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アイドルと何するって?
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「お疲れ様でーす!」
「おう、お疲れ!今日も元気いっぱいで輝いてたな!」
ライブ?を終えたっぽいアイドル少女がそう言って俺たちのいる部屋へとやってきた。
第一印象は「元気を分け与えてくれそうな娘」という感じ。しかしその少女がここに来た理由はまさかとは思うが……
「なぁ、そろそろ話してくれるのか?今回の報酬とさっきまでアイドルっぽいことをしていた彼女との関係を」
「『アイドルっぽい』じゃなくてアイドルなの!……というかこの変な仮面を被ってる人は誰です?」
俺の言葉に対する疑問と、ようやく今気付いたというような反応をするアイドル少女。
そんな彼女の疑問にクロニクが気まずそうな表情で事情を説明する。
「……嘘。えっ、じゃああのバカみたいな大会でこの人が一人でラウちゃんに勝っちゃったってこと!? 八百長無しで!?」
驚いた後に値踏みするような目で俺を見るアイドル少女。まるで八百長前提にしないと勝負が成り立たないみたいな言い方だ。
「はぁ~、ありえない……何のために名前を貸したと思ってんのよ?」
するとアイドル少女からは先程までの純粋な笑顔が消え、あからさまに不機嫌な態度を取った。
「それは……申し訳ないとしか言えないな。まさか子供とはいえ竜を倒す奴が出てくるとは思わなかったんだ」
「そりゃそうだろ!竜なんて普通誰だって勝てると思わねぇ!国や大陸全体から強い奴らを集めて挑むような竜をたった一人でだぞ?」
「当り前よ!そこら辺の腕自慢を連れて来られても私は絶対にあなたの話になんて乗ってなかったもの……おかげで資金調達がしやすくなったのはよかったんだけど……」
アイドル少女がそう言って溜め息を吐き、睨むような目を俺へ向けてきた。
「ま、守る気がなかったとはいえ約束を反故にするわけにもいかないしね……ってことで感謝しなさい!このモモ様があなたとデートしてあげるんだから!」
「いや、結構です」
「当然よね、みんなが羨むような可愛いアイドルとデートができる――え?」
まさか断られるとは思ってなかったアイドル少女、モモが了承されたことを前提に途中まで喋り、そして固まる。
クロニクやグルドも断られるとは思ってなかった様子で、同じように俺を見て固まってしまっていた。いや、だってなぁ……
「……まさか優勝賞品ってコイツとのデートがそうだって言うんじゃないだろうな?」
「そのまさかだ。彼女は魔族や獣人の間でも結構な人気を持つアイドル。その彼女と一日、センタールの各所を回るという……つまりデート権だ」
「やっぱりそうか……」
「なっ……何よその反応ッ⁉ 私がデートしてあげるって言うのよ?なんで感謝されるどころか残念そうというか……そんなに嫌そうなのよ!?」
思ってたよりも感情が顔に出てしまっていたようで、苦笑いするクロニクと憤りを感じている様子のモモ。仕方ないから俺の方の事情も少しだけ話すことにした。
「元々俺があのコロシアムに行ったのは『彼女にちょいといいとこ見せたいな』くらいの些細な理由だったし、適当な物でも貰ったら帰るつもりだったんだけど……」
「えっ……あなた彼女持ちなの?」
「まぁ、参加者にも同じ彼女持ちや女だっていたんだから不思議じゃねえが……だけど本人を目の前にして『報酬が要らない』なんて、よく堂々と言えるよな?」
グルドはそう言って笑うが、モモは何やら納得できなさそうな不満気な様子をしていた。
「それってつまりというか、やっぱり私が要らないって風に聞こえてくるんだけど?そんなの納得いかないわ!ファンでもない奴が優勝した挙句に私を要らないって言って捨てるとか……屈辱でしかないじゃない!」
モモはそう言って早足に俺に近付き、襟首を掴んで身長差のある自分に俺を近付けようと引っ張られた。
「報酬とか関係なく私とはデートしてもらうわ!というかまずその前に……初対面でも被ったままなその失礼な仮面を外しなさい!」
「いや、それは――」
拒絶する間もなくモモは俺が被っている仮面を無理矢理に剥がした。
別に見られてもいいかと特に抵抗せず、そのまま素顔を彼女たちに見せた。いざとなればダイスから貰った許可証のカードを見せれば済むだろうからな。
その反応は案の定というか、全員が俺の顔を見て固まってしまった。
「えっ、人間……?」
「わぉ……マジかよ?」
「…………」
驚く三人。
「……あんまり見るなよ、見せもんじゃねえんだから」
グルドとモモが物珍しい物を見る目でかなり近くまで近付いてきたので、その顔を押し退ける。
「いやだって人間て……人間って私たちのこと嫌いだし、獣人のことは下に見てるしで嫌な種族ってイメージしかないんだけど……」
「俺もだぜ!だからこそ俺たちが住むこの街には魔族と獣人しかいないわけだし、まさか人間がいるとは……しかも獣人顔負けの身体能力をしてたから尚更ビックリしてるんだがな!」
するとモモが「へぇ……」と何やら興味が出てきた様子で笑みを浮かべた。
「そんな人間が恋人付きでここに来たんでしょ?その恋人って魔族か獣人?」
「魔族だけど……」
「そう、私と同じ魔族なんだ……だったらやっぱりあなた、私とデートしなさい!もアイドルとして人間のファンを増やすって意味で虜にしてやるんだから!」
モモがそう言って何故かやる気を出してしまった。あーあ、なんだか面倒な展開になってきたぞっと……
