【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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ただいま

142話 変わる幸せ

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なんだろう…暖かい
何かに包まれてるみたいな、そんな温もりを感じる
僕は確か…そうだ、アズに告白して、恋人になったんだっけ
……夢、だったのかな
このまま目を開けたら全部が夢の中だった、なんてこと…
そう考えると、このまま幸せな夢の中にいたい



……あれ?
いや、確かにあれは夢じゃ無い
アズに告白して、恋人になって……その後、どうなったんだっけ

ゆっくりと重たい瞼を上げた


「おはようございます。カメリア」
「……おはよう、ございます………?」


あ、思い出した
あの後、僕は栓が切れたように泣き出して、それからの記憶が無い……と言うか、泣き疲れてそのまま眠ったんだ……!

飛び起きて顔を隠し、目を回した

「大丈夫ですか?どこか体調でも……」
「い、いえ!その、あの、えっと………」

ああぁぁしどろもどろ……
恋人になれたって浮かれてる場合じゃ無い…!
状況から察するに、たぶん寝落ちた後にそのまま…なんでか同じベッドで眠ってたってこと?

「ご、ご迷惑を…!」
「……顔、真っ赤ですよ」

当たり前だよ!
初手でこんな失態……
っていうか、なんで一緒に寝てるの!?

「混乱するのも無理ありませんよね。実はカメリアが眠った後、部屋まで運ぼうとしたのですが…貴方が力一杯私の服を掴むもので、つい帰すのを辞めてしまったんですよ」

服を掴んでた……
僕は本当に寝てる時まで一体何を……

「…カメリア、そんなに恥ずかしがりますか?」
「だ、だってこんな……」
「あまり可愛いことをしてると、本当に襲いますよ…?」

可愛いことって何…
みっともない姿しか見せてないと思うけど
まぁ、アズのジョークは軽く流して、とりあえず部屋にもど……

「あ、そう言えば杖……」
「それならグドがここまで届けてくれましたよ。本当に…足が不自由なのに壁伝いで来るなんて驚きました」

本当だ
ベッドに杖が立てかけてある
それにしても…アズの言う通り僕は凄いことをしたものだ
それも褒められないようなこと
杖も無しに1人でここまで来るって、今の僕には危険すぎる
いつ転ぶかも分からない足で頑張ったな

「カメリア、無茶をさせてすみません。私が不甲斐ないばかりに…」
「そんなこと言わないでください、僕が勝手にした事なんですから。それと……アズ、と、呼び捨てにしてもいいですか?」

僕はカメリアって呼び捨てにされてるけど、アズの事を実際に様付け無しで呼ぶのは勇気がいる
ずっと固定されてた呼び方だし……

「もちろんです。…ところで、私も…敬語無しで話しても?」
「はい!」
「カメリアも敬語を使う必要無いよ」
「あ、そっか。分かった」

ちょっとずつ変わってく
僕も、僕の周りも
それがいい方なのか悪い方なのかすぐには分からないけど
でも僕は変わっていく今が幸せだ
ちょっとずつ肩の荷が降りていくような、開放感がある
やっと本当に自由になれたような、そんな気が
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