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お勉強タイム
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「納得いーかーなーイー!」
レトナとルルアの恋愛問題が落ち着いたと思ったらフウリが駄々をこねていた。
しかしそれはそれとして話は終わったものとし、ジルたちを呼んでヴェルネに魔法を教えてもらう話をしていた。
「……ってことでヴェルネに魔法を教えてもらいたいんだけど」
「あぁ、やっとね。いいわよ、それくらい」
フウリの駄々を無視して経緯を話すと、ヴェルネはまるで予想していたかのような言い方をして簡単に承諾してくれた。
「やっと?」
「そう、やっと。本当ならもっと前にあんたから言われると思ってたのに、あんたってば一人で勝手に魔法を使えるようになってるし……あたしなんて必要ないと思ってたもの」
そう言う彼女がどことなく寂しそうに感じてしまう。
そういやヴェルネって先生とか言っておだてたらちょっと調子に乗るくらい嬉しがってたよな。割と頼られたがりか……?
「ヴェルネって領主の仕事で忙しいと思って遠慮してたしな」
「領主の仕事は……まぁ、あるけど。でも一日中仕事してるわけじゃないんだから別に魔法を教えるくらい構わないわよ?それに……」
ヴェルネはそこで言葉を止めると恥ずかしそうに顔を赤くしてそっぽを向く。
「ここに来てからあんたには色々やってもらってるし……ね?」
「ってことは教師役を買って出てくれるってことか?」
俺がそう聞くとヴェルネは意味深な得意げな笑みを浮かべる。
――――
―――
――
―
「それじゃ、これから勉強の時間よ!」
「「「イエーイ!」」」
「おー……」
「よろしくお願いします」
ヴェルネの気合の入った掛け声に俺とルルアとフウリはテンションを高くし、レトナは逆にやる気がなさそうな返事をした。
そしてジルは丁寧に頭を下げてユースティックは静かに俺たちの後ろから腕を組んで傍観していた。ジルって最初と比べてなんだか大人っぽくなってないか?
……ま、いっか。今はそれよりも気になることがあるし。
「ヴェルネ先生のその恰好はなんだ?」
彼女の恰好はOLのようなスーツ姿だった。
「これ?仕事着よ。ほとんど着ないやつだけど」
「仕事着?……っていうと領主の?」
「そっちでもたまに着るけど、それとは別にレトナ様の教師をする時に着てるものよ」
「なるほど」と言って納得する。前にヴェルネがレトナに魔法を教えていることはちょろっと聞いていたが、まさかそんな恰好をしていたとは……
「いつも同じ服を着ていただけに新鮮だな」
「ふふっ、似合ってるかしら?」
「どうよ?」と言いたげに胸を張るヴェルネ。
「あぁ、似合ってる」
「うん、ヴェルネ姉様可愛いよ!」
俺とルルアが食い気味に肯定するとヴェルネは少し恥ずかしそうに顔を背ける。自分から聞いただけに、いつものように「うるさいバカ」と言い返せないから尚更だろう。
「なんつーか……さっきまで重い話してたのに、よく普通にしてられるな?」
レトナが憂鬱そうに言う。てっきり勉強が嫌で気が滅入ってるかと思ったが違ったらしい。
「レトナって結構小心者か?」
「うるせー!絶対お前らの感覚がおかしいんだって……」
「一人の男を取り合うどころか共有してる時点でそれを否定できないのが悲しいところよね……」
内心複雑なレトナの言葉にヴェルネが苦笑いする。しかし彼女は「でも」と続ける。
「別にそれであたしたちがいがみ合ってるわけでも憎しみあってるわけでもないんですし、悲観的になる必要はないと思いますよ」
「そういうもんか……?」
納得できてなさそうに首を捻るレトナ。
「それはそれとして勉強の話に戻すわ。まずここにはそこら辺の子供より知識がない奴がいるから基本的な話から始めるわよ」
確実に俺のことを指し示したことを言いつつ、用意したホワイトボードの前に立つヴェルネ。イジメかな?
