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31:眠りの香(こう)
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窓の前におかれた椅子に私が座ると、アズレークは遂に廃太子計画の詳しい手順について説明を始めた。
「これは眠りを促す香(こう)だ。この香を焚き、その香りをかげば、かいだ者は眠りに落ちる」
眠りを促すという香が入った巾着袋を、私の目の前のテーブルに置いた。
「三騎士のそれぞれの部屋で、この香をまず焚くようにする。ゴースト退治を行えば、三騎士はオリビアを聖女と信じる。そしてこの香がゴースト避けになると言い、自室でこの香を焚くようにと勧めても、何も疑わないだろう。これは廃太子計画遂行の夜に行う」
アズレークが巾着から取り出した眠りの香は、ユリの花を模した形をしている。
え、これは……。
「実際に、魔除けの効果もある。この香は教会による祝福が与えられたものだから。それに私が魔法で手を加えた。そしてその香りをかげば、眠りの魔法が発動する」
やはり。
修道院ではお菓子を作って販売していたが、お香も作っていた。
乳香の香りがするお香は、ユリや鳩の形をしている。
「王太子の部屋にも、この香を焚くのですか?」
「いや。焚ければ手っ取り早いが、難しいだろう。王太子の部屋でこの香を使うとなると、事前に三騎士が使い、問題なしのお墨付きをもらわないとならない。だが実際は問題大ありだからな。王太子の部屋では使えない」
眠りの香を使えないとなると……。
アルベルトが完全に寝込んだ真夜中に寝室に侵入し、廃太子計画を行うということか。突然目を覚ます不安もあるが、それは仕方ない、ということ……?
そんなことを考えている私に、アズレークは話を続ける。
「三騎士は夜間、三交代で王太子の警備につく。通常の騎士も警備につくが、王太子の部屋の前に出張るのは三騎士だ。眠りの香はすぐには効果を発揮しない。だから……」
そう言ってアズレークが語った作戦はこうだ。
舞踏会がなければ、アルベルトは22時には就寝する。そこから0時まで、一人目の三騎士がアルベルトの部屋で警備につく。23時過ぎに私は、次の交代要員である三騎士の部屋を訪問し、魔除けと称した眠りの香を焚くように仕向ける。香の効果は一時間後に出る。二人目の騎士は0時に交代し、アルベルトの部屋の警備につくから、香の効果は0時過ぎに出る。
一人目の三騎士には部屋に戻ったタイミングで香を渡し、焚くように促す。三人目の三騎士の交代時間は午前3時だから、当然仮眠中。だからこちらは放置となる。
三騎士と共に通常の警備兵がいれば、即効性のある眠りの香りを含んだお守りを、魔除けとして渡すという。
即効性のある眠りの香りを含んだお守り。
それは眠りの香の欠片が入ったお守りだ。眠りの香同様、魔除けの効果はある。そしてアズレークにより、眠りの魔法がかけられているが、その魔法は即発動する。眠りの香のように1時間後に効果がでるわけではない。香りをかぐことで、即眠りに落ちる。
即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りがあるなら、三騎士にも回りくどく眠りの香など使わず、このお守りを使えばいいのでは?と思ったのだが。
「眠りの香(こう)をかぎ続けることで、魔法がより強くかかることになる。つまり、眠りの度合いが深くなる。三騎士は精鋭だ。廃太子計画の最中、三騎士からの妨害は絶対に受けたくない。だから深い眠りについてもらう必要がある」
なるほど。そうなると、即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りは、眠りが浅いのだろうか? そのことをアズレークに尋ねると。
「その通りだ。眠りの香に比べると、眠りは浅くなる。眠りが浅いということは、目覚めやすくなる。そうは言っても、簡単に目覚めるわけではない。そこは安心していい」
さらに私が深夜の城内をウロウロする理由。それは、退治されていないゴーストがいないか、確認のため巡回している――そう答えれば疑われないだろうと、アズレークは言う。もちろん、事前に城の領主には、巡回することを話す必要はあるが。
最終的に部屋の前にいる三騎士と警備の騎士が眠りに落ちたら、アルベルトの部屋に侵入する。侵入したらすぐさまアルベルトに近づき、即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りをかがせる。
アルベルトにかがせるお守りは、警備兵に使うものと違い、青いお守りと決められていた。このお守りにも眠りの香の欠片が含まれているが、それは無臭。でもかがせれば、眠りの魔法は発動するという。香りがあると、かいだ瞬間に目覚めてしまう可能性もある。だから無臭にしたとのこと。
