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余談編
御礼(宣伝)
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ある日のこと。
千代が呪術による召喚儀式を行うということで、私は祷ノ間へと向かった。
祷ノ間にはすでに千代のほか、ほぼ全員が集まっていた。
「それでは、瑞穂様も来られたことですので、今回行う呪術について簡単にご説明いたします」
これから千代が行うのは、召喚術と呼ばれるものである。
「呪術には、詠唱式、符術式、秘術式の三種類に分けられます。召喚術は秘術式に該当し、召符と呼び、自らの思い描く式神と呼ばれる存在を創造することになります」
「ねえ、千代。その式神っていうのは、簡単にいうと何なの?」
「簡単に言えば、自分の思い通りに動かす事ができる存在です。それは、たいていは生き物の姿をしています。式神の召喚術については、高位の呪術師にのみしか使用を許されていません」
「どうして?」
「式神の召喚術は生命を創造することでございます。つまり、無闇矢鱈に使って良いものではありません。私も、先日やっと母より召喚術の許可をいただきましたので」
千代は祭壇の前に座り、大きく息を吐く。
「前置きはここまでとし、術の行使に参りたいと思います」
目を閉じて、祝詞を呟く。すると、千代の身体がぼんやりと青白い光に包まれ、呪力が増大していく。
「遥かな時を越え、顕現せよ!」
千代が腕を振るうと、部屋の中心部が白い煙に覆われた。
「えっと…」
「こいつらは一体…」
煙が晴れ、術式の上に現れたのは奇怪な二体の生命体。
片方は、猫のようだ。しかし、猫にしては顔がのっぺりとしているし、何よりもまるで人の様に足だけで立っている。
毛並みは白、やはり顔が可愛くない。
もう片方は、これがまた奇怪なのだ。
全身が青色と思いきや、腹の辺りが白色。
口はのっぺりとした黄色のくちばしで、鳥の様で鳥ではない。その頭には、何故か動いても落ちない蜜柑が載せられていた。
何よりも、こいつらは立っている。
「失敗?」
「せ、成功です!」
「可愛い様で…可愛くない?」
「姉様、私は可愛いと思うです」
「しかし、見たことない姿だな」
「その様ですね。西洋にはこの様な生き物はいましたでしょうか?」
「いや、見たことないな」
「私も生まれて初めて」
全員が、知らないという答えだった。
「千代、ここからどうするの」
「あ、いえ。特に何をするかは…今回は私が召喚術を使えるか試すだけと考えていただけなので…」
「ちょっと命令してみましょう。この子たちって何かできるのかしら」
「ちょっと念じてみます」
すると、二匹はどこからともなく紙と筆を取り出した。
そして、瑞穂の前に座ると、おもむろに紙に何かを描き出した。
「何をしているの?」
「何か得意なことをしてみて念じました」
しばらくして青色の生き物が紙を見せてくる。その板の様な手でどうやって紙を持っているかは、今は考えないことにした。
「うそっ、何これ!」
そこには、自分の姿が美麗に描かれていた。どうして色が塗られているかは疑問に感じたが、これもあえて考えない様にした。
「ほお、よく出来ている」
「綺麗ですね」
「綺麗なのです」
全員がその絵を高く評価する。
すると、二匹はどこからともなく一冊の本とちくわを取り出した。
「いや、ちくわは要らない」
「えっと、本の題名は…"二つの世界の螺旋カノン"」
「阿礼、この本知ってる?」
「確か、皇都の裏路地にある怪しい書店で置いているのを見かけた」
「それは問題ね」
「いや、まず人質が自由に出歩ける環境が問題では?」
「内容は、確か寺子屋の青年がある日を境に奇妙な世界に迷い込んでしまう話だ。いわゆるえすえふって代物だ」
とりあえず、私に譲るらしいのでありがたく受け取る。
「それでは、ぼちぼち二匹を還します」
再び術式が広がり、二匹は煙に覆われて消えてしまった。
あの不思議な生き物たちとの出会いから数日が経つ。
絵は自室の額に飾り、本は政務の合間に少しずつ読み進めている。
