126 / 1,212
香港蜜月
20
しおりを挟む
「ねえ……白龍、確か今日のイベントの為にカードやダイス、ルーレットのボールなんかを全て新しいものにチェンジしたって言ってたよね?」
「ああ、そうだが。毎年そうしていることだが――何か気になることがあるのか?」
「ボール……、そう……それだよ! 新しくしたルーレットのボールのサンプルってここにある? あったら見せてもらいたい」
先程、トランプの新しいカードを周が褒めていたのを思い出して、もしもボールやダイスもあるならば見せて欲しいという冰に、周はすぐさま父親へとそれを告げた。
「サンプルならこれだが――」
兄の風が新しいカードやボールのサンプルを持って来て手渡す。それを受け取った冰は、ボールを握ると、スマートフォンの方位磁石を起動させて近付けた。
「やっぱり……! わずかですが磁石が狂います。多分、このボールの中に微量ですが磁気が含まれているのかも……」
「磁気だと!?」
「どういうことだ」
周はむろんのこと、父も兄も、その場にいた一同は驚いたようにして顔を見合わせた。
「おそらく磁気を利用して狙ったところにボールを落とすように細工していると思われます。ルーレットでイカサマをする時に使われる方法のひとつです。賭けているお客さんの周囲に仲間がいるはず……」
冰の指摘に慌てて階下を見下ろすと、確かに怪しげに視線を交わし合う者たちが数人で帽子の男を取り囲んでいるようだった。
隼はすぐさま場内の賭けを休止させるように指示を出すと、緊急の対策を練ることとなった。
先ずはフロアの監視役である黒服とルーレットを担当していたディーラーを呼び寄せて、詳しい経緯を訊くことにする。
「それが本当におかしいんです……。お客様の賭けた箇所に……狙ったように確実にボールが落ちるんです。それも立て続けに! こんなことは初めてです……」
ディーラーは困惑も困惑、報告する声も震えて取り留めもない様子だ。冰は彼が持ち帰ってきたボールを見せてくれるように言うと、それを手にした感覚で、やはり磁気が含まれていることを確信した。
(やっぱり――! イカサマだ)
まだ黄老人が健在だった頃、聞き及んでいた話を思い出す。
『いいか、冰。今から教える技はよほどのことがない限り他人様の前で披露してはいけない。だが、覚えておいて損はない――というよりも、お前がもしも将来ディーラーとして生きていくなら知っておかなければならない。ただ、この技を使えるようになるには気の遠くなるような鍛錬が必要だ。そして、仮にし身に付けられたとしても人前で易々と行ってはならない』
「ああ、そうだが。毎年そうしていることだが――何か気になることがあるのか?」
「ボール……、そう……それだよ! 新しくしたルーレットのボールのサンプルってここにある? あったら見せてもらいたい」
先程、トランプの新しいカードを周が褒めていたのを思い出して、もしもボールやダイスもあるならば見せて欲しいという冰に、周はすぐさま父親へとそれを告げた。
「サンプルならこれだが――」
兄の風が新しいカードやボールのサンプルを持って来て手渡す。それを受け取った冰は、ボールを握ると、スマートフォンの方位磁石を起動させて近付けた。
「やっぱり……! わずかですが磁石が狂います。多分、このボールの中に微量ですが磁気が含まれているのかも……」
「磁気だと!?」
「どういうことだ」
周はむろんのこと、父も兄も、その場にいた一同は驚いたようにして顔を見合わせた。
「おそらく磁気を利用して狙ったところにボールを落とすように細工していると思われます。ルーレットでイカサマをする時に使われる方法のひとつです。賭けているお客さんの周囲に仲間がいるはず……」
冰の指摘に慌てて階下を見下ろすと、確かに怪しげに視線を交わし合う者たちが数人で帽子の男を取り囲んでいるようだった。
隼はすぐさま場内の賭けを休止させるように指示を出すと、緊急の対策を練ることとなった。
先ずはフロアの監視役である黒服とルーレットを担当していたディーラーを呼び寄せて、詳しい経緯を訊くことにする。
「それが本当におかしいんです……。お客様の賭けた箇所に……狙ったように確実にボールが落ちるんです。それも立て続けに! こんなことは初めてです……」
ディーラーは困惑も困惑、報告する声も震えて取り留めもない様子だ。冰は彼が持ち帰ってきたボールを見せてくれるように言うと、それを手にした感覚で、やはり磁気が含まれていることを確信した。
(やっぱり――! イカサマだ)
まだ黄老人が健在だった頃、聞き及んでいた話を思い出す。
『いいか、冰。今から教える技はよほどのことがない限り他人様の前で披露してはいけない。だが、覚えておいて損はない――というよりも、お前がもしも将来ディーラーとして生きていくなら知っておかなければならない。ただ、この技を使えるようになるには気の遠くなるような鍛錬が必要だ。そして、仮にし身に付けられたとしても人前で易々と行ってはならない』
28
お気に入りに追加
879
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる