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ただの宴会
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「……もしかしてこの天使たちってレイシアが作ってるのか?」
「うん」
いつの間にかレイシアの背中に生えていた翼は消え、再び椅子に座ってジュースをチューチューと飲みながら頷く。
「へぇ……それにさっきと違って鎧の形が違うな。戦闘用だったりとかそれぞれ用途に分けられてたり?」
すでにルーガルや周囲の奴らは並べられていく料理を遠慮なく食べ始めていたので、俺も質問をしつつ近くにあったホットドッグのように肉をパンで挟んだものを手に取って口に入れた。
ルルアも俺と向き合って抱き着くような座り方から座り直し、ポーリングほどの大きさがあるグミのようなものにかぶりつく。何それちょっと気になるんだが。
そこからは完全にただの食事会と化していた。
ついでにジークたちの様子も気になったので廊下を覗いてみると、そっちもそっちで雑談をしながら食事を始めている。
壁を背もたれにワインを飲んでいたジークが俺に気付き、ニッコリと微笑む。どうやらこっちもこっちで楽しんでいるようだった。
部屋に意識を戻すとルルアが俺の裾を掴んだままグミっぽいものを食べ続けていた。
「……ルルア、それ美味しいのか?」
「うん。果物みたいに甘くて歯応えも好き。それに口の中で溶けてジュースみたいにもなってて面白い」
「めっちゃ気になるんだけど」
「そうなんだ?」
ルルアが何か含みのある笑みを浮かべるともう一口食べ、食べかけのソレを差し出してきた。まさか今更間接キスとかを気にすると思っているのか……遠慮無く食べてやろうと口を開けて食べようとしたところでルルアがスライムっぽいものを素早く引っ込め、代わりに顔を近付けてきた。
そしてお互いの唇が触れ合い、その口に含んだものが流れ込んでくる。
「……正直、アブノーマル過ぎて驚き以上に引いてるんだけど?」
「やり過ぎかな?でもいいもんね、さっき泣かされた仕返しだから!」
口に入れられたゼリーを飲み込んだ俺にルルアがそう言って笑いつつベッとあざとく舌を出す。それを引き合いに出されてしまってはぐうの音も出ない。
ただ彼女とのそんな行為を誰にも見られていないのが唯一の救いだっ……たけど……
誰も俺たちのことを気にしていないことを確認していると、頬を赤くしたレイシアと目が合ってしまった。どうやら彼女には見られていたらしい。
すると椅子から降りて俺たちのところまでやってくる。
「ルルアさん」
「えっ、『さん』……?な、何……?」
慣れない呼ばれ方をされて戸惑うルルア。そういえば呼び捨てやちゃん付け、様付けで呼ばれることはあってもさん付けはされたことなかったっけな?
困惑するルルアにレイシアが至近距離まで近寄る。
「チューって、どんな味?」
「……は?」
真顔でおかしな質問をするレイシアにルルアが流石に顔をしかめる。
「中の良い男女二人、本で仲良さそうにしてた人たち……さっきのあなたたちと同じことしてた。ずっと気になってた……どんな感じ?」
「え、ちょっ……近い!」
レイシアの真面目な雰囲気と勢いに押されてルルアがたじろいでしまっていた。ここまで押される彼女も珍しいかもしれない。
「ちょっと助け……あれ、お兄ちゃん⁉」
レイシアの能力で言い返す気も起きないのか俺に助けを求めようとしたらしいルルアだが、俺はすでにヴェルネの隣に移動していた。
「いいの、あれ?凄い勢いであんたのこと恨めしそうに睨んでるけど」
「あれに助けを求められてもなぁ……ま、レトナや俺たち以外とも仲の良い相手を作るいい機会ってことでな」
するとヴェルネが食べる手を止め、俺の顔を覗き込んできた。
「なんだ?なんか顔に付いてるか?」
「……もしかしてあんた今、なんか照れてる?」
照れ……?もしかしてルルアに口移しされて気付かない内に恥ずかしがってたのか、俺?