「魔法は魔力を使って形成、放つわけなんだけども、その魔力はどこにあるかしら?ジル!」
聞いてきたヴェルネがジルを名指しする。
「え?えっと……体の中?」
「そう、正解。正確には血液と同じように体の中を循環してるわ。それじゃあ、その魔力はどうやって作られるかしら?ルルア!」
ジルが恐る恐ると答えるとヴェルネがいつもと違うテンションで解説し、ルルアを名指しする。
「空気中の魔素を呼吸で取り入れて、体の中で変化させてるとされてるわ」
意外にもまともな回答をしたルルアにヴェルネが驚く。
「……凄いわね、正解よ。ちなみに魔素が魔力に変化するまで結構時間かかるから、下手に魔素を大量に取り込めばいいってわけじゃないわ。むしろ魔素は取り込み過ぎれば体に毒になるから、魔素が溜まった密閉空間なんかに短時間でも居座り続ければ死ぬかもしれないから気を付けなさい。それじゃあ次は魔法を放つための問題だけど……前にこの勉強したレトナ様は答えられるかしら?」
少し意地悪に言うヴェルネにレトナが苦虫を嚙み潰したように顔をしかめて唸る。
「えっと、たしか……魔法は基本イメージで形成されるけど、それをイメージしなくても簡易的に使えるようになるのが『杖』と『呪文』……だったか?」
「ちょっと惜しいですね。魔法を放つ際に言葉を発する『呪文』は魔法に必要な『具現化させるための具体的なイメージ』があらかじめ織り込まれてるから、魔力と適性さえあれば誰でも魔法が放てるの。そして『杖』はその魔法を放つために必要な魔力量の消費を抑えてくれる役割と制御を担ってるわ。ただ、そのどちらも慣れてしまえば必要のないものだから初心者中級者向けなんだけど、『ない方が強くて恰好良さそうだから』って理由で杖を使わない奴が多くて、そのまま死ぬから世話ないし……それに杖無しでも上級魔法をポンポン使えてるのまでいるからあたしが教える意味があるのかって思えてくるしね」
俺を一瞥して重く溜め息を吐くヴェルネ。すまんね、教え甲斐のない生徒で。
「話を戻すけど、この流れで魔法の発動に必要なものは基本、『適性』『魔力量』『想像力』の三つ。このどれかが欠けてたらまともな魔法の発動はできないわ」
「……つまりその三つさえあれば知識がなくても魔法が撃てるってことか?」
俺がそんな質問をするとヴェルネは冷たい目を向けてくる。
「普通は無理だけどね。例えば『火の適性』が高めにあって『僕が考えた最強の魔法』なんて言ってでたらめな威力の魔法を使おうとしたとしたら……その場合は個人じゃ補えないほど大量の魔力が必要になってくるし、具体的な想像力がなければ制御なんてできやしないわ。魔力量とか適性とか、自分に合った適切な魔法を知らないと発動すらままならないわよ。さっき言った三つはあくまで『基本』だから、ただ自爆技を撃ちたいんじゃなければオススメしないわ。それでもまともに魔法が撃ててる奴がいるのは、本当にその三つが非常識に飛び抜けてるだけだから誰かさんを参考にしないように」
その「誰かさん」とは確実に俺の事である。なんか当たりキツくない?
「はいはーい!カズお兄ちゃんが滅茶苦茶だとして、ルルアと何が違うの?」
「ルルア場合はきっと使いたい魔法が自然と頭に浮ぶパターンね。教わってないはずの知らない魔法でも自分が扱えるものが頭の中で自分が使える魔法を感覚的に構築される天才、魔力消費を考えずになんとなく使いたい魔法を適当に放てるのがカズ。後者の魔力消費量ってのはありえないほどだから、ルルアでもオススメしないわ」
もはや完全に名前呼びである。
そして自分にはできないと言われて納得できなさそうにムッとした顔で「ふーん」と言うルルア。
「お兄ちゃんっていつもどうやって魔法使ってるの?」
「んー……といってもそこまで適当じゃないけどな?一応このスマホでどの魔法を掛け合わせればどんな魔法が使えるかとか、どうすれば使いたい魔法が使えるかとかがを知ってるからな」
「その時点で卑怯と言わざるを得ないわよね……一般的に魔法を主体で戦おうとするミミィみたな子は誰かに教えてもらうか、高い金を払って魔法書を買って覚えるか……それさえできなければあとは簡単な魔法をひたすら撃ち続けるしかないわ」
「私が後者のそれですね……というかすまほってなんです?」
