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25:やる気満々のスノー
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「では、スノーが現れたら、ゴーストが出現したということで、退治するための行動をとってみてほしい。分かっていると思うが、スノーはゴーストではない。だからゴースト退治のための言葉であれば、どんな言葉を向けられようと、影響はない。ゴーストが現れた、退治する。この行動を瞬時に行えるよう、練習をしよう」
魔力を送る作業が終わると、すぐにゴースト退治の練習だ。
わざわざ森に出向いた。
だから森には、本物のゴーストがいると思ったのだが……。
そういうわけでもないらしい。
まさかスノーが、ゴーストの役目を演じるなんて。
でもスノーは、あらかじめ自分の役目を聞いていたのだろう。
目の部分に丸く穴をあけたシーツを被っている。
つまりやる気満々だ。
「ではスノー、木の幹に隠れて」
「はーい、アズレークさま」
スノーが森の奥へと駆けていく。
「では、始めよう」
アズレークはそう言うなり「霧よ、広がれ」と呪文を唱える。すると空は晴れているのに、森の中には白い霧が広がっていく。
右手に十字架の杖を持ち、霧の中に目を凝らす。
「ほら、オリビア、今、いたよ」
「!!」
ゴーストを演じるスノーの動きは、思いがけず俊敏だ。
私は白い霧を見渡す。
いた!
「悪しき者の名は朽ちる!」
十字架の杖をゴーストに向ける。
杖の十字架に私の中の魔力が伝わり、十字架部分から光が、ゴーストに向けて放たれた。
聖女が使う祈りの言葉と、発動される魔法を、アズレークが結び付けてくれている。だから祈りの言葉を私が口にすると、体内に蓄積された魔力が瞬時に杖の十字架に向かい、そこから光がゴーストに向かって放たれる。
聖女の使う祈りの言葉は、そのままゴーストへダイレクトに影響をもたらす。その言葉は神の言葉であり、ゴーストはその言葉を聞いた瞬間、体が硬直する。
さらに光。闇に属するゴーストにとって、太陽を思わせる光は天敵。
神の言葉と光を向けられれば、撤退するということだ。
「オリビア、今のは惜しかった。光が向かった時に、ゴーストの姿は既に木の幹に隠れていた。祈りの言葉を口にするのと同時に、杖もしくは十字架のペンダントをゴーストに向けるんだ」
「了解です!」
私は再び、霧の中に目を向ける。
左の方を見ていた時。
右にいる!
だがすぐに幹に隠れてしまう。
どこ!?
いた!
「悪しき者の望みは絶える!」
言葉を口にしながら、胸につけたペンダントの十字架をゴーストに向ける。瞬時に魔力が十字架に伝わり、光がゴーストへ向かって放たれる。
ペンダントもまた、杖と同じ仕組みで光が発せられる。
「今のは良かった。だが光はかすっただけだ。もっと俊敏に動こう」
「はい!」
こうして休憩をとりながら、何度も繰り返し、練習を行った。
そして遂に。
「罪は悪しき者を倒す!」
十字架の杖に伝わる魔力がすぐに光を発動し、ゴーストへ向かう。光はゴーストに当たり、スノーが被るシーツが輝いた。シーツの中にいるスノーのシルエットが、はっきり見える。
「成功だ、オリビア!」
この瞬間は嬉し過ぎて、私からアズレークに抱きついていた。すぐに我に返り、体を離そうとしたら。アズレークがハグを返した瞬間と重なり、私の体は再びその胸の中に飛び込んでいた。
「よくこの短時間で頑張った。屋敷に戻って昼食にしよう」
そう言うとアズレークは私から離れ、スノーの方へと駆けていく。
光が直撃したせいではなく、ゴーストを熱演し、スタミナ切れになったようだ。スノーはアズレークに抱きかかえられ、戻ってきた。
「オリビアさま、おめでとうございます! 見事命中です!」
「ありがとう、スノー。練習に付き合ってくれて、助かったわ!」
「はい! オリビアさまのお役に立ててよかったです」
喜び合う私達に、アズレークは笑顔を向ける。
「昼食の後は、二人とも昼寝をして少し休むといい。起きたら座学で復習だ。でもそれが終わったら、アフタヌーンティーをしよう」
スノーは喜び「マカロンとマドレーヌを食べたいです!」と言うと、アズレークは「よし。用意しよう。チョコレートも食べたいのでは?」と答える。するとスノーは「はい! チョコレートとフィナンシェも欲しいです!」と返事をする。それに対し、アズレークは「分かった。スノーが喜ぶお菓子を沢山用意しよう」と、まるで子供を甘やかすパパ状態だ。
こうしてこの日は沢山練習もしたが、お腹いっぱいスイーツも楽しんで、一日が終わった。
魔力を送る作業が終わると、すぐにゴースト退治の練習だ。
わざわざ森に出向いた。
だから森には、本物のゴーストがいると思ったのだが……。
そういうわけでもないらしい。
まさかスノーが、ゴーストの役目を演じるなんて。
でもスノーは、あらかじめ自分の役目を聞いていたのだろう。
目の部分に丸く穴をあけたシーツを被っている。
つまりやる気満々だ。
「ではスノー、木の幹に隠れて」
「はーい、アズレークさま」
スノーが森の奥へと駆けていく。
「では、始めよう」
アズレークはそう言うなり「霧よ、広がれ」と呪文を唱える。すると空は晴れているのに、森の中には白い霧が広がっていく。
右手に十字架の杖を持ち、霧の中に目を凝らす。
「ほら、オリビア、今、いたよ」
「!!」
ゴーストを演じるスノーの動きは、思いがけず俊敏だ。
私は白い霧を見渡す。
いた!
