【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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ただいま

141話 恐怖の言葉

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アズの部屋に2人、無言で向かい合っている
聞きたいことがあるから来たのに、いざとなって怖くなって声が出ない

「っその………」

なんとか声だけは出せてもその後に聞く言葉が言えない
『なんで僕を避けてるんですか』
『なんで僕にキスをしたんですか』
聞きたいことはハッキリしてるのに……

「カメリア」
「っ!」
「そんなに怯えるならここに来なければ良かったのでは?」

わ…かってる
でも、怖くても聞きたいことに変わり無い
震えてもいいから、声を出さないと


「な、んで…アズ様は、僕を避けてるんですか…?」
「それ、聞く必要あります?」

声が冷たい
強く突き飛ばされてるみたい

「……分かってて、それを聞くんですか?そんな事の為に1人で来たんですか?」
「そんな事…。やっぱり、僕が何かしたからですか……?」

分からないよ
怖いよ、アズ
でも、怒られるような事をしたなら僕が悪いから
だから教えて

「…まさか、本当に分かってないんですか?」

僕は頷いた
申し訳なさで心臓が潰れそうになる
アズは大きな溜息を吐いた

「カメリア、私が怖く無いんですか?」

………え?
僕はこの時ようやくアズの顔をしっかりと見た
その顔は怒りじゃ無い、僕と同じような苦しそうな顔

「どういう事?僕がアズ様を怖いって…」
「だって、あれからずっと怯えてるじゃありませんか」
「あれから…?」


「私が、貴方を襲いかけてからですよ」


どういうこと?
まさか、僕を怖がらせたと思って距離を取ってたって事?
僕が逃げられないから
僕は怯えてなんていないのに
確かに驚いたし困惑した
でも、それはアズへの気持ちに気付いていなかったからもある

「アズ様、こっちに来てくれませんか?」
「…分かりました」

そうか、アズはずっと僕を嫌っているわけじゃ無い
ちょっと前の僕と同じなんだ
怯えさせてしまったから離れる
僕がしたことと同じ
なら僕がどうすればいいのか分かる筈だ

僕の側に来たアズを力一杯抱きしめた


「怖いよ、アズ様に嫌われたのかって思って、すごく怖かった!」
「え…?」
「これでも僕は、アズ様になら何されてもいいと思ってる。だって僕は……僕はアズ様の事が好きだから」


言ってしまった
とうとう伝えてしまった
やっぱり怖くて、何か言われる前にアズを離した
でも、今度はアズが僕を抱きしめた


「その『好き』は、私が考えてるものですか?両想いになれたと、考えてもいいんですか?」
「両想い…え?アズ様も僕を…?」

信じられない
だって、僕は振られると思って言ったのに

「あ、アズ様ってノーマルじゃ……」 
「ノーマル?…よく分かりませんけど、私は貴方を愛していますよ。それも…随分と前からね」

嘘…本当に?
どうしよう、驚きと嬉しさで涙が込み上げてくる

「カメリア、これは私に言わせてください。………私の、恋人になってくれませんか?」


「………はい」
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