極道恋事情

一園木蓮

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紅椿白椿

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「そいつぁ……おそらく若頭の姐さんだろう」
 というよりもそんなプライベートなことまで覗き見たのかと、さすがに蒼白とならざるを得ない。だが小川の方は至って興味津々だ。
「姐さんって……。けど、相手は野郎でしたよ?」
 ポカンと口を半開きにしながらもまるで悪気のなく首を傾げている。
「まさかっスけど、あの人たちって本場モンのモーホーなんスか?」
 有り得ねえとばかりに笑う。
「モーホーってのは何だ」
「え? ああ、ホモのことですよ。つか、今時だとゲイってのかな。分かります? 野郎同士でこうやってイチャつくやつっス」
 小川は後生丁寧に親指と親指を絡ませながらそんな説明をしてみせる。と同時に、それこそあんなイケメンが女に苦労しているとは思えないと言って笑い飛ばす。
 まあ悪気はないのだろうが、あまりにも率直過ぎる言い分に、泰造はまたしても大袈裟なくらいの溜め息をつかされてしまったのだった。
「おい、駈飛。お前さん、間違っても若頭たちの前でそんな口叩くんじゃねえぞ!」
「え? ああ、はい。もちろんそんなことしねえっスよ!」
 自分だってそンくらいはわきまえてますって! とでも言いたげにニカーっと人のいい笑顔で応えた様子にも呆れざるを得ない。
「やれやれ……。こうなったらお前にも言っておいた方が良さそうだな。あのお二人はな、男同士で生涯を共にしようと誓い合ったお方たちだ。お前さんの言うところのホ、ホモというのか? 口さがない連中がそんなふうに言うこともあるだろうが、伴侶としてご結婚までされなすったんだ」
「け、結婚ッ!?」
 小川は鳩が豆鉄砲を食ったような表情で固まってしまった。
「そうだ。籍も入れていらっしゃる」
「籍って……まさかぁ……。つか、この日本って野郎同士で結婚なんかできるっスか?」
「まあ実際には組長さんとの養子縁組という形だろうがな。だがあのお二人にとっては男女の夫婦と何ら変わらん当たり前の感覚なのだ。それこそ男同士で結婚などと世間からはいろんな目で見られただろうし、お悩みも多かっただろうがな。そんな風当たりを覚悟で共に生きようとお決めになられたんだ」
 お前さんもくれぐれも失礼なことを言わないようにと釘を刺した。
 小川は唖然状態である。
「マジっスか……。二人共あんなイケメンなのに、何でわざわざ……。てか、だったら泣いた女が最低二人はいるってことスよね! あー、二人ばっかじゃねえな。イケメンズだかんなぁ」
 鐘崎にしても紫月にしてもタイプは違うが方々から声が掛かりそうな男前だ。もったいないとばかりに信じられない顔つきをする。
「ほれ! そういうことを軽々しく口に出すなと言っておる!」
「あ、はぁ。こりゃどうも、すいやせん……」
「まあ、あのお邸にはこれからも頻繁に通うことになる。くれぐれも下手な興味を抱くもんじゃねえぞ。我々はあのお邸のお庭を預かることだけに専念するんだ」
 分かったな、と泰造は口酸っぱく念押ししたのだった。
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