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スマホの使い方(正しいとは限らない)
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「ってことで、ルルアもみんなと同じスマホゲットォォォッ!」
ヴェルネたちが集まった朝食時、ルルアが昨晩現れたスマホを高く掲げて喜びを表し、その姿にレトナたちが「おー」と拍手する。
「あんたのは薄いピンク色なのね」
「……もしかしてお姉様はピンク色の方がよかった?」
「いや、別に……」
ルルアに指摘されたヴェルネは目を逸らして否定しながらもチラチラと彼女のスマホをやはり羨ましそうに見ていた。
「ヴェルネ様の一番好きな色がピンクですもんね?」
マヤルからの貴重な情報を頭に入れつつ「そうか」と言って恨めしそうに彼女を見るヴェルネに視線を向ける。
「だとしたら残念だけど、このスマホの所有権を交換できる機能が見つかるまでは我慢してくれ」
「だから別にいいってば。ピンクも嫌いじゃないけどそこは重要じゃないの。それよりもこのスマホの使い方、誰かに教えてもらわないといけないんじゃない?」
そう言って俺と目を合わせてくるヴェルネ。それもそうだなと思い出して頷く。
正直俺自身もこのスマホの全てを知っているわけじゃないが二台以上あるからこそできる検証もあるだろうし、俺もこれを機に勉強するとしよう。
「じゃあ、まずは基本的な『電話』と『メール』。俺の場合はなぜかスマホが無くても直接声を届けることができたけれど、本来は二つあって成立する通信手段だ。『電話』はすでにヴェルネが体験しているけど、声を離れた相手に届けるものだ。ついでに大きな音も拾えるから、それで相手がどこにいるのか把握できる場合もある。あとは『メール』だが、簡単に言えば文章や画像を送って見せることができるやつだ。えっと……」
スマホを操作してメールが送れるアプリを起動し、送信先を選ぶとヴェルネたち三人の名前が並んでいた。その三人全員を選んで簡単な文章と画像を添付して送る。
するとすぐに彼女たちのスマホが鳴り、無事に届いたことを知らせる。
「それで届いたら画面に何か表示されただろ?」
「本当だ。『カズさんからメッセージが届いています』……だって!」
「なんか初めてこういうの触る時ってドキドキするよな……」
「へぇ、こんな感じで……って⁉」
ルルアとレトナが子供のようにテンション高めでスマホを見ている中で、ヴェルネが俺が言う前にメッセージが表示されたスマホの画面を触ったらしく、その内容を見て驚いて固まってしまう。
「何書いてんのよあんたは⁉」
ヴェルネが顔を赤くしてスマホの画面を見せ付けてくる。ルルアたちも気になり表示された文字を触ってその画面を映し出し、それを見た彼女たちは「あ~……」と納得したと言いたげに声を漏らす。
そこにはこの世界の文字で「可愛いヴェルネ」と書いてあった。俺の方では普通に日本語で書いたが、どうやらメールだと自動的に文字が翻訳変換されるらしい。
だけどそれよりも添付した画像には気付くかな?
「……この四角のマークってなんだろ?」
どうやら俺が気付いてほしいところをレトナが見付けてくれたらしい。
そして言わずもがな、俺が何も言わなくてもレトナの指摘で同じように気になったルルアが真っ先にタッチしてその画像ファイルを開く。
「……わっ」
開いた画像を見たルルアは少しだけ頬を赤く染めて小さく声を零す。
彼女の反応が気になったヴェルネとレトナも同じように添付されていた画像を開いた。
そこあったのは――
「な……何よコレッ!?」
「うわぁ……ヴェル姉ちゃんのめっちゃだらしない寝顔だ……」
――過去に撮ったヴェルネの寝顔だった。それを三人のスマホに送っておいたのだ。
「何の意味があってこんな嫌がらせしてんのよ!!」
「意味はもちろんないが?」
嫌がらせのつもりはない。単純に思い付いたのがこれだったというだけだった。
他の写真を添付しようかとも思ったが、どうせならこの三人がわかるものの方がいいかと選ぼうとした結果である。
もちろん選ぼうと思えば他にもあるけれど、微妙なものばかりだったからいっそインパクトのあるものがいいなと思って選んだのがこれだった。
ちなみに辱められて顔を赤くしているヴェルネは今、俺の頬を摘んで恨めしそうに「この……このっ……!」と呟いて精一杯引っ張っている。こういうところが愛らしくて思わずちょっかい出したくなってしまうのだろうな。
「……にしても綺麗な絵だな。どうやってるんだ?」
そんな中で画像を見ていたレトナが素朴な疑問を投げかけてくる。
「それは『写真』だ。お前の親父さんと初めて会った時にもやったけど……」
そこまで言って口で説明するより見せた方が早いと思い、有無を言わさずレトナを抱き寄せて内側のカメラでツーショット写真を撮る。
「ほら、こんな感じ」
「あっ、えっ、あっ……うぇ?」
わかりやすいように実際にやって見せたのだが、レトナは突然のことに固まって混乱しまっていた。
「……相変わらず凄いわね、見事にまぬ……呆然としたレトナ様がそのまま写ってる」
