【R18】ポンコツ第二王子のやりなおし奮闘記

Cleyera

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本編

32 戴冠式の準備で耐えるおれ

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 戴冠式でのおれの役目は少しだけ。
 特注品の王妃の椅子に座って、寝ないで我慢していること。

 あと、国王になった兄と一緒に、宣言すること。

 ええとたしか「この国の更なる繁栄を、国王と王妃である我らが身命を賭して成し遂げることを、ここに宣言する」だったかな。

 長いから、途中で噛みそう。
 昨夜も一緒に練習したけれど、きっとこういうので、兄のノンブレスが鍛えられてんだよな、と感心した。

 宣言の意味は知らない。
 とにかく、兄と一緒にいれば良いってことだ。

 そんなこんなで、戴冠式当日。



 おれは空が暗い頃に叩き起こされて、全身がもっこもこのきらっきらになるまで磨かれている。

 まだ眠いと訴えたのに、兄がおれの鼻先に、硬くなったおっぱいのちんこをゆらゆらするからいけないんだ!
 つい夢中になってなめだしたら、そのままちんこを揉まれて起こされた。

 風呂に突っ込まれて、洗われて、とろっとしたものを全身にすりこまれた。
 まだ寒い時期の被毛から生え変わってないから、体を揺すってふぁっさーっとすると、おれが光って見える。

 なんかそういう魔術薬らしい。
 なんのために、体を光らせる?、薬を使うのかは分からないけれど、戴冠式で王妃が光る必要があるのかもしれない。

 きっと兄上が褒めてくれる。
 きれいだよ、って。
 そう思えばこの日だけは、使用人たちに触れられるのを耐えられた。

 兄だって今頃、ぴっかぴかのきらっきらに磨かれてるはずだ。
 すごいきれいだろうな。

 白銀の髪を、今日は公式の場だから編み込まずに垂らすのかな。
 兄の真っ直ぐな髪の毛が、さらさらーって動くのを、おれは見ているのが好きなんだよな。

 同じ魔術薬を使っているなら、兄の髪の毛もきらきらするのかな。
 きれいだろうなぁ、早く見たい。

 現実逃避しながら。
 使用人たちを威嚇しないように、兄がくれた服をがじがじしつつ全身を磨き上げられた。

 ものすごく緊張しながら、顔周りの被毛をはさみで刈り込まれた。
 美しく見えるようにって。

 準備が終わってから鏡に映ったおれは、確かにシュッとして見えたね。
 おれ以外の獣人を知らないから、おれ自身が美しいかどうかなんて判断できない。

 ちぇ、どうせ今のおれはまんまるだよ。
 でも太ってないから。
 ぜんぶ筋肉だから。
 もこもこなのは寒い時期の被毛だからだよ!

 真っ白にきらきらの青糸で模様が入ってる袖なし上着、まんまるパンツ、鉤爪が出る手袋もどき、白銀に光るマント。
 今回は足元もできるだけ見えないようにと、まんまるパンツの上に折り込んだ布のようなものを巻かれて、背中側で結ばれている。

 白銀と薄青が王族の色らしい。
 兄の髪の毛と瞳の色だよな。
 おれの全身はちょっと青みがかった白銀だけど、これも王族の色の中に入るらしい。

 あ、おれね、目は兄と同じ薄い青色なんだよ。
 こんなところで、おれはきちんとこの国の王族の血を引いてるんだなーって実感。
 王族らしいことなんて、何一つしたことないし、習ってもないのに。

