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謀反
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半月後、溜まっていた社の仕事をひと段落つけて、周と冰はロンたちへの挨拶の為、鉱山へと向かった。鐘崎と紫月も一緒に行ってくれるとのことだったので、周所有のプライベートジェットで久々の旅である。帰りにはマカオの張敏のところと香港へも立ち寄るので、執事の真田に鐘崎組からは源次郎も同行してくれるという。容態に何かあった時の為にと医師の鄧も一緒に行くこととなり、和やかな道中となった。
周と鐘崎の旦那組は持参してきた仕事の事務処理かたがた世情などの難しい話に興じていて、紫月と冰はティータイム三昧だ。嫁組と源次郎に鄧も交えて真田が世話を焼きながら楽しいおしゃべりに花を咲かせていた。
「遼たちは相変わらず仕事の話かぁ。そろそろ茶でも持って行ってやっか」
「そうですね!」
真田が熱々の珈琲を淹れてくれたので、それを届けに向かう。ところが談話スペースに行くと、なんとパソコンやらタブレットを広げたまま、二人共にうたた寝の最中であった。
「ありゃりゃ、寝ちまってるぜ」
「ホントだ。このところずっと仕事詰めでしたから。きっと疲れが出たんでしょう」
特に周は記憶を失っていた間の業務を取り戻さねばと夜遅くまで頑張っていたらしい。鐘崎の方もこの旅で数日留守にするからと、いろいろと仕事の都合をやり繰りしていたようだ。
「到着までまだ二時間以上はあるしな。寝かせといてやっか」
「ですね!」
それにしても鐘崎はスーツを着込んだままソファに寝そべっていて、靴も履きっ放しだ。周の方は上着は脱いでソファに置いてあり、靴も機内のスリッパに履き替えてはいたものの、二人共何も掛けずにうたた寝では風邪を引きかねない。
「あーあ、相変わらずなんだからよぉ」
紫月がまた、せっせとクローゼットから掛け布団を引っ張り出してきて冰に手渡している。
「おい、遼。ンな格好じゃ寝づれえべ?」
先ずは靴を脱がせ、次には上着を脱がさんと身体を右に左にと動かしては、甲斐甲斐しく世話を焼いている。
「ったく、毎度のことながらこーゆー時にでっけえと苦労するぜ」
そう言いながらも顔は嬉しそうだ。その様子を横目に、冰は思わず破顔するほど嬉しそうに瞳を細めてしまった。
「そうそう、それですよ!」
「あ?」
「前にもこうして白龍と鐘崎さんが寝ちゃってた時あったじゃないですか」
「あー、そういやそうだったなぁ。あれは確か香港に行った帰りだったっけ? やっぱ氷川のプライベートジェットでさ」
「ええ。あの時も紫月さんが掛け布団を出してくれて、今と同じように鐘崎さんの上着を脱がしてあげてたんですよ。それでね、俺……鉱山で白龍を担いで出口に向かいながら、紫月さんのその言葉を思い出したんです」
また皆で和気藹々とそんな旅ができたらいい。皆で心の底から笑い合えたらいい。紫月の言葉や行動を思い浮かべて、どれほど勇気が湧いたことか。
紫月さんの顔を思い浮かべながら歩いたんですよという冰に、まるで仔犬のように瞳を潤ませては感激をあらわにする。
「冰君……なんちゅー嬉しいことを……! 俺、俺なんかあの鉱山で後から追っ掛けることしかできなかったってーのに。そんなふうに思ってくれたなんて……」
うるうると瞳に涙をいっぱいに溜めながら、口をへの字にして目一杯鼻をすする。
「ん、うん! 冰君にとっちゃめちゃめちゃ辛いこの一ヶ月だったと思うけど、ホントよくがんばったよな。鉱山で氷川を見つけられたのも愛の力だって、つくづくそう思うぜ」
紫月は涙を拭いながらも、またこうして一緒に笑い合える時がきて本当に良かったと言っては忙しなく泣き笑いを繰り返した。
周と鐘崎の旦那組は持参してきた仕事の事務処理かたがた世情などの難しい話に興じていて、紫月と冰はティータイム三昧だ。嫁組と源次郎に鄧も交えて真田が世話を焼きながら楽しいおしゃべりに花を咲かせていた。
「遼たちは相変わらず仕事の話かぁ。そろそろ茶でも持って行ってやっか」
「そうですね!」
真田が熱々の珈琲を淹れてくれたので、それを届けに向かう。ところが談話スペースに行くと、なんとパソコンやらタブレットを広げたまま、二人共にうたた寝の最中であった。
「ありゃりゃ、寝ちまってるぜ」
「ホントだ。このところずっと仕事詰めでしたから。きっと疲れが出たんでしょう」
特に周は記憶を失っていた間の業務を取り戻さねばと夜遅くまで頑張っていたらしい。鐘崎の方もこの旅で数日留守にするからと、いろいろと仕事の都合をやり繰りしていたようだ。
「到着までまだ二時間以上はあるしな。寝かせといてやっか」
「ですね!」
それにしても鐘崎はスーツを着込んだままソファに寝そべっていて、靴も履きっ放しだ。周の方は上着は脱いでソファに置いてあり、靴も機内のスリッパに履き替えてはいたものの、二人共何も掛けずにうたた寝では風邪を引きかねない。
「あーあ、相変わらずなんだからよぉ」
紫月がまた、せっせとクローゼットから掛け布団を引っ張り出してきて冰に手渡している。
「おい、遼。ンな格好じゃ寝づれえべ?」
先ずは靴を脱がせ、次には上着を脱がさんと身体を右に左にと動かしては、甲斐甲斐しく世話を焼いている。
「ったく、毎度のことながらこーゆー時にでっけえと苦労するぜ」
そう言いながらも顔は嬉しそうだ。その様子を横目に、冰は思わず破顔するほど嬉しそうに瞳を細めてしまった。
「そうそう、それですよ!」
「あ?」
「前にもこうして白龍と鐘崎さんが寝ちゃってた時あったじゃないですか」
「あー、そういやそうだったなぁ。あれは確か香港に行った帰りだったっけ? やっぱ氷川のプライベートジェットでさ」
「ええ。あの時も紫月さんが掛け布団を出してくれて、今と同じように鐘崎さんの上着を脱がしてあげてたんですよ。それでね、俺……鉱山で白龍を担いで出口に向かいながら、紫月さんのその言葉を思い出したんです」
また皆で和気藹々とそんな旅ができたらいい。皆で心の底から笑い合えたらいい。紫月の言葉や行動を思い浮かべて、どれほど勇気が湧いたことか。
紫月さんの顔を思い浮かべながら歩いたんですよという冰に、まるで仔犬のように瞳を潤ませては感激をあらわにする。
「冰君……なんちゅー嬉しいことを……! 俺、俺なんかあの鉱山で後から追っ掛けることしかできなかったってーのに。そんなふうに思ってくれたなんて……」
うるうると瞳に涙をいっぱいに溜めながら、口をへの字にして目一杯鼻をすする。
「ん、うん! 冰君にとっちゃめちゃめちゃ辛いこの一ヶ月だったと思うけど、ホントよくがんばったよな。鉱山で氷川を見つけられたのも愛の力だって、つくづくそう思うぜ」
紫月は涙を拭いながらも、またこうして一緒に笑い合える時がきて本当に良かったと言っては忙しなく泣き笑いを繰り返した。
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