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思ったよりしぶとい
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「無傷……は流石に予想外だな」
何かしらのアクションが起きると思ってただけにその結果に少し驚いた。そこに前に出てきた黄色の蛇が大きく口を開いて雷撃を吐き出してくる。
「おっと」
そんな攻撃が飛んでくる前に俺は土と風で即席の足場を作り移動して回避した。
蛇の放った雷撃は空の雲の中へと消えていき、さっきまで晴れていた空がたちまち雷雲で埋め尽くされる。
「おぉー……そんなこともできるのか。それにさっきの行動もそうだし、もしかしてブラッターより知恵があったりするか?」
曇った空から落ちる雷を避け、蛇から吐き出される魔法を潜りつつ確実に近付く。
すると八首の蛇は口から吐き出すのをやめ、それぞれの頭に属性が宿る。
炎が纏った赤い首が、電気を纏った黄色の首が、鉄のように固くなった茶色の首が噛み付いてきた。それを先程と同じように魔法で足場を作って回避と移動を同時に行う。
「……流石にアレに直接触ったら火傷じゃ済まなそうだな」
「絶対火傷じゃ済みません!ここからでも凄い熱いですもん!……息も少し苦しいですし」
背負っていたジルがそうやって騒ぐ。横目で彼の様子を見るとかなり苦しそうな表情をしていた。
空気か……俺は平気だがジルは短時間でも耐えるのはキツイか?そういうのを防ぐ魔法は……あった。
攻撃が飛び交う中でスマホを操作し、ジルの口に風を纏わせる。
「これで少しは息苦しさが減ったか?」
「はい……というか普段より快適のような?とにかくもう大丈夫です!」
「ならスピードを上げるぞ!」
「え?」
そう言って背中に背負っていたジルを気遣って抑えめにしていたスピードを上げて移動や回避を行うと後ろから小さい悲鳴ののようなものが聞こえたが、しっかりと捕まっているのを確認しているので構わず移動速度を上げる。
八首の蛇も俺の姿を見失うことなくかなりの速さで追いかけてくるが、それよりも速く移動し続けてソラギリを振るう。
そして俺が斬った場所は傷が深く、大量の血が噴き出し蛇どもから悲鳴が上がる。
「ん~、やっぱり魔法よりも自分の手でやった方が手応えがあっていいな!」
下手な魔法を撃つよりも感じた手応えに、つい笑みが零れてしまった。……って、手応え感じて喜ぶとかサイコパスかよ、俺?
……まぁ、武術を極める過程でどこかのネジがぶっ飛ぶなんてことはよくあるから別にいいか、なんて目を逸らしたり。
そんなことを考えてる間にソラギリに魔法を宿らせた。
土属性でソラギリの刃の表面をコーティングし、火属性で青い炎を刃に沿って宿らせる。
「青い……炎?」
「綺麗だろ?だからって触ったら火傷じゃ済まないから触るなよ」
目を輝かせるジルにそう注意し、俺は八首の蛇に向けてソラギリを振り上げて構える。
相手は俺たちから少し距離のあるところから全ての首をこちらに向けて口を開き、ブレスを吐き出す準備をしていた。
そして先程と同じ攻撃に加え、黒と白と紫の頭も得体のしれないものを口から吐き出す。
対して俺はソラギリに既存の属性に加えて雷と闇、光を加えて宿し、力強く振り下ろした。
これはルルアの父親に放った時と同じ、しかし感情に身を任せていたあの時とは違って自らの意思で力を込めて放った一撃だ。
そんな一撃に適当な魔法を加えたわけだが、俺が放った一撃は思いの外強かったらしく、蛇たちのブレスを掻き分けるように裂いて一直線に奴らのところへと飛んでいき、そのまま奴の胴体は半分になった。
「――――⁉」
咆哮、もしくは悲鳴か。八首が発した声は強力な振動を放ち、周囲の地面や木々を吹き飛ばす。
俺も咄嗟に結界を張って守りを固めたが、その表面にヒビが入る。こんなんまともに喰らったら確実に鼓膜が破けるぞ……
「アニッ、アニキッ⁉ 本当にだい、大丈夫なんですか、コレ⁉」
蛇の威圧に負けて背中で震えて怯えていたジルが心配してくる。たしかにコイツは今まで相手にしてきたどんな奴よりも厄介だ。
しかもアイツ……体を半分にされたにも関わらず平然と生きてやがる。半分になった胴体から緑色の血がドバドバと噴き出しているにも関わらず気にした様子もなくそれぞれの首が俺に敵意を向け続けていた。
痛覚はあるようだが、体を半分にされても生きてるのは流石に驚いたな……
「……一応聞くけどジル、あんな状態でも死なない生物って存在するのか?」
「特定の魔物は知ってますが……そもそもあんなデカイ蛇なんて見たことないです!ただでさえさっきのブラッターでさえ恐ろしいのに……こんな奴がいたら国どころか種族が滅んじゃいます!こんなの……まるで神話の竜みたいじゃないですか……!」
俺に掴まるジルの震えている手にギュッと力が入る。
竜、か……言われてみるとコイツから感じる威圧感は竜の姿だった時のヤトに似ている感じはするが……
「そんな奴がなんでこんなところでうろついてんだよ……」
そんな国とか種族を軽々と滅ぼせるような奴と街はずれでエンカウントするとか、もう終わったも同然だろこの世界。
なんて考えている間に蛇の斬った胴体が少しずつ元通りに戻っていた。死なないどころか真っ二つにしたところから治るのかよ……流石はファンタジー世界のとんでも生物だ。