今ヴェルネが明らかに「マヌケ面」って言おうとして言い換えたな。レトナ本人が気付いてないみたいだからいいんだけど……ヴェルネってコイツのこと様付けしてる割には若干舐めてるよな。
「ちなみにルルアの寝顔もある」
「やだ~恥し~!……大事に保存してね♪」
恥ずかしさの欠片も見えない様子で体をクネクネさせ、最後に本音でポツリと呟いてウィンクしてきた。ルルアは本当にその方面に強いな。
「そんでこんなに便利なもんだからヴェルネやジークたちは多分色んな使い方を考えてると思うが……」
俺の言葉にジークが神妙な表情をし、ヴェルネはつまらなそうに舌打ちをする。この二人が何を考えてるのかわかりやすいなー……
「……このスマホってのは撮った背景……写真を相手のスマホに送れるんですよね?」
早速その機能を把握したらしいマヤルがそう聞いてきた。
「ああ、そうだけど……」
俺がそう肯定して答えるとマヤルはニンマリとした気持ちの悪い笑顔を浮かべる。嫌な予感しかしないし、女性として……いや、人(魔族)としてしちゃいけない顔をしてるんだけど。
何を思い付いたのかと思っているとマヤルはヴェルネを手招きし、別の部屋へと連れて行く。
一体何をさせようとしているのか……そんな心配をしていると俺のスマホからメールの通知音が鳴る。
メールを開くと文章は無く、代わりに写真が一枚添付されていただけだった。
疑問が尽きないままそれを開いてみると――
「待ってカズ!それ開いちゃダメッッッ!?」
凄まじい勢いでヴェルネが戻って来て叫ぶ。しかし時すでに遅く、スマホの画面いっぱいに画像が表示されてしまっていた。
服が乱れ、上を向きつつ片手で目を隠して笑うヴェルネの姿。あ~……これは所謂「アレ」な動画にありそうなシーンっぽい感じの……
俺に見られて手遅れだと察したヴェルネはその場に崩れ落ち、俺は何とも言えない気まずい気持ちになってしまっていた。
でも本人しか操作できないスマホでどうやって……?
「くっ……あたししか触れないから大丈夫と油断してたらまさかあたしの手を使って操作するなんて……言われるがまま目隠しなんてされるんじゃなかった……!」
賢しい悪知恵である。身内しか通じない手段ではあるけど詐欺師の才能あるぞ、アイツ。
そしてマヤル本人はというと、ヴェルネの寝室にてしばらく氷漬けにされていたらしい。
ヴェルネたちが集まった朝食時、ルルアが昨晩現れたスマホを高く掲げて喜びを表し、その姿にレトナたちが「おー」と拍手する。
「あんたのは薄いピンク色なのね」
「……もしかしてお姉様はピンク色の方がよかった?」
「いや、別に……」
ルルアに指摘されたヴェルネは目を逸らして否定しながらもチラチラと彼女のスマホをやはり羨ましそうに見ていた。
「ヴェルネ様の一番好きな色がピンクですもんね?」
マヤルからの貴重な情報を頭に入れつつ「そうか」と言って恨めしそうに彼女を見るヴェルネに視線を向ける。
「だとしたら残念だけど、このスマホの所有権を交換できる機能が見つかるまでは我慢してくれ」
「だから別にいいってば。ピンクも嫌いじゃないけどそこは重要じゃないの。それよりもこのスマホの使い方、誰かに教えてもらわないといけないんじゃない?」
そう言って俺と目を合わせてくるヴェルネ。それもそうだなと思い出して頷く。
正直俺自身もこのスマホの全てを知っているわけじゃないが二台以上あるからこそできる検証もあるだろうし、俺もこれを機に勉強するとしよう。
「じゃあ、まずは基本的な『電話』と『メール』。俺の場合はなぜかスマホが無くても直接声を届けることができたけれど、本来は二つあって成立する通信手段だ。『電話』はすでにヴェルネが体験しているけど、声を離れた相手に届けるものだ。ついでに大きな音も拾えるから、それで相手がどこにいるのか把握できる場合もある。あとは『メール』だが、簡単に言えば文章や画像を送って見せることができるやつだ。えっと……」
スマホを操作してメールが送れるアプリを起動し、送信先を選ぶとヴェルネたち三人の名前が並んでいた。その三人全員を選んで簡単な文章と画像を添付して送る。
するとすぐに彼女たちのスマホが鳴り、無事に届いたことを知らせる。
「それで届いたら画面に何か表示されただろ?」
「本当だ。『カズさんからメッセージが届いています』……だって!」
「なんか初めてこういうの触る時ってドキドキするよな……」
「へぇ、こんな感じで……って⁉」
ルルアとレトナが子供のようにテンション高めでスマホを見ている中で、ヴェルネが俺が言う前にメッセージが表示されたスマホの画面を触ったらしく、その内容を見て驚いて固まってしまう。
「何書いてんのよあんたは⁉」
ヴェルネが顔を赤くしてスマホの画面を見せ付けてくる。ルルアたちも気になり表示された文字を触ってその画面を映し出し、それを見た彼女たちは「あ~……」と納得したと言いたげに声を漏らす。
そこにはこの世界の文字で「可愛いヴェルネ」と書いてあった。俺の方では普通に日本語で書いたが、どうやらメールだと自動的に文字が翻訳変換されるらしい。
だけどそれよりも添付した画像には気付くかな?