やはり初見は俺のスマホがなんなのかと気になるらしいミミィ。
「この世界に一つしかない特別なものだ。たとえヴェルネやルルアにねだられても渡せないくらいな」
「ヴェルネお姉様のあられもない姿の絵も中にあるもんね!」
ルルアの暴露に俺が気にせず「まあな!」と言って親指を立ててグッドサインをすると、むしろヴェルネが顔を赤くしてその場でうずくまってしまっていた。
それを見ていたミミィがクスリと笑う。
俺たちがそうやって楽しそうにしているのを他所に、ユースティックが何かを考え込んでいるようだった。
「……もしかしてだが、そのスマホとやらを見ればん魔力量が少ない奴でも使える魔法が多くなるんじゃないか?」
彼の言葉に俺以外が「あっ」と思い出したような声を漏らす。
「たしかに……というか、それがあればあたしに教えられなくても色々もうわかりやすい説明が載ってたりするんじゃない?それだけ便利なもんなんだし」
「でもどうせならこうやって話し合う場を設けた方がいいだろ?それに俺が理解できないところができても結局困るからな」
そう言うとミミィが一番共感を得たように頷いていた。
「それが本当ならありがたいですよね。私も魔法の適性が土と水しかなくて誰からも魔法を教わってないから戦闘ではあまり役に立たなくて……」
「魔族は個人が持てる魔力量が他の種族より比較的多いって言って実際その通りなんだけど、結局覚えてる魔法がなければ宝の持ち腐れになるのよね……だけどそんな宝を有効活用してくれるのがあんたのソレってわけね?」
ヴェルネがニッと笑って俺が持つスマホを見る。
「……まぁ、調べてみないことにはなんとも言えんが。万能感があるってだけで万能じゃなくても文句は言うなよ?」
俺も今のこのスマホでどこまでの情報が知れるのかがわからない。今でも十分凄いらしいが、肝心な時に何もわからないってなってガッカリされたくないしな。
早速スマホで「少ない魔力で使える魔法」で調べてみた。
その様子が気になったみんながこぞって俺の後ろから覗いてくる。まるで産まれたばかりの赤ん坊を一目見ようとする親戚の奴らみたいな絵面になっとるがな……写真撮っていいかな?
「……あ?」
すると覗いてきた全員が変な顔をし、ユースティックがポツリと呟いた。
レトナとルルアの恋愛問題が落ち着いたと思ったらフウリが駄々をこねていた。
しかしそれはそれとして話は終わったものとし、ジルたちを呼んでヴェルネに魔法を教えてもらう話をしていた。
「……ってことでヴェルネに魔法を教えてもらいたいんだけど」
「あぁ、やっとね。いいわよ、それくらい」
フウリの駄々を無視して経緯を話すと、ヴェルネはまるで予想していたかのような言い方をして簡単に承諾してくれた。
「やっと?」
「そう、やっと。本当ならもっと前にあんたから言われると思ってたのに、あんたってば一人で勝手に魔法を使えるようになってるし……あたしなんて必要ないと思ってたもの」
そう言う彼女がどことなく寂しそうに感じてしまう。
そういやヴェルネって先生とか言っておだてたらちょっと調子に乗るくらい嬉しがってたよな。割と頼られたがりか……?
「ヴェルネって領主の仕事で忙しいと思って遠慮してたしな」
「領主の仕事は……まぁ、あるけど。でも一日中仕事してるわけじゃないんだから別に魔法を教えるくらい構わないわよ?それに……」
ヴェルネはそこで言葉を止めると恥ずかしそうに顔を赤くしてそっぽを向く。
「ここに来てからあんたには色々やってもらってるし……ね?」
「ってことは教師役を買って出てくれるってことか?」
俺がそう聞くとヴェルネは意味深な得意げな笑みを浮かべる。
――――
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「それじゃ、これから勉強の時間よ!」
「「「イエーイ!」」」
「おー……」
「よろしくお願いします」
ヴェルネの気合の入った掛け声に俺とルルアとフウリはテンションを高くし、レトナは逆にやる気がなさそうな返事をした。
そしてジルは丁寧に頭を下げてユースティックは静かに俺たちの後ろから腕を組んで傍観していた。ジルって最初と比べてなんだか大人っぽくなってないか?
