Wild Passion

一園木蓮

文字の大きさ
4 / 13

4話

しおりを挟む
「――は、こりゃ又なんともご立派なお住まいで! 確か財閥だったな、お前の家」
 自宅マンションに着き、エレベーターで自室のある最上階ペントハウスへと向かう途中で、ニヤリと横目に視線をくれながら氷川がそんなことを訊いてくる。こうして並んで立つとやはり彼の方が上背があるようだ。思っていたよりも長身なのか、十センチ程は違う感じがする。
 ああ、記憶は確かというか変わっていないというか、不思議な懐かしさがこみ上げる気がしていた。
「ふん、よくまあそんな細けえこと覚えてんよなー? そーゆーお前んちは香港マフィアだっけ?」
「――?」
 何を言っているんだといった表情で、氷川がこちらに視線をよこす。
「だってそういう噂だったぜ? あの頃、お前らんトコと小競り合いンなる度にそんな話が持ち上がってよー? けど、桃稜の氷川んちはヤクザだかマフィアだからっつって、いっつも苦水すすらされてた。桃稜の奴らに手ぇ出すと終いにゃ氷川が出てきて殺されちまうーとかさ、そんな噂で持ちきりだったのよぉ」
 まだ呂律の回らない口ぶりで大きなゼスチャーまで付けながらそういう冰に、氷川は呆れたように眉をしかめてみせた。
「確かに香港にも社はあるけどよ。俺ん家の稼業はホテル経営だ」
「えっ、マジっ!?」
「ああ、”マジ”だ。お前ん家とも顔見知りなんじゃねえか? よくそうやって親父に釘刺されてた。高坊ん時は俺も結構好き勝手やってたからな。けど隣の楼蘭学園の雪吹君とは問題起こすんじゃねえって親父がな、口酸っぱく言ってたのを思い出す。要は親父らは懇意にしてたってことなんだろうが――。だが俺とお前は隣校で番張り合っていがみ合いの仲だのって噂だったからな。青春もいいが大人の世界に悪影響及ぼすなってさ、よく嫌味を言われたもんだ」
 そんなことは知らなかった。
 自分には正反対な性質の優等生の兄がいたせいか、それとも父親自身が大らかな性質だったのか、そんな話は聞いたことがない。
 自身の素行が悪くて担任から苦言を申し立てられたこともあったようだが、その時でさえ説教を食らった覚えがない。
 今にして思えば大雑把で雄大な父であったということだろうか。ともかく氷川のせいで懐かしいことが一気に思い出されて、何となく微笑ましい気分にさせられていた。
 つい半日前に恋人に三行半を突きつけられた苦い事実でさえ、今は遠い昔の出来事のようにさえ思えて、酷く不思議な心地がしていた。



◇    ◇    ◇



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...