 処刑された時も今回も、一度だって王族じゃない、とは言われなかったのは、この被毛と瞳の色のおかげだろう。

 服を着たまま、椅子に座って迎えを待つ。
 落ち着かないうえに、動きにくい。
 でも我慢。

 国王の兄はおれ以上にたくさんいろいろと身につけるんだから、王妃が文句を言ったらいけない。

 着替えは終わっているはずなのに、なぜか使用人たちが忙しく立ち回る中で、おれは兄が早く来てくれないかな~と待った。



 不意に扉を叩く音がした。
 兄だ、と思った直後、閉まった扉の奥からの複数の臭いが、別人であることに気がつく。

 あれ、使用人か護衛かな。
 それにしては臭いが違う。
 なんかくっさい。

 がっくりしてしまって、動きにくい服を着て頑張ってるのに、とひどく悲しい気持ちになる。
 早く兄が来てくれないかな。

「失礼いたします」

 開けていいよって言ってないのに、誰かが扉を開けたようだ。
 そして、現在おれがいる王妃専用だとかいう、だだっぴろい衣装部屋に、何人もの男たちが入ってきた。

 線の細い男。
 筋肉質な男。
 髪の長い男。
 髪の短い男。
 化粧した男。
 老年の男。
 背の高い男。
 小さい男。

 なんだこいつら。

 おれが城の中で見たことのある人々は、使用人か護衛か文官。
 役職とか所属部署で細かい部分は違っていても、基本的に制服を着ているから城内で働く者だと分かる。

 でも、部屋に入ってきたやつらは、違う。

 兄が人前に出る仕事中に着用するような、たくさんの飾りのついた服。
 瓶ごとぶっかけた香水。
 明らかに数日は風呂に入ってない体臭。

 くっせえから寄ってくるな、と思うと顔がさらに歪む。

「王妃様、御目文字オメモジツカマツりましたこと感謝いたします」
「……」
「我々は陛下の万代マンダイなる治世チセイを支えるため、お側にハベらせていただく所存ショゾン御座ゴザいます。
 王妃様への御目通りが叶いましたこと、心より喜ばしく思っております」

 どうしよう、何言ってんだろうこいつら。
 おめもじつかまつまいましってなに?

 くっさいのが何人もいるので、口を薄く開けて呼吸する。
 距離が近すぎて、口で呼吸していてもつらい。
 顔を背けたいけれど、視界にいれておかないと不安だ。

 牙が見えてしまわないように気をつけるのに必死で、何を言っているのか聞く余裕がない。

 鼻で呼吸したら倒れる。
 気絶はしなくても、苦しんでのたうち回るのは間違いないだろう。

 あと、一番大事なことな。
 こいつら、だれ?

 早朝から洗われて刈り込まれてこねくり回されて、ようやく着替えが終わって兄を待っていたはずなのに、知らない奴らが勝手に入ってきた。

 もう、ぜんぜん余裕がないのに。
 この状況を、おれはどう受け止めたら良いんだ。

「王妃様のお好みが、どのようなものかお教え頂きたく馳せ参じハセサンジました。
 お望みの者が、我々の中におりますでしょうか?」

 おれの、このみ?

 んー、と考える。
 おれの好みは簡単だ。

 一番好きなのは、歯応えしっかりの木の実。
 滋味がたっぷり詰まっていて、ちょっと渋いところが最高だ。
 そして熟れた果実。
 ついでに野菜と肉に魚もあれば大満足だ。

 でもこいつら、食べ物を持ってない。

 教えたら持ってくるのかな。
 いや、持ってこられても困るな。

 おれの食事は基本的に兄にあーん、してもらっている。
 兄以外にあーんをされたくない。

 鉤爪が伸び、大きくなって分厚くなった手で、人用のカトラリーは握れない。
 顔を皿に突っ込んで良いなら、何も問題ないけれど、人はそういうのを嫌がるだろ?

 それに、知らない奴らの渡してくる食事には、毒が入っているかもしれない。

「王妃様」

 男たちが、一歩おれに近付く。
 来るな、と顔が歪む。
 おれののどが、う゛う゛、と鳴ると、男たちが顔色を青くして後ずさった。

 決めた。
 おれはこいつらと話さなくて良いと思う。

 おれは、王妃らしい話し方なんてできない。
 前王妃の真似ならできるかもしれないけれど、あのねっちょりべっちょりした話し方を思い出すだけで、嫌悪で全身の毛が逆立ちそうだ。

「王妃様、如何イカガなさいました?」

 歳をとった男が伸ばしてきた手を反射的に叩き落とそうとして、止まる。
 兄の言葉を思い出したのだ。

 〝僕以外がスノシティに触れるのは許せないな〟

 これって、これを叩き落としたら触ることになるんだろうか。
 触ってるよな。
 どうしよう。

 おれ専用に作られている、低くて巨大な椅子から飛び上がる。
 椅子の後ろに四つ足で着地したのと同時に床が揺れて、何人かの男が倒れた。

 幸いなことに、衣装部屋と教えられたこの部屋は広い。
 少しくらいは逃げ回れそうだ。

 おれの服が多くなくてよかった

 これまではまんまるパンツと袖なしシャツだけ。
 王妃になってからも、人前に出ない時はそのままで良いと兄が言ってくれた。
 本当はパンツもシャツもいらないんだけどな。

 兄に揉まれて、ぷっくりとふくらんでしまった六個の乳首を、他人に見られたくない。
 いつもぬるぬるしているらしい尻も、兄以外には知られたくない。

 
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