……ま、いっか。今はそれよりも気になることがあるし。
「ヴェルネ先生のその恰好はなんだ?」
彼女の恰好はOLのようなスーツ姿だった。
「これ?仕事着よ。ほとんど着ないやつだけど」
「仕事着?……っていうと領主の?」
「そっちでもたまに着るけど、それとは別にレトナ様の教師をする時に着てるものよ」
「なるほど」と言って納得する。前にヴェルネがレトナに魔法を教えていることはちょろっと聞いていたが、まさかそんな恰好をしていたとは……
「いつも同じ服を着ていただけに新鮮だな」
「ふふっ、似合ってるかしら?」
「どうよ?」と言いたげに胸を張るヴェルネ。
「あぁ、似合ってる」
「うん、ヴェルネ姉様可愛いよ!」
俺とルルアが食い気味に肯定するとヴェルネは少し恥ずかしそうに顔を背ける。自分から聞いただけに、いつものように「うるさいバカ」と言い返せないから尚更だろう。
「なんつーか……さっきまで重い話してたのに、よく普通にしてられるな?」
レトナが憂鬱そうに言う。てっきり勉強が嫌で気が滅入ってるかと思ったが違ったらしい。
「レトナって結構小心者か?」
「うるせー!絶対お前らの感覚がおかしいんだって……」
「一人の男を取り合うどころか共有してる時点でそれを否定できないのが悲しいところよね……」
内心複雑なレトナの言葉にヴェルネが苦笑いする。しかし彼女は「でも」と続ける。
「別にそれであたしたちがいがみ合ってるわけでも憎しみあってるわけでもないんですし、悲観的になる必要はないと思いますよ」
「そういうもんか……?」
納得できてなさそうに首を捻るレトナ。
「それはそれとして勉強の話に戻すわ。まずここにはそこら辺の子供より知識がない奴がいるから基本的な話から始めるわよ」
確実に俺のことを指し示したことを言いつつ、用意したホワイトボードの前に立つヴェルネ。イジメかな?
「魔法は魔力を使って形成、放つわけなんだけども、その魔力はどこにあるかしら?ジル!」
聞いてきたヴェルネがジルを名指しする。
「え?えっと……体の中?」
「そう、正解。正確には血液と同じように体の中を循環してるわ。それじゃあ、その魔力はどうやって作られるかしら?ルルア!」
ジルが恐る恐ると答えるとヴェルネがいつもと違うテンションで解説し、ルルアを名指しする。
「空気中の魔素を呼吸で取り入れて、体の中で変化させてるとされてるわ」
意外にもまともな回答をしたルルアにヴェルネが驚く。
「……凄いわね、正解よ。ちなみに魔素が魔力に変化するまで結構時間かかるから、下手に魔素を大量に取り込めばいいってわけじゃないわ。むしろ魔素は取り込み過ぎれば体に毒になるから、魔素が溜まった密閉空間なんかに短時間でも居座り続ければ死ぬかもしれないから気を付けなさい。それじゃあ次は魔法を放つための問題だけど……前にこの勉強したレトナ様は答えられるかしら?」
少し意地悪に言うヴェルネにレトナが苦虫を嚙み潰したように顔をしかめて唸る。
「えっと、たしか……魔法は基本イメージで形成されるけど、それをイメージしなくても簡易的に使えるようになるのが『杖』と『呪文』……だったか?」
「ちょっと惜しいですね。魔法を放つ際に言葉を発する『呪文』は魔法に必要な『具現化させるための具体的なイメージ』があらかじめ織り込まれてるから、魔力と適性さえあれば誰でも魔法が放てるの。そして『杖』はその魔法を放つために必要な魔力量の消費を抑えてくれる役割と制御を担ってるわ。ただ、そのどちらも慣れてしまえば必要のないものだから初心者中級者向けなんだけど、『ない方が強くて恰好良さそうだから』って理由で杖を使わない奴が多くて、そのまま死ぬから世話ないし……それに杖無しでも上級魔法をポンポン使えてるのまでいるからあたしが教える意味があるのかって思えてくるしね」
俺を一瞥して重く溜め息を吐くヴェルネ。すまんね、教え甲斐のない生徒で。
「話を戻すけど、この流れで魔法の発動に必要なものは基本、『適性』『魔力量』『想像力』の三つ。このどれかが欠けてたらまともな魔法の発動はできないわ」
「……つまりその三つさえあれば知識がなくても魔法が撃てるってことか?」
俺がそんな質問をするとヴェルネは冷たい目を向けてくる。
「普通は無理だけどね。例えば『火の適性』が高めにあって『僕が考えた最強の魔法』なんて言ってでたらめな威力の魔法を使おうとしたとしたら……その場合は個人じゃ補えないほど大量の魔力が必要になってくるし、具体的な想像力がなければ制御なんてできやしないわ。魔力量とか適性とか、自分に合った適切な魔法を知らないと発動すらままならないわよ。さっき言った三つはあくまで『基本』だから、ただ自爆技を撃ちたいんじゃなければオススメしないわ。それでもまともに魔法が撃ててる奴がいるのは、本当にその三つが非常識に飛び抜けてるだけだから誰かさんを参考にしないように」
その「誰かさん」とは確実に俺の事である。なんか当たりキツくない?