「作者、七ツ海星空…どんな人なのかしら」
そして、私は今日も本を開く。
千代が呪術による召喚儀式を行うということで、私は祷ノ間へと向かった。
祷ノ間にはすでに千代のほか、ほぼ全員が集まっていた。
「それでは、瑞穂様も来られたことですので、今回行う呪術について簡単にご説明いたします」
これから千代が行うのは、召喚術と呼ばれるものである。
「呪術には、詠唱式、符術式、秘術式の三種類に分けられます。召喚術は秘術式に該当し、召符と呼び、自らの思い描く式神と呼ばれる存在を創造することになります」
「ねえ、千代。その式神っていうのは、簡単にいうと何なの?」
「簡単に言えば、自分の思い通りに動かす事ができる存在です。それは、たいていは生き物の姿をしています。式神の召喚術については、高位の呪術師にのみしか使用を許されていません」
「どうして?」
「式神の召喚術は生命を創造することでございます。つまり、無闇矢鱈に使って良いものではありません。私も、先日やっと母より召喚術の許可をいただきましたので」
千代は祭壇の前に座り、大きく息を吐く。
「前置きはここまでとし、術の行使に参りたいと思います」
目を閉じて、祝詞を呟く。すると、千代の身体がぼんやりと青白い光に包まれ、呪力が増大していく。
「遥かな時を越え、顕現せよ!」
千代が腕を振るうと、部屋の中心部が白い煙に覆われた。
「えっと…」
「こいつらは一体…」
煙が晴れ、術式の上に現れたのは奇怪な二体の生命体。
片方は、猫のようだ。しかし、猫にしては顔がのっぺりとしているし、何よりもまるで人の様に足だけで立っている。
毛並みは白、やはり顔が可愛くない。
もう片方は、これがまた奇怪なのだ。
全身が青色と思いきや、腹の辺りが白色。
口はのっぺりとした黄色のくちばしで、鳥の様で鳥ではない。その頭には、何故か動いても落ちない蜜柑が載せられていた。
何よりも、こいつらは立っている。
「失敗?」
「せ、成功です!」
「可愛い様で…可愛くない?」
「姉様、私は可愛いと思うです」
「しかし、見たことない姿だな」
「その様ですね。西洋にはこの様な生き物はいましたでしょうか?」
「いや、見たことないな」
「私も生まれて初めて」
全員が、知らないという答えだった。
「千代、ここからどうするの」
「あ、いえ。特に何をするかは…今回は私が召喚術を使えるか試すだけと考えていただけなので…」
「ちょっと命令してみましょう。この子たちって何かできるのかしら」
「ちょっと念じてみます」
すると、二匹はどこからともなく紙と筆を取り出した。
そして、瑞穂の前に座ると、おもむろに紙に何かを描き出した。
「何をしているの?」
「何か得意なことをしてみて念じました」
しばらくして青色の生き物が紙を見せてくる。その板の様な手でどうやって紙を持っているかは、今は考えないことにした。
「うそっ、何これ!」
そこには、自分の姿が美麗に描かれていた。どうして色が塗られているかは疑問に感じたが、これもあえて考えない様にした。
「ほお、よく出来ている」
「綺麗ですね」
「綺麗なのです」
全員がその絵を高く評価する。
すると、二匹はどこからともなく一冊の本とちくわを取り出した。
「いや、ちくわは要らない」
「えっと、本の題名は…"二つの世界の螺旋カノン"」
「阿礼、この本知ってる?」
「確か、皇都の裏路地にある怪しい書店で置いているのを見かけた」
「それは問題ね」
「いや、まず人質が自由に出歩ける環境が問題では?」
「内容は、確か寺子屋の青年がある日を境に奇妙な世界に迷い込んでしまう話だ。いわゆるえすえふって代物だ」
とりあえず、私に譲るらしいのでありがたく受け取る。
「それでは、ぼちぼち二匹を還します」
再び術式が広がり、二匹は煙に覆われて消えてしまった。
あの不思議な生き物たちとの出会いから数日が経つ。
絵は自室の額に飾り、本は政務の合間に少しずつ読み進めている。
「作者、七ツ海星空…どんな人なのかしら」
そして、私は今日も本を開く。
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