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【続編】

9:ハートブレイクは誰のせい?

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さすがに臣下の差し入れの昼食を王太子であるアルベルトは食べないだろう。

そう思い、アルベルトの名は出さなかったのだが……。

「え、アルベルト王太子さまは? のけ者にされたら、悲しむと思うぞ。表向きは気にしていないそぶりをするだろうが。多分、一人部屋で落ち込む」

「そうなのですか!?」

「それはそうだろう。それじゃなくてもアルベルト王太子さまはハートブレイクしているんだ。故意に避けられたと分かったら、それは凹むさ」

マルクスはあっけらかんと言うが。
私は冷や汗ものだ。
この国の王太子をハートブレイクさせたのは私なのだから。

「王太子さまの食事は、味見が必要だろう、マルクス。王宮内の料理人の料理でもそうなのだから、外部から持ち込まれた料理にはもっと厳しい目が向けられる。だからそう簡単に王太子に声をかけられないと考えただけですよ」

……!
レオナルドは……さすがた。機転が利く。
思わず感動の眼差しでその姿を見てしまう。
今は完全に、乙女ゲーム『戦う公爵令嬢』の魔術師レオナルドとして彼を見てしまう。

「あー、なるほどな。まあ、それだったら俺がまず味見してもいいけどさ。それはさておき。俺はもう我慢できないぞ、パトリシアさま。さっきからしているこの香り、トリュフだろう?」

「そうだよー、マルクス兄! 希少な春トリュフを、た~っぷり卵に混ぜ込んだんだよ!」

スノーの言葉に再びマルクスの目が輝く。
待ちきれないのはみんな一緒。
だから。

「早速食べましょう!」

私の一声で昼食がスタートした。



マルクスを含めた四人の昼食は、とても楽しかった。
用意したサンドイッチもマフィンも、フルーツも全部綺麗になくなっている。レオナルドは警備の騎士にマフィンをプレゼントし、代わりにメイドに紅茶をここに運ぶようお願いしてくれた。おかげで食事の後は、上質な茶葉の紅茶を楽しむこともできた。

庭園のベンチは二人掛けのものがいくつも並べられている。
マルクスとスノー、レオナルドと私、そのペアでベンチに座り、食事をすることになったのだが……。

レオナルド姿のアズレークは。
とても優雅だ。
動作の一つ一つもアズレークのようなワイルドさはない。
だからレオナルドの姿の時に、こんなことをされるとは思っていなかった。

それは。
紅茶が届くのを待つ、数分間のこと。

「レオナルドさ……レオナルド」

アズレークのことは。
これまで「アズレークさま」と呼んでいたが。
呼び捨てで呼んで欲しいと言われてから、「アズレーク」と自然に言えるようになっていた。

その一方で。

レオナルドのことを「レオナルド」と呼び捨てにするのはまだためらいがあった。つい「さま」をつけそうになってしまうのだ。

すると……。
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