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第6章:世界樹の民と異世界人
第58話:哀しみの理由
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転送陣をくぐった先は、緑の葉が茂り、白い光の玉が果実のように無数についている大木の、太い枝の上だった。
「綺麗……。それに、なんだか懐かしい……」
枝の上に座るエカに抱かれたまま、ソナは微笑みを浮かべて呟く。
『異世界の子よ、ここは魂が生まれる場所、其方の真の故郷でもある』
その【声】は、ソナだけではなく、エカの心にも伝わってきた。
ボクはエカと感覚や記憶を共有しているから、もちろんその声も聞こえる。
信頼する者に抱かれた女の子は、もう未知のものに怯えず、落ち着いて話を聞いていた。
「異世界人の魂もここで生まれるんですか?」
『否。異世界の民は異なる創造神の元に生まれる』
エカの問いに、創造神様は答える。
続いて伝えられたのは、ソナの生い立ちに関する事だった。
『幸福という意味の名を授けられた子よ、其方は本来は世界樹の子として生まれる筈だったのだよ』
「「えっ?!」」
告げられた真実に、ソナとエカの驚きの声が重なる。
長い寿命をもつ代わりに、子供が生まれるのは稀な世界樹の民、エカと同じ歳の子は3人も生まれていた。
ソナも同じ歳なら、エカも含め5人も世界樹の子が誕生した事になるね。
『だが、黒い果実の子が、異世界へ連れ去ってしまった』
「黒い果実……【魔王】と呼ばれるものですね」
「え? わたし、魔王にさらわれたの?」
世界樹の民が誕生したのは、ニンゲンが残した悪意と毒が世界を蝕むのを防ぐ為。
悪意が実体化したものを猫人は【魔王】と呼ぶ。
世界樹の民に双子が生まれる事は、魔王の活動が活発化する事を意味していた。
魔王は何故、ソナの魂を連れ去って異世界に生まれさせたんだろう?
ソナがこちら側に生まれると、何か不都合な事でもあったのかな?
『これより、其方に残る毒を浄化しよう』
「毒……?」
『しばし眠りなさい』
聞き返したソナの胸元に、ヒラリと1枚の葉が落ちる。
緑の葉が融け込むように胸の中へ吸い込まれると、ソナは意識を失った。
「毒というのは、ソナが虐められた記憶の事ですか?」
全身の力が抜けてグッタリと仰け反るソナ。
彼女がずり落ちないように抱き締めながら、エカは聞いた。
『正しくは、向けられた悪意。既に大半は消えているが、黒い果実から直接受けたものが残っている』
「俺が治療してもいいですか?」
『もちろん。浄化は心を通わせた者だけが出来る事、今それが可能な者は其方だけだ』
「分かりました」
悪夢の治療をする時と同じく、エカはソナの額に口付ける。
唇が触れたところから、エカの魔力がソナの中へ染み込んでゆく。
ボクは不死鳥の姿に戻り、翼で二人を護るように包んだ。
『癒しの夢』
ソナの魂の浄化を願いながら、エカは精神魔法を発動した。
「綺麗……。それに、なんだか懐かしい……」
枝の上に座るエカに抱かれたまま、ソナは微笑みを浮かべて呟く。
『異世界の子よ、ここは魂が生まれる場所、其方の真の故郷でもある』
その【声】は、ソナだけではなく、エカの心にも伝わってきた。
ボクはエカと感覚や記憶を共有しているから、もちろんその声も聞こえる。
信頼する者に抱かれた女の子は、もう未知のものに怯えず、落ち着いて話を聞いていた。
「異世界人の魂もここで生まれるんですか?」
『否。異世界の民は異なる創造神の元に生まれる』
エカの問いに、創造神様は答える。
続いて伝えられたのは、ソナの生い立ちに関する事だった。
『幸福という意味の名を授けられた子よ、其方は本来は世界樹の子として生まれる筈だったのだよ』
「「えっ?!」」
告げられた真実に、ソナとエカの驚きの声が重なる。
長い寿命をもつ代わりに、子供が生まれるのは稀な世界樹の民、エカと同じ歳の子は3人も生まれていた。
ソナも同じ歳なら、エカも含め5人も世界樹の子が誕生した事になるね。
『だが、黒い果実の子が、異世界へ連れ去ってしまった』
「黒い果実……【魔王】と呼ばれるものですね」
「え? わたし、魔王にさらわれたの?」
世界樹の民が誕生したのは、ニンゲンが残した悪意と毒が世界を蝕むのを防ぐ為。
悪意が実体化したものを猫人は【魔王】と呼ぶ。
世界樹の民に双子が生まれる事は、魔王の活動が活発化する事を意味していた。
魔王は何故、ソナの魂を連れ去って異世界に生まれさせたんだろう?
ソナがこちら側に生まれると、何か不都合な事でもあったのかな?
『これより、其方に残る毒を浄化しよう』
「毒……?」
『しばし眠りなさい』
聞き返したソナの胸元に、ヒラリと1枚の葉が落ちる。
緑の葉が融け込むように胸の中へ吸い込まれると、ソナは意識を失った。
「毒というのは、ソナが虐められた記憶の事ですか?」
全身の力が抜けてグッタリと仰け反るソナ。
彼女がずり落ちないように抱き締めながら、エカは聞いた。
『正しくは、向けられた悪意。既に大半は消えているが、黒い果実から直接受けたものが残っている』
「俺が治療してもいいですか?」
『もちろん。浄化は心を通わせた者だけが出来る事、今それが可能な者は其方だけだ』
「分かりました」
悪夢の治療をする時と同じく、エカはソナの額に口付ける。
唇が触れたところから、エカの魔力がソナの中へ染み込んでゆく。
ボクは不死鳥の姿に戻り、翼で二人を護るように包んだ。
『癒しの夢』
ソナの魂の浄化を願いながら、エカは精神魔法を発動した。
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