極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 この丹羽からはこれまでも度々助力の要請を受けることがあったが、そのどれもが一筋縄ではいかない事案である。鐘崎のみならず組の長である父親の僚一自らが乗り出すことも多い、いわば巨大組織などを相手取る大事件といえた。
「いずれ時が来たら頼らせてもらう。もう少し下準備が必要でな」
「ほう? お前さんにしちゃ、やけに慎重だな」
「これまでにないデカい山になるだろうからな。ひょっとすれば俺の一世一代となると言っても過言じゃねえくらいのな」
「またえらく気構えたもんだ。まあ、お声が掛かるのを待つとするさ」
「頼りにしているぞ」
 謎めいた丹羽からの依頼話を半ば気楽に聞き流していた鐘崎であったが、皮肉にも正式な依頼を待たずしてその渦中に乗り込んでいくハメになろうとは、この時は想像すらできなかったのである。奇しくも事態は丹羽と別れたその直後に勃発、鐘崎と周にとっても一大事といえる暗雲となって彼らを呑み込むことになるのだった。



◇    ◇    ◇



 その頃、紫月と冰の方は香港から来日しているレイ・ヒイラギと息子の倫周を案内する為、銀座に繰り出していた。亭主たちは警視庁の丹羽と会食に出たので、その間買い物やお茶を楽しみながら街を案内して歩いていたわけだ。警護役として源次郎と春日野がお供してくれているのでたいへん心強い。レイはここ数年は香港を拠点にしていて、住まいもそちらなので、久しぶりの日本を大いに楽しんでいるといったところだった。
「レイちゃん、まだ買うのー? もうー、軽く所帯でも持てそうなくらいじゃない!」
 倫周が呆れ顔で小言を繰り出している。服に靴、鞄――と、散々買い込んで、倫周はもちろんのこと、お付きの春日野や源次郎が荷物持ちで手伝ってくれてはいても相当な量だ。
「もう! 源次郎さんや春日野さん、それに紫月君や冰君にまで買ったものを持っていただいてさぁ。申し訳ないじゃないー!」
「ああ、悪いな皆! この礼は今夜のディナーでさせてもらうから、もう少しだけ付き合ってくれ。なんせ、久しぶりの日本だしな。ちょっと見ねえ内に新しい店が続々できてて目移りしちまってるんだ」
 さすがは一流モデルである。買いっぷりもさることながら、王様気質も板についたものだ。しかも嫌味なく、周囲が進んで手を差し伸べたくなってしまうオーラは天からの授かり物といったところだろうか。そんなレイを窘めながらさりげなくフォローする倫周もまた、よくできた息子といえた。
「まあまあ、倫周さん。いいじゃねえの! 遼たちと合流するまでまだたっぷり時間はあるしさ! 俺も冰君もちょっと見たいものがあるんだ」
「そうなんですよ。バレンタインが近いですから、白龍たちへのプレゼントを決めたいと思ってまして」
 紫月と冰にまでそんなふうにフォローしてもらえて、倫周は『すみませんねぇ』と恐縮してみせた。
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