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【続編】

74:私が守る

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今のは何……?
いくら怒っても、アズレークの瞳があんな赤黒く輝くところを見たことがない。なんだか心臓がドキドキした。

いや、それよりも。
私は魔力切れになってしまった。
でもアズレークは?
なぜあんなに大怪我を負っているのに治癒していなかったのだろう? ロレンソを担いでいたから?

「アズレーク、肩の怪我の治癒は自分でできるかしら?」
「……すまない、パトリシア。私も魔力は後わずかだ。休息をとらせて欲しい」

アズレークの残存魔力がわずか? そんなことがあるの?

驚いて固まりそうになったが。
ロレンソと戦闘をしていたのだ。
こんなに体がボロボロになるまで。
魔力が底をつきかけても当然だ。

どこか体を休ませる場所があるだろうか?

「お嬢様」

声に驚き、心臓が止まるかと思った。
恐る恐る振り返ると。
召使いの女性が一人、私のすぐ後ろにいる。
もしやロレンソの意識が戻り、アズレークにとどめを刺すよう指示を出した!?

アズレークを守らなければならない。

その一心だった。
さっき別の召使いが投げ捨て剣がすぐそばに落ちている。
それを私は咄嗟に拾い上げ、構えていた。
拾い上げた瞬間。
地面に広がる水に手が触れ、その冷たさに一瞬ひるんだが、気合いで剣を拾い上げていた。

「もう止めて。ロレンソはほとんど怪我をしていない。でもアズレークは満身創痍なの。それでもロレンソを担いでここまで来たのよ。これ以上、彼を攻撃しないで」

こんな剣の正しい扱いは分からない。
それでも。
アズレークの魔力は底をつきかけている。全身傷だらけだ。
だったら私が彼を守るしかない。
私が召使いの女性を睨むと。

「……お嬢様。剣を収めてください。アズレーク様。ロレンソ第二皇子様からの伝言です。『勝負はついた。これ以上の手出しをするつもりはない。客人として迎えるので屋敷に来て欲しい』とのことでございます。……ロレンソ第二皇子様は蛮族ではありません。手出しするつもりはないと言った相手に、何か仕掛けることなどありません。そんなご自身の品格を落とすようなことはなさりませんので」

チラリと後ろを見る。
アズレークの黒い瞳と目を合わせた。
その瞳は「ロレンソを信じよう」と言っている。
それを示すように、抜いていた自身の剣を収めた。
私もそれを見て手にしていた剣を捨てる。

「ではこちらの馬にお乗りください」

いつの間に……?
そこには白馬が二頭いる。

「パトリシア、行こう」

アズレークに促され、馬に乗ると。

「屋敷の入口で他の者がお待ちしていますので、先に向かってください」
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