オムライス食べたい ~ゲーム漫画アニメの感想、それからオカルトや都市伝説について思ったこと書く意識の低いエッセイ~

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ゴブリンの苗床

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 村にゴブリンの大群が押し寄せてきた。
 冒険者などいないこの村に、あれをどうにかする術はない。
 もちろん、早馬でギルドに助けを求めるのも無理だ。
 村で一番大きな倉庫に立てこもり、女子供を守ろうと農具を手に俺たちは閂をした扉を睨んでいる。
 扉は今にも破られそうだ。
「女を全員殺そう」
 村一番の切れ者、ジェイソンがとんでもないことを言い出した。
 悲鳴を上げる女はいない。
 ただジェイソンを睨むだけだ。
 誰もそれに同意しないと思っているのだろう。
「何を馬鹿な。気でも狂ったのか」
 ゲイシーが叱咤する。
「扉を破られたら、男は皆殺し、女は連れ去られてゴブリンどもの苗床にされる」
 誰も反論しない。叱咤するものすらいない。
 上がったのは、子供の悲鳴くらいだ。
 それが聞こえて興奮したのか、ゴブリンどもが扉を殴る勢いが増した。
 追い詰められた俺たちは、自分の運命を知りつつ見て見ぬふりをしているだけの弱い生き物だ。
「ゴブリンどもにメスはいない。人間の女を孕ませて、数を増やす。つまり、女どもを生かしておけば……」
「苗床にされた女たちから、新しいゴブリンが湧く」
 ジェイソンが頷いた。
「俺たちはもう、全滅だ。だったら、他の人類のためにゴブリンの苗床は減らしておくべきだ」
 真顔で振り向いたジェイソンは、ピッチフォークを振り上げる。
「いやーっ、やめて!」
 ケンの娘、エリーが悲鳴を上げる。
 だがエリーを庇う者はいない。ケンも、その妻アンもすでにゴブリンに殺されている。
 鋭利な切っ先が、エリーの喉笛を突き破る。
 日に焼けた、農村の娘の首から血が滲み出る。
 血を口から溢れさせ、ゴボゴボとあぶくの立つ音を立てた言葉にならないそれがエリーの末期の言葉だった。
 こと切れたエリーの胸元を蹴り、ジェイソンがピッチフォークを抜く。
 恐ろしい。
 屠畜すら怖がって泣いていた、いくじなしのジェイソンが涙一つ流さずに女たちを見ている。
「さあ、次だ。ゴブリンの苗床となって同胞を殺す罪を背負い、地獄へ落ちたくない女は手を挙げろ」
 冷徹な目で、怯える女たちを品定めするジェイソン。
「人間の尊厳を守って神の下へ召されたいと願う、善良なる女は手を挙げろ! いないのか!」
 血の匂いに興奮したのか、ゴブリンたちの数が増えている気がする。
 たわむ閂、ミシミシと悲鳴を上げる扉。
 隙間から、ゴブリンどもの醜怪な姿が見える。
「いないなら、俺が殺す!」
 ゲイシーのガールフレンド、メアリーの喉笛にピッチフォークが突き立った。
「メアリー!! てめぇ、ジェイソンこの野郎!!」
 マチェットを振り上げるゲイシー。
 メアリーからピッチフォークを抜こうとして、手の塞がっていたジェイソンは反応が遅れる。
 湿った音を立てて、ジェイソンの首が叩き切られた。
 鈍い音を立てて地面に転がる、ジェイソンの生首。
 チキンを絞めたときのように血を噴き、力なくジェイソンの身体も倒れた。
 殺人のショックで茫然自失とするゲイシー。
「腹が立ったのはわかる。でも、ジェイソンの言っていることは正しい」
 マイク、ジョン、ラスカルが女たちを囲み、十字を切って彼女たちを殺した。
 首を突き差し、斬り落とし、さらには腹を使い物にならないようにした。
「……何が苗床だよ。何が人間だ、神の下だ。お前ら全員、外のゴブリンどもと何が違う!!」
 ゲイシーが喚いた。
 誰も、その問いに答えられるものはいなかった。
 ついに扉はやぶられ、倉庫の中へとなだれ込んでくるゴブリンどもの群れ、群れ、群れ。
 もちろん、全員が勇敢に戦った。
 しかし、数で勝り、敏捷性で勝るゴブリンどもに身体をよじ登られた男たちから殺されていった。
 こん棒で殴られ、石で打たれ、眼球をえぐられ、耳を鼻をもがれて死んだ。
 ピッチフォークもマチェットも何もかも、女を殺すのには役立ったがゴブリンは2~3匹負傷させるのが精一杯だった。
 かく言う俺も、ゴブリン膝を砕かれ倒され馬乗りになられ……最期に見たのは下卑た笑みを浮かべたゴブリンの顔、そして頭に振り下ろされるこん棒だっ


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