とりあえず事情を説明するためにヴェルネが待機する部屋に行くことにした。
「おう、お疲れ!今日も元気いっぱいで輝いてたな!」
ライブ?を終えたっぽいアイドル少女がそう言って俺たちのいる部屋へとやってきた。
第一印象は「元気を分け与えてくれそうな娘」という感じ。しかしその少女がここに来た理由はまさかとは思うが……
「なぁ、そろそろ話してくれるのか?今回の報酬とさっきまでアイドルっぽいことをしていた彼女との関係を」
「『アイドルっぽい』じゃなくてアイドルなの!……というかこの変な仮面を被ってる人は誰です?」
俺の言葉に対する疑問と、ようやく今気付いたというような反応をするアイドル少女。
そんな彼女の疑問にクロニクが気まずそうな表情で事情を説明する。
「……嘘。えっ、じゃああのバカみたいな大会でこの人が一人でラウちゃんに勝っちゃったってこと!? 八百長無しで!?」
驚いた後に値踏みするような目で俺を見るアイドル少女。まるで八百長前提にしないと勝負が成り立たないみたいな言い方だ。
「はぁ~、ありえない……何のために名前を貸したと思ってんのよ?」
するとアイドル少女からは先程までの純粋な笑顔が消え、あからさまに不機嫌な態度を取った。
「それは……申し訳ないとしか言えないな。まさか子供とはいえ竜を倒す奴が出てくるとは思わなかったんだ」
「そりゃそうだろ!竜なんて普通誰だって勝てると思わねぇ!国や大陸全体から強い奴らを集めて挑むような竜をたった一人でだぞ?」
「当り前よ!そこら辺の腕自慢を連れて来られても私は絶対にあなたの話になんて乗ってなかったもの……おかげで資金調達がしやすくなったのはよかったんだけど……」
アイドル少女がそう言って溜め息を吐き、睨むような目を俺へ向けてきた。
「ま、守る気がなかったとはいえ約束を反故にするわけにもいかないしね……ってことで感謝しなさい!このモモ様があなたとデートしてあげるんだから!」
「いや、結構です」
「当然よね、みんなが羨むような可愛いアイドルとデートができる――え?」
まさか断られるとは思ってなかったアイドル少女、モモが了承されたことを前提に途中まで喋り、そして固まる。
クロニクやグルドも断られるとは思ってなかった様子で、同じように俺を見て固まってしまっていた。いや、だってなぁ……
「……まさか優勝賞品ってコイツとのデートがそうだって言うんじゃないだろうな?」
「そのまさかだ。彼女は魔族や獣人の間でも結構な人気を持つアイドル。その彼女と一日、センタールの各所を回るという……つまりデート権だ」
「やっぱりそうか……」
「なっ……何よその反応ッ⁉ 私がデートしてあげるって言うのよ?なんで感謝されるどころか残念そうというか……そんなに嫌そうなのよ!?」
思ってたよりも感情が顔に出てしまっていたようで、苦笑いするクロニクと憤りを感じている様子のモモ。仕方ないから俺の方の事情も少しだけ話すことにした。
「元々俺があのコロシアムに行ったのは『彼女にちょいといいとこ見せたいな』くらいの些細な理由だったし、適当な物でも貰ったら帰るつもりだったんだけど……」
「えっ……あなた彼女持ちなの?」
「まぁ、参加者にも同じ彼女持ちや女だっていたんだから不思議じゃねえが……だけど本人を目の前にして『報酬が要らない』なんて、よく堂々と言えるよな?」
グルドはそう言って笑うが、モモは何やら納得できなさそうな不満気な様子をしていた。
「それってつまりというか、やっぱり私が要らないって風に聞こえてくるんだけど?そんなの納得いかないわ!ファンでもない奴が優勝した挙句に私を要らないって言って捨てるとか……屈辱でしかないじゃない!」
モモはそう言って早足に俺に近付き、襟首を掴んで身長差のある自分に俺を近付けようと引っ張られた。
「報酬とか関係なく私とはデートしてもらうわ!というかまずその前に……初対面でも被ったままなその失礼な仮面を外しなさい!」
「いや、それは――」
拒絶する間もなくモモは俺が被っている仮面を無理矢理に剥がした。
別に見られてもいいかと特に抵抗せず、そのまま素顔を彼女たちに見せた。いざとなればダイスから貰った許可証のカードを見せれば済むだろうからな。
その反応は案の定というか、全員が俺の顔を見て固まってしまった。
「えっ、人間……?」
「わぉ……マジかよ?」
「…………」
驚く三人。
「……あんまり見るなよ、見せもんじゃねえんだから」
グルドとモモが物珍しい物を見る目でかなり近くまで近付いてきたので、その顔を押し退ける。
「いやだって人間て……人間って私たちのこと嫌いだし、獣人のことは下に見てるしで嫌な種族ってイメージしかないんだけど……」
「俺もだぜ!だからこそ俺たちが住むこの街には魔族と獣人しかいないわけだし、まさか人間がいるとは……しかも獣人顔負けの身体能力をしてたから尚更ビックリしてるんだがな!」
するとモモが「へぇ……」と何やら興味が出てきた様子で笑みを浮かべた。
「そんな人間が恋人付きでここに来たんでしょ?その恋人って魔族か獣人?」
「魔族だけど……」
「そう、私と同じ魔族なんだ……だったらやっぱりあなた、私とデートしなさい!もアイドルとして人間のファンを増やすって意味で虜にしてやるんだから!」
モモがそう言って何故かやる気を出してしまった。あーあ、なんだか面倒な展開になってきたぞっと……
とりあえず事情を説明するためにヴェルネが待機する部屋に行くことにした。
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