こうしてアルベルトが完全に眠りに落ちたら、いざ廃太子計画実行というわけだ。
「これは眠りを促す香(こう)だ。この香を焚き、その香りをかげば、かいだ者は眠りに落ちる」
眠りを促すという香が入った巾着袋を、私の目の前のテーブルに置いた。
「三騎士のそれぞれの部屋で、この香をまず焚くようにする。ゴースト退治を行えば、三騎士はオリビアを聖女と信じる。そしてこの香がゴースト避けになると言い、自室でこの香を焚くようにと勧めても、何も疑わないだろう。これは廃太子計画遂行の夜に行う」
アズレークが巾着から取り出した眠りの香は、ユリの花を模した形をしている。
え、これは……。
「実際に、魔除けの効果もある。この香は教会による祝福が与えられたものだから。それに私が魔法で手を加えた。そしてその香りをかげば、眠りの魔法が発動する」
やはり。
修道院ではお菓子を作って販売していたが、お香も作っていた。
乳香の香りがするお香は、ユリや鳩の形をしている。
「王太子の部屋にも、この香を焚くのですか?」
「いや。焚ければ手っ取り早いが、難しいだろう。王太子の部屋でこの香を使うとなると、事前に三騎士が使い、問題なしのお墨付きをもらわないとならない。だが実際は問題大ありだからな。王太子の部屋では使えない」
眠りの香を使えないとなると……。
アルベルトが完全に寝込んだ真夜中に寝室に侵入し、廃太子計画を行うということか。突然目を覚ます不安もあるが、それは仕方ない、ということ……?
そんなことを考えている私に、アズレークは話を続ける。
「三騎士は夜間、三交代で王太子の警備につく。通常の騎士も警備につくが、王太子の部屋の前に出張るのは三騎士だ。眠りの香はすぐには効果を発揮しない。だから……」
そう言ってアズレークが語った作戦はこうだ。
舞踏会がなければ、アルベルトは22時には就寝する。そこから0時まで、一人目の三騎士がアルベルトの部屋で警備につく。23時過ぎに私は、次の交代要員である三騎士の部屋を訪問し、魔除けと称した眠りの香を焚くように仕向ける。香の効果は一時間後に出る。二人目の騎士は0時に交代し、アルベルトの部屋の警備につくから、香の効果は0時過ぎに出る。
一人目の三騎士には部屋に戻ったタイミングで香を渡し、焚くように促す。三人目の三騎士の交代時間は午前3時だから、当然仮眠中。だからこちらは放置となる。
三騎士と共に通常の警備兵がいれば、即効性のある眠りの香りを含んだお守りを、魔除けとして渡すという。
即効性のある眠りの香りを含んだお守り。
それは眠りの香の欠片が入ったお守りだ。眠りの香同様、魔除けの効果はある。そしてアズレークにより、眠りの魔法がかけられているが、その魔法は即発動する。眠りの香のように1時間後に効果がでるわけではない。香りをかぐことで、即眠りに落ちる。
即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りがあるなら、三騎士にも回りくどく眠りの香など使わず、このお守りを使えばいいのでは?と思ったのだが。
「眠りの香(こう)をかぎ続けることで、魔法がより強くかかることになる。つまり、眠りの度合いが深くなる。三騎士は精鋭だ。廃太子計画の最中、三騎士からの妨害は絶対に受けたくない。だから深い眠りについてもらう必要がある」
なるほど。そうなると、即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りは、眠りが浅いのだろうか? そのことをアズレークに尋ねると。
「その通りだ。眠りの香に比べると、眠りは浅くなる。眠りが浅いということは、目覚めやすくなる。そうは言っても、簡単に目覚めるわけではない。そこは安心していい」
さらに私が深夜の城内をウロウロする理由。それは、退治されていないゴーストがいないか、確認のため巡回している――そう答えれば疑われないだろうと、アズレークは言う。もちろん、事前に城の領主には、巡回することを話す必要はあるが。
最終的に部屋の前にいる三騎士と警備の騎士が眠りに落ちたら、アルベルトの部屋に侵入する。侵入したらすぐさまアルベルトに近づき、即効性のある眠りの香の欠片が入ったお守りをかがせる。
アルベルトにかがせるお守りは、警備兵に使うものと違い、青いお守りと決められていた。このお守りにも眠りの香の欠片が含まれているが、それは無臭。でもかがせれば、眠りの魔法は発動するという。香りがあると、かいだ瞬間に目覚めてしまう可能性もある。だから無臭にしたとのこと。
こうしてアルベルトが完全に眠りに落ちたら、いざ廃太子計画実行というわけだ。
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