3 / 251
3:……ようやく見つけた
しおりを挟む
スノーは地面から顔上げ、一目散に森の奥へと駆けていく。
「ちょっと、スノー、待って!」
ミニブタは、オスのフェロモンの香りをトリュフに感じ、反応する。これだけ一目散に駆けていくということは……。よっぽど好みのタイプのオスのフェロモンに似た香りを、見つけたのかしら。
見失わないよう、スノーの後を追いかけると。
巨木の根元付近の土の匂いを嗅いでいる。
「スノー、とびっきりのトリュフを発見した?」
声をかけながらスノーに近づくかが、土を掘り起こしている様子はない。
どうしたのだろう?
しゃがんでスノーを抱き上げようとしたその時。
気配を感じた。
巨木の影に誰かいる……?
「……ようやく見つけた」
耳に心地よいテノールの声。
見上げるとそこにはかなり長身の男性がいる。
漆黒の闇を思わせる黒髪と、意志の強そうな眉、長い睫毛に縁どられた黒曜石のような瞳。その瞳が燃えるような熱さで私を一瞬射抜いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
彼の瞳から視線を逸らそうとすると、高い鼻筋と血色のいい唇が目に飛び込んでくる。
なんて整った顔立ちなのだろう。
さらに目を引くのはその肌だ。健康的でくすみ感のない、張りのある肌をしている。
身にまとうのは黒シャツに黒ズボン、黒いマントに黒革のブーツと黒ずくめ。腰に帯びている剣の柄でさえ黒い。
騎士……なのだろうか?
あまりの美貌に息を飲むことしかできない。
「パトリシア・デ・ラ・ベラスケス。王太子の婚約者になることを願い、彼がカロリーナ・ドルレアン公爵令嬢を選ぶと、王太子を毒殺しようとした稀代の悪女だ。未遂で済んだから公にはなっていないが……。だが私は知っている。君の悪事を」
私より三歳ぐらい年上に見える、細身だが筋肉もありそうな男性の言葉に血の気が引く。
「……人違いです。私はただの修道女です」
それだけ言ってスノーを抱き上げ、急いでこの場を立ち去ろうとするが……。
腕を掴まれた。
やはり騎士なのだろう。
捕まれた腕にかかる力は強く、外すことはできなさそうだ。
「私の目は誤魔化せない。君の顔は知っている」
私のことを知っている……?
それはつまり……ドルレアン公爵家の人間、ということか?
いや、そうだろう。
こんなところまで追ってきたのだ。
私やベラスケス家を嫌う、ドルレアン公爵家の人間としか考えられない。
「……もう、十分ですよね? ベラスケス家は爵位を剥奪され、一家離散になりました。私だって王都から遥か遠いこの地で修道院に入り、慎ましやかに生きています。もう放って置いてください」
「そうはいかない。君は王太子を毒殺しようとした。例え未遂であろうとその罪は償わなければならない」
「な、それは……」
「パトリシアー! パトリシアー、どこにいるの?」
ニルダ!
私は助けを呼ぼうと口を開きかけたが、突然、黒ずくめの男に抱き寄せられ、口を塞がれた。
さらに耳元で「深い眠りの中へ」そう囁かれた瞬間、意識が遠のいた。
「ちょっと、スノー、待って!」
ミニブタは、オスのフェロモンの香りをトリュフに感じ、反応する。これだけ一目散に駆けていくということは……。よっぽど好みのタイプのオスのフェロモンに似た香りを、見つけたのかしら。
見失わないよう、スノーの後を追いかけると。
巨木の根元付近の土の匂いを嗅いでいる。
「スノー、とびっきりのトリュフを発見した?」
声をかけながらスノーに近づくかが、土を掘り起こしている様子はない。
どうしたのだろう?
しゃがんでスノーを抱き上げようとしたその時。
気配を感じた。
巨木の影に誰かいる……?
「……ようやく見つけた」
耳に心地よいテノールの声。
見上げるとそこにはかなり長身の男性がいる。
漆黒の闇を思わせる黒髪と、意志の強そうな眉、長い睫毛に縁どられた黒曜石のような瞳。その瞳が燃えるような熱さで私を一瞬射抜いたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
彼の瞳から視線を逸らそうとすると、高い鼻筋と血色のいい唇が目に飛び込んでくる。
なんて整った顔立ちなのだろう。
さらに目を引くのはその肌だ。健康的でくすみ感のない、張りのある肌をしている。
身にまとうのは黒シャツに黒ズボン、黒いマントに黒革のブーツと黒ずくめ。腰に帯びている剣の柄でさえ黒い。
騎士……なのだろうか?
あまりの美貌に息を飲むことしかできない。
「パトリシア・デ・ラ・ベラスケス。王太子の婚約者になることを願い、彼がカロリーナ・ドルレアン公爵令嬢を選ぶと、王太子を毒殺しようとした稀代の悪女だ。未遂で済んだから公にはなっていないが……。だが私は知っている。君の悪事を」
私より三歳ぐらい年上に見える、細身だが筋肉もありそうな男性の言葉に血の気が引く。
「……人違いです。私はただの修道女です」
それだけ言ってスノーを抱き上げ、急いでこの場を立ち去ろうとするが……。
腕を掴まれた。
やはり騎士なのだろう。
捕まれた腕にかかる力は強く、外すことはできなさそうだ。
「私の目は誤魔化せない。君の顔は知っている」
私のことを知っている……?
それはつまり……ドルレアン公爵家の人間、ということか?
いや、そうだろう。
こんなところまで追ってきたのだ。
私やベラスケス家を嫌う、ドルレアン公爵家の人間としか考えられない。
「……もう、十分ですよね? ベラスケス家は爵位を剥奪され、一家離散になりました。私だって王都から遥か遠いこの地で修道院に入り、慎ましやかに生きています。もう放って置いてください」
「そうはいかない。君は王太子を毒殺しようとした。例え未遂であろうとその罪は償わなければならない」
「な、それは……」
「パトリシアー! パトリシアー、どこにいるの?」
ニルダ!
私は助けを呼ぼうと口を開きかけたが、突然、黒ずくめの男に抱き寄せられ、口を塞がれた。
さらに耳元で「深い眠りの中へ」そう囁かれた瞬間、意識が遠のいた。
応援ありがとうございます!
43
お気に入りに追加
2,198
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる