな?」

そこに立っているのは当然少しだけ紅潮した頬でボタンを二つほど開けたノルディック様と、着乱れた姿で真っ赤な顔をしながらフルフル震えるダレス王子で…。

(色気!色気をしまってくださいませ!)

「「ごちそうさまです!!」」

気づけば私は侍女の方と一緒にそう叫んで勢いよく頭を下げつつ、緩む口元を必死に引き締めておりました。
二人揃って逃げるに逃げられなかったので、にっこり笑ったノルディック様にそのまま罰を言い渡されてしまいましたが、悔いはありませんわ!

「盗み聞きの罰として、二人はたまにでいいからダリィの惚気話を聞くこと」
「……はい」
「かしこまりました」

(何故惚気話?)

それから暫く私達二人はダレス王子の惚気に散々砂を吐かされながらも内心でニマニマ聞かせていただき、妄想逞しく二人で沢山の本を生み出しました。




「ねえジーナ。今度は学園生時代のお話にしましょうよ!」
「いいわね、メイリーン。ここはやっぱり裏庭かしら?」
「そうね、そうね。きっとノルディック様のことだから強引にダレス王子を襲うのよ!」

そんな風に楽しく盛り上がっていたら、徐に割り込んでくる声があって飛び上がってしまいました。

「ノルは強引に襲ったりしないぞ?」
「「キャー!!」」

バレたバレたと蒼白になり焦る私達にダレス王子がニコリと笑ってこられます。

「最近おかしな本が出回ってるって聞いたんだけど、心当たりは?」
「「…………申し訳ございません」」

こうして私達の創作活動は本人に知られてしまい、根も葉もない物を作る場合はその旨をきちんと書いておくようにと釘を刺され、その上で記念本的に学園生時代の話を本にしてくれたら嬉しいなと言ってもらえました。
どうやら馴れ初め話として手元に置いて『こんな時があったな』と振り返りたいと思いつかれたらしいのです。
まあ公認してもらえるならそれくらいお安い御用だと私達は詳しく学園時代の馴れ初め話を聞いたのですけれど……。

「いやぁあああっ!神!神が降臨したわ!!」
「萌える!萌えまくるぅうっ!!」

根掘り葉掘り聞けば聞いただけ素晴らしい学園生活のあれこれを聞くことができたので、二人揃ってあっという間にペンが進み、挿絵込みの小説として猛スピードで書き上げることに成功致しました。
結構な厚みのある本になったので読みごたえも十分!
もちろん自分達用にも印刷済みですわ。

ダレス王子は完成されたそれを手に取り、とっても嬉しそうに笑って『大事にする』と言ってくださいましたが、当然こんな素晴らしい馴れ初め本を彼だけに独り占めさせる気はありません!

「ダレス王子。その…お二人を崇拝する同志達にも是非読む権利を与えて頂きたいのですが…」
「え?これを?」
「はい!」

人の馴れ初めなんて他の人が読んで楽しいのかなと首を傾げるダレス王子を二人がかりで説き伏せ、私とジーナは最高の笑顔でその権利をゲット致しました。

「広めるわよ~!」

こうして密やかにその馴れ初め本は少女達や夫人達の間に広められ、それと共に私達の妄想が詰め込まれた薄い本も新刊が待ち望んでもらえるほどの娯楽となっていきました。

さてさて、今日はどんなイチャイチャが拝めるのでしょうか?
庭園、執務室、柱の陰に人けのない廊下等々、私達はいつでも温かく見守っておりますわ!
メイドと侍女の最強タッグに死角などはありませんもの。

私達は満面の笑みで今日も素敵なお二人を観察しています♡
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