「悪しき者の名は朽ちる!」
十字架の杖をゴーストに向ける。
杖の十字架に私の中の魔力が伝わり、十字架部分から光が、ゴーストに向けて放たれた。
聖女が使う祈りの言葉と、発動される魔法を、アズレークが結び付けてくれている。だから祈りの言葉を私が口にすると、体内に蓄積された魔力が瞬時に杖の十字架に向かい、そこから光がゴーストに向かって放たれる。
聖女の使う祈りの言葉は、そのままゴーストへダイレクトに影響をもたらす。その言葉は神の言葉であり、ゴーストはその言葉を聞いた瞬間、体が硬直する。
さらに光。闇に属するゴーストにとって、太陽を思わせる光は天敵。
神の言葉と光を向けられれば、撤退するということだ。
「オリビア、今のは惜しかった。光が向かった時に、ゴーストの姿は既に木の幹に隠れていた。祈りの言葉を口にするのと同時に、杖もしくは十字架のペンダントをゴーストに向けるんだ」
「了解です!」
私は再び、霧の中に目を向ける。
左の方を見ていた時。
右にいる!
だがすぐに幹に隠れてしまう。
どこ!?
いた!
「悪しき者の望みは絶える!」
言葉を口にしながら、胸につけたペンダントの十字架をゴーストに向ける。瞬時に魔力が十字架に伝わり、光がゴーストへ向かって放たれる。
ペンダントもまた、杖と同じ仕組みで光が発せられる。
「今のは良かった。だが光はかすっただけだ。もっと俊敏に動こう」
「はい!」
こうして休憩をとりながら、何度も繰り返し、練習を行った。
そして遂に。
「罪は悪しき者を倒す!」
十字架の杖に伝わる魔力がすぐに光を発動し、ゴーストへ向かう。光はゴーストに当たり、スノーが被るシーツが輝いた。シーツの中にいるスノーのシルエットが、はっきり見える。
「成功だ、オリビア!」
この瞬間は嬉し過ぎて、私からアズレークに抱きついていた。すぐに我に返り、体を離そうとしたら。アズレークがハグを返した瞬間と重なり、私の体は再びその胸の中に飛び込んでいた。
「よくこの短時間で頑張った。屋敷に戻って昼食にしよう」
そう言うとアズレークは私から離れ、スノーの方へと駆けていく。
光が直撃したせいではなく、ゴーストを熱演し、スタミナ切れになったようだ。スノーはアズレークに抱きかかえられ、戻ってきた。
「オリビアさま、おめでとうございます! 見事命中です!」
「ありがとう、スノー。練習に付き合ってくれて、助かったわ!」
「はい! オリビアさまのお役に立ててよかったです」
喜び合う私達に、アズレークは笑顔を向ける。
「昼食の後は、二人とも昼寝をして少し休むといい。起きたら座学で復習だ。でもそれが終わったら、アフタヌーンティーをしよう」
スノーは喜び「マカロンとマドレーヌを食べたいです!」と言うと、アズレークは「よし。用意しよう。チョコレートも食べたいのでは?」と答える。するとスノーは「はい! チョコレートとフィナンシェも欲しいです!」と返事をする。それに対し、アズレークは「分かった。スノーが喜ぶお菓子を沢山用意しよう」と、まるで子供を甘やかすパパ状態だ。
こうしてこの日は沢山練習もしたが、お腹いっぱいスイーツも楽しんで、一日が終わった。
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