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3:……ようやく見つけた

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スノーは地面から顔上げ、一目散に森の奥へと駆けていく。

「ちょっと、スノー、待って!」

ミニブタは、オスのフェロモンの香りをトリュフに感じ、反応する。これだけ一目散に駆けていくということは……。よっぽど好みのタイプのオスのフェロモンに似た香りを、見つけたのかしら。

見失わないよう、スノーの後を追いかけると。
巨木の根元付近の土の匂いを嗅いでいる。

「スノー、とびっきりのトリュフを発見した?」

声をかけながらスノーに近づくかが、土を掘り起こしている様子はない。

どうしたのだろう?
しゃがんでスノーを抱き上げようとしたその時。
気配を感じた。
巨木の影に誰かいる……?

「……ようやく見つけた」

耳に心地よいテノールの声。
見上げるとそこにはかなり長身の男性がいる。

漆黒の闇を思わせる黒髪と、意志の強そうな眉、長い睫毛に縁どられた黒曜石のような瞳。その瞳が燃えるような熱さで私を一瞬射抜いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。

彼の瞳から視線を逸らそうとすると、高い鼻筋と血色のいい唇が目に飛び込んでくる。

なんて整った顔立ちなのだろう。

さらに目を引くのはその肌だ。健康的でくすみ感のない、張りのある肌をしている。

身にまとうのは黒シャツに黒ズボン、黒いマントに黒革のブーツと黒ずくめ。腰に帯びている剣の柄でさえ黒い。

騎士……なのだろうか?
あまりの美貌に息を飲むことしかできない。

「パトリシア・デ・ラ・ベラスケス。王太子の婚約者になることを願い、彼がカロリーナ・ドルレアン公爵令嬢を選ぶと、王太子を毒殺しようとした稀代の悪女だ。未遂で済んだから公にはなっていないが……。だが私は知っている。君の悪事を」

私より三歳ぐらい年上に見える、細身だが筋肉もありそうな男性の言葉に血の気が引く。

「……人違いです。私はただの修道女です」

それだけ言ってスノーを抱き上げ、急いでこの場を立ち去ろうとするが……。

腕を掴まれた。
やはり騎士なのだろう。
捕まれた腕にかかる力は強く、外すことはできなさそうだ。

「私の目は誤魔化せない。君の顔は知っている」

私のことを知っている……?
それはつまり……ドルレアン公爵家の人間、ということか?

いや、そうだろう。
こんなところまで追ってきたのだ。
私やベラスケス家を嫌う、ドルレアン公爵家の人間としか考えられない。

「……もう、十分ですよね? ベラスケス家は爵位を剥奪され、一家離散になりました。私だって王都から遥か遠いこの地で修道院に入り、慎ましやかに生きています。もう放って置いてください」

「そうはいかない。君は王太子を毒殺しようとした。例え未遂であろうとその罪は償わなければならない」

「な、それは……」

「パトリシアー! パトリシアー、どこにいるの?」

ニルダ!

私は助けを呼ぼうと口を開きかけたが、突然、黒ずくめの男に抱き寄せられ、口を塞がれた。

さらに耳元で「深い眠りの中へ」そう囁かれた瞬間、意識が遠のいた。
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