何か変なところがあったのかと鏡のようにピカピカな円卓の机に映った自分の顔を確認する。
……何も変なところはないな。
「いや、普通に見てもいつも通りなんだけど……だけどなんかどっかおかしいっていうか、そう感じたのよね。なんでかしら?」
そう言いながら確認するために俺の顔をペタペタと触って確認してくる。その際に近付いてくる彼女の頬が僅かに赤い。まるで――
「……ヴェルネ、もしかしてお前酔ってる?」
「酔い?酔ってなんからいわよ……ヒヒヒッ!」
ヴェルネは呂律が回ってない口でそう言い、さらには変な笑い方をする。
極めつけには彼女が座る近くの机の上にはワインらしきものが。あ、完全に酔ってますねコレ。
「酔ってない酔ってない」と上の空のように呟き続けながら彼女は立ち上がって俺の膝の上に自分の体を放り投げるように飛んで座りにきた。
そしてそのまま甘えるように背中を預けてきて、胸に頬擦りまでしてくる。
そんな彼女の姿を周囲の奴らが面白そうなものを見るようにニヤニヤした表情を向けてきていた。
「……絶対正気に戻ったら悶絶するだろうな、コイツ」
なんで酒がそんなに強くもないのにこういう席で飲むんだか……俺は呆れつつも普段より可愛く甘えてくるヴェルネの頭を撫でて「ま、いっか」と深く考えないことにしたのだった。
「うん」
いつの間にかレイシアの背中に生えていた翼は消え、再び椅子に座ってジュースをチューチューと飲みながら頷く。
「へぇ……それにさっきと違って鎧の形が違うな。戦闘用だったりとかそれぞれ用途に分けられてたり?」
すでにルーガルや周囲の奴らは並べられていく料理を遠慮なく食べ始めていたので、俺も質問をしつつ近くにあったホットドッグのように肉をパンで挟んだものを手に取って口に入れた。
ルルアも俺と向き合って抱き着くような座り方から座り直し、ポーリングほどの大きさがあるグミのようなものにかぶりつく。何それちょっと気になるんだが。
そこからは完全にただの食事会と化していた。
ついでにジークたちの様子も気になったので廊下を覗いてみると、そっちもそっちで雑談をしながら食事を始めている。
壁を背もたれにワインを飲んでいたジークが俺に気付き、ニッコリと微笑む。どうやらこっちもこっちで楽しんでいるようだった。
部屋に意識を戻すとルルアが俺の裾を掴んだままグミっぽいものを食べ続けていた。
「……ルルア、それ美味しいのか?」
「うん。果物みたいに甘くて歯応えも好き。それに口の中で溶けてジュースみたいにもなってて面白い」
「めっちゃ気になるんだけど」
「そうなんだ?」
ルルアが何か含みのある笑みを浮かべるともう一口食べ、食べかけのソレを差し出してきた。まさか今更間接キスとかを気にすると思っているのか……遠慮無く食べてやろうと口を開けて食べようとしたところでルルアがスライムっぽいものを素早く引っ込め、代わりに顔を近付けてきた。
そしてお互いの唇が触れ合い、その口に含んだものが流れ込んでくる。
「……正直、アブノーマル過ぎて驚き以上に引いてるんだけど?」
「やり過ぎかな?でもいいもんね、さっき泣かされた仕返しだから!」
口に入れられたゼリーを飲み込んだ俺にルルアがそう言って笑いつつベッとあざとく舌を出す。それを引き合いに出されてしまってはぐうの音も出ない。
ただ彼女とのそんな行為を誰にも見られていないのが唯一の救いだっ……たけど……
誰も俺たちのことを気にしていないことを確認していると、頬を赤くしたレイシアと目が合ってしまった。どうやら彼女には見られていたらしい。
すると椅子から降りて俺たちのところまでやってくる。
「ルルアさん」
「えっ、『さん』……?な、何……?」
慣れない呼ばれ方をされて戸惑うルルア。そういえば呼び捨てやちゃん付け、様付けで呼ばれることはあってもさん付けはされたことなかったっけな?
困惑するルルアにレイシアが至近距離まで近寄る。
「チューって、どんな味?」
「……は?」
真顔でおかしな質問をするレイシアにルルアが流石に顔をしかめる。
「中の良い男女二人、本で仲良さそうにしてた人たち……さっきのあなたたちと同じことしてた。ずっと気になってた……どんな感じ?」
「え、ちょっ……近い!」
レイシアの真面目な雰囲気と勢いに押されてルルアがたじろいでしまっていた。ここまで押される彼女も珍しいかもしれない。
「ちょっと助け……あれ、お兄ちゃん⁉」
レイシアの能力で言い返す気も起きないのか俺に助けを求めようとしたらしいルルアだが、俺はすでにヴェルネの隣に移動していた。
「いいの、あれ?凄い勢いであんたのこと恨めしそうに睨んでるけど」
「あれに助けを求められてもなぁ……ま、レトナや俺たち以外とも仲の良い相手を作るいい機会ってことでな」
するとヴェルネが食べる手を止め、俺の顔を覗き込んできた。
「なんだ?なんか顔に付いてるか?」
「……もしかしてあんた今、なんか照れてる?」
照れ……?もしかしてルルアに口移しされて気付かない内に恥ずかしがってたのか、俺?
何か変なところがあったのかと鏡のようにピカピカな円卓の机に映った自分の顔を確認する。
……何も変なところはないな。
「いや、普通に見てもいつも通りなんだけど……だけどなんかどっかおかしいっていうか、そう感じたのよね。なんでかしら?」
そう言いながら確認するために俺の顔をペタペタと触って確認してくる。その際に近付いてくる彼女の頬が僅かに赤い。まるで――
「……ヴェルネ、もしかしてお前酔ってる?」
「酔い?酔ってなんからいわよ……ヒヒヒッ!」
ヴェルネは呂律が回ってない口でそう言い、さらには変な笑い方をする。
極めつけには彼女が座る近くの机の上にはワインらしきものが。あ、完全に酔ってますねコレ。
「酔ってない酔ってない」と上の空のように呟き続けながら彼女は立ち上がって俺の膝の上に自分の体を放り投げるように飛んで座りにきた。
そしてそのまま甘えるように背中を預けてきて、胸に頬擦りまでしてくる。
そんな彼女の姿を周囲の奴らが面白そうなものを見るようにニヤニヤした表情を向けてきていた。
「……絶対正気に戻ったら悶絶するだろうな、コイツ」
なんで酒がそんなに強くもないのにこういう席で飲むんだか……俺は呆れつつも普段より可愛く甘えてくるヴェルネの頭を撫でて「ま、いっか」と深く考えないことにしたのだった。
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