俺も化け物と呼ばれることはあるが、生物学的な意味では負けるだろうな。そんなことを思いながらスマホの画面を操作し、ある人物に電話をかけた。
何かしらのアクションが起きると思ってただけにその結果に少し驚いた。そこに前に出てきた黄色の蛇が大きく口を開いて雷撃を吐き出してくる。
「おっと」
そんな攻撃が飛んでくる前に俺は土と風で即席の足場を作り移動して回避した。
蛇の放った雷撃は空の雲の中へと消えていき、さっきまで晴れていた空がたちまち雷雲で埋め尽くされる。
「おぉー……そんなこともできるのか。それにさっきの行動もそうだし、もしかしてブラッターより知恵があったりするか?」
曇った空から落ちる雷を避け、蛇から吐き出される魔法を潜りつつ確実に近付く。
すると八首の蛇は口から吐き出すのをやめ、それぞれの頭に属性が宿る。
炎が纏った赤い首が、電気を纏った黄色の首が、鉄のように固くなった茶色の首が噛み付いてきた。それを先程と同じように魔法で足場を作って回避と移動を同時に行う。
「……流石にアレに直接触ったら火傷じゃ済まなそうだな」
「絶対火傷じゃ済みません!ここからでも凄い熱いですもん!……息も少し苦しいですし」
背負っていたジルがそうやって騒ぐ。横目で彼の様子を見るとかなり苦しそうな表情をしていた。
空気か……俺は平気だがジルは短時間でも耐えるのはキツイか?そういうのを防ぐ魔法は……あった。
攻撃が飛び交う中でスマホを操作し、ジルの口に風を纏わせる。
「これで少しは息苦しさが減ったか?」
「はい……というか普段より快適のような?とにかくもう大丈夫です!」
「ならスピードを上げるぞ!」
「え?」
そう言って背中に背負っていたジルを気遣って抑えめにしていたスピードを上げて移動や回避を行うと後ろから小さい悲鳴ののようなものが聞こえたが、しっかりと捕まっているのを確認しているので構わず移動速度を上げる。
八首の蛇も俺の姿を見失うことなくかなりの速さで追いかけてくるが、それよりも速く移動し続けてソラギリを振るう。
そして俺が斬った場所は傷が深く、大量の血が噴き出し蛇どもから悲鳴が上がる。
「ん~、やっぱり魔法よりも自分の手でやった方が手応えがあっていいな!」
下手な魔法を撃つよりも感じた手応えに、つい笑みが零れてしまった。……って、手応え感じて喜ぶとかサイコパスかよ、俺?
……まぁ、武術を極める過程でどこかのネジがぶっ飛ぶなんてことはよくあるから別にいいか、なんて目を逸らしたり。
そんなことを考えてる間にソラギリに魔法を宿らせた。
土属性でソラギリの刃の表面をコーティングし、火属性で青い炎を刃に沿って宿らせる。
「青い……炎?」
「綺麗だろ?だからって触ったら火傷じゃ済まないから触るなよ」
目を輝かせるジルにそう注意し、俺は八首の蛇に向けてソラギリを振り上げて構える。
相手は俺たちから少し距離のあるところから全ての首をこちらに向けて口を開き、ブレスを吐き出す準備をしていた。
そして先程と同じ攻撃に加え、黒と白と紫の頭も得体のしれないものを口から吐き出す。
対して俺はソラギリに既存の属性に加えて雷と闇、光を加えて宿し、力強く振り下ろした。
これはルルアの父親に放った時と同じ、しかし感情に身を任せていたあの時とは違って自らの意思で力を込めて放った一撃だ。
そんな一撃に適当な魔法を加えたわけだが、俺が放った一撃は思いの外強かったらしく、蛇たちのブレスを掻き分けるように裂いて一直線に奴らのところへと飛んでいき、そのまま奴の胴体は半分になった。
「――――⁉」
咆哮、もしくは悲鳴か。八首が発した声は強力な振動を放ち、周囲の地面や木々を吹き飛ばす。
俺も咄嗟に結界を張って守りを固めたが、その表面にヒビが入る。こんなんまともに喰らったら確実に鼓膜が破けるぞ……
「アニッ、アニキッ⁉ 本当にだい、大丈夫なんですか、コレ⁉」
蛇の威圧に負けて背中で震えて怯えていたジルが心配してくる。たしかにコイツは今まで相手にしてきたどんな奴よりも厄介だ。
しかもアイツ……体を半分にされたにも関わらず平然と生きてやがる。半分になった胴体から緑色の血がドバドバと噴き出しているにも関わらず気にした様子もなくそれぞれの首が俺に敵意を向け続けていた。
痛覚はあるようだが、体を半分にされても生きてるのは流石に驚いたな……
「……一応聞くけどジル、あんな状態でも死なない生物って存在するのか?」
「特定の魔物は知ってますが……そもそもあんなデカイ蛇なんて見たことないです!ただでさえさっきのブラッターでさえ恐ろしいのに……こんな奴がいたら国どころか種族が滅んじゃいます!こんなの……まるで神話の竜みたいじゃないですか……!」
俺に掴まるジルの震えている手にギュッと力が入る。
竜、か……言われてみるとコイツから感じる威圧感は竜の姿だった時のヤトに似ている感じはするが……
「そんな奴がなんでこんなところでうろついてんだよ……」
そんな国とか種族を軽々と滅ぼせるような奴と街はずれでエンカウントするとか、もう終わったも同然だろこの世界。
なんて考えている間に蛇の斬った胴体が少しずつ元通りに戻っていた。死なないどころか真っ二つにしたところから治るのかよ……流石はファンタジー世界のとんでも生物だ。
俺も化け物と呼ばれることはあるが、生物学的な意味では負けるだろうな。そんなことを思いながらスマホの画面を操作し、ある人物に電話をかけた。
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