「……この四角のマークってなんだろ?」
どうやら俺が気付いてほしいところをレトナが見付けてくれたらしい。
そして言わずもがな、俺が何も言わなくてもレトナの指摘で同じように気になったルルアが真っ先にタッチしてその画像ファイルを開く。
「……わっ」
開いた画像を見たルルアは少しだけ頬を赤く染めて小さく声を零す。
彼女の反応が気になったヴェルネとレトナも同じように添付されていた画像を開いた。
そこあったのは――
「な……何よコレッ!?」
「うわぁ……ヴェル姉ちゃんのめっちゃだらしない寝顔だ……」
――過去に撮ったヴェルネの寝顔だった。それを三人のスマホに送っておいたのだ。
「何の意味があってこんな嫌がらせしてんのよ!!」
「意味はもちろんないが?」
嫌がらせのつもりはない。単純に思い付いたのがこれだったというだけだった。
他の写真を添付しようかとも思ったが、どうせならこの三人がわかるものの方がいいかと選ぼうとした結果である。
もちろん選ぼうと思えば他にもあるけれど、微妙なものばかりだったからいっそインパクトのあるものがいいなと思って選んだのがこれだった。
ちなみに辱められて顔を赤くしているヴェルネは今、俺の頬を摘んで恨めしそうに「この……このっ……!」と呟いて精一杯引っ張っている。こういうところが愛らしくて思わずちょっかい出したくなってしまうのだろうな。
「……にしても綺麗な絵だな。どうやってるんだ?」
そんな中で画像を見ていたレトナが素朴な疑問を投げかけてくる。
「それは『写真』だ。お前の親父さんと初めて会った時にもやったけど……」
そこまで言って口で説明するより見せた方が早いと思い、有無を言わさずレトナを抱き寄せて内側のカメラでツーショット写真を撮る。
「ほら、こんな感じ」
「あっ、えっ、あっ……うぇ?」
わかりやすいように実際にやって見せたのだが、レトナは突然のことに固まって混乱しまっていた。
「……相変わらず凄いわね、見事にまぬ……呆然としたレトナ様がそのまま写ってる」
今ヴェルネが明らかに「マヌケ面」って言おうとして言い換えたな。レトナ本人が気付いてないみたいだからいいんだけど……ヴェルネってコイツのこと様付けしてる割には若干舐めてるよな。
「ちなみにルルアの寝顔もある」
「やだ~恥し~!……大事に保存してね♪」
恥ずかしさの欠片も見えない様子で体をクネクネさせ、最後に本音でポツリと呟いてウィンクしてきた。ルルアは本当にその方面に強いな。
「そんでこんなに便利なもんだからヴェルネやジークたちは多分色んな使い方を考えてると思うが……」
俺の言葉にジークが神妙な表情をし、ヴェルネはつまらなそうに舌打ちをする。この二人が何を考えてるのかわかりやすいなー……
「……このスマホってのは撮った背景……写真を相手のスマホに送れるんですよね?」
早速その機能を把握したらしいマヤルがそう聞いてきた。
「ああ、そうだけど……」
俺がそう肯定して答えるとマヤルはニンマリとした気持ちの悪い笑顔を浮かべる。嫌な予感しかしないし、女性として……いや、人(魔族)としてしちゃいけない顔をしてるんだけど。
何を思い付いたのかと思っているとマヤルはヴェルネを手招きし、別の部屋へと連れて行く。
一体何をさせようとしているのか……そんな心配をしていると俺のスマホからメールの通知音が鳴る。
メールを開くと文章は無く、代わりに写真が一枚添付されていただけだった。
疑問が尽きないままそれを開いてみると――
「待ってカズ!それ開いちゃダメッッッ!?」
凄まじい勢いでヴェルネが戻って来て叫ぶ。しかし時すでに遅く、スマホの画面いっぱいに画像が表示されてしまっていた。
服が乱れ、上を向きつつ片手で目を隠して笑うヴェルネの姿。あ~……これは所謂「アレ」な動画にありそうなシーンっぽい感じの……
俺に見られて手遅れだと察したヴェルネはその場に崩れ落ち、俺は何とも言えない気まずい気持ちになってしまっていた。
でも本人しか操作できないスマホでどうやって……?
「くっ……あたししか触れないから大丈夫と油断してたらまさかあたしの手を使って操作するなんて……言われるがまま目隠しなんてされるんじゃなかった……!」
賢しい悪知恵である。身内しか通じない手段ではあるけど詐欺師の才能あるぞ、アイツ。
そしてマヤル本人はというと、ヴェルネの寝室にてしばらく氷漬けにされていたらしい。
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