「はいはーい!カズお兄ちゃんが滅茶苦茶だとして、ルルアと何が違うの?」
「ルルア場合はきっと使いたい魔法が自然と頭に浮ぶパターンね。教わってないはずの知らない魔法でも自分が扱えるものが頭の中で自分が使える魔法を感覚的に構築される天才、魔力消費を考えずになんとなく使いたい魔法を適当に放てるのがカズ。後者の魔力消費量ってのはありえないほどだから、ルルアでもオススメしないわ」
もはや完全に名前呼びである。
そして自分にはできないと言われて納得できなさそうにムッとした顔で「ふーん」と言うルルア。
「お兄ちゃんっていつもどうやって魔法使ってるの?」
「んー……といってもそこまで適当じゃないけどな?一応このスマホでどの魔法を掛け合わせればどんな魔法が使えるかとか、どうすれば使いたい魔法が使えるかとかがを知ってるからな」
「その時点で卑怯と言わざるを得ないわよね……一般的に魔法を主体で戦おうとするミミィみたな子は誰かに教えてもらうか、高い金を払って魔法書を買って覚えるか……それさえできなければあとは簡単な魔法をひたすら撃ち続けるしかないわ」
「私が後者のそれですね……というかすまほってなんです?」
やはり初見は俺のスマホがなんなのかと気になるらしいミミィ。
「この世界に一つしかない特別なものだ。たとえヴェルネやルルアにねだられても渡せないくらいな」
「ヴェルネお姉様のあられもない姿の絵も中にあるもんね!」
ルルアの暴露に俺が気にせず「まあな!」と言って親指を立ててグッドサインをすると、むしろヴェルネが顔を赤くしてその場でうずくまってしまっていた。
それを見ていたミミィがクスリと笑う。
俺たちがそうやって楽しそうにしているのを他所に、ユースティックが何かを考え込んでいるようだった。
「……もしかしてだが、そのスマホとやらを見ればん魔力量が少ない奴でも使える魔法が多くなるんじゃないか?」
彼の言葉に俺以外が「あっ」と思い出したような声を漏らす。
「たしかに……というか、それがあればあたしに教えられなくても色々もうわかりやすい説明が載ってたりするんじゃない?それだけ便利なもんなんだし」
「でもどうせならこうやって話し合う場を設けた方がいいだろ?それに俺が理解できないところができても結局困るからな」
そう言うとミミィが一番共感を得たように頷いていた。
「それが本当ならありがたいですよね。私も魔法の適性が土と水しかなくて誰からも魔法を教わってないから戦闘ではあまり役に立たなくて……」
「魔族は個人が持てる魔力量が他の種族より比較的多いって言って実際その通りなんだけど、結局覚えてる魔法がなければ宝の持ち腐れになるのよね……だけどそんな宝を有効活用してくれるのがあんたのソレってわけね?」
ヴェルネがニッと笑って俺が持つスマホを見る。
「……まぁ、調べてみないことにはなんとも言えんが。万能感があるってだけで万能じゃなくても文句は言うなよ?」
俺も今のこのスマホでどこまでの情報が知れるのかがわからない。今でも十分凄いらしいが、肝心な時に何もわからないってなってガッカリされたくないしな。
早速スマホで「少ない魔力で使える魔法」で調べてみた。
その様子が気になったみんながこぞって俺の後ろから覗いてくる。まるで産まれたばかりの赤ん坊を一目見ようとする親戚の奴らみたいな絵面になっとるがな……写真撮っていいかな?
「……あ?」
すると覗いてきた全員が変な顔をし、ユースティックがポツリと呟いた。
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