【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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ただいま

131話 意識の復活

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1番最初は温もり
左手が包まれたように温かい
これはなんだろう

僕は重たい瞼を開けた
明るすぎて真っ白な視界に目が眩む
段々と慣れてくると、そこは懐かしい天井だった
ここは……ラディクスの城の僕が使ってた部屋だ
そして、左手の温もりは目の前に答えがあった

「…………アズ様?」
「っ!カメリア!私がわかりますか?」



そうか……僕は城に戻ったんだ………
……何でだっけ
そうだ、ディンを助けようと力を使いすぎたんだ
それで……!

「アズ様…ディンは、どうなりましたか?」
「あぁ、彼なら別室で治療中ですよ」
「そっか……」

生きてた
間に合ったんだ
体が動くようになったらお見舞いに行かないとね
説教もしないと

「それとカメリア、グドの事なのですが……」
「グドなら大丈夫。帰ってくるのをゆっくり待つよ」

僕が生きてるんだ
グドも生きて…るとは言えないかな?
でも、僕が生きてる限りグドは蘇る

「その……、受け入れ難いかもしれませんけど、彼はもう………」
「……?あ、そっか、アズ様は知りませんでしたね」

アズに、グドは僕が生きてる限り死なないと教えた
体を失っても、僕が生きてれば必ず帰ってくると
それを聞いたアズは驚いたのか理解出来なかったのか、何故か固まっている

「そう、でしたか……。やはり人間の常識は通用しませんね。とは言え、遺体を置き去りにするべきではありませんよね………。ユグド騎士団長の時のように埋葬くらいはしないと、死んだ体が残ってしまいます」

確かに
騎士団長だった頃は死後も体は残った
……なんて、考えてはいるけど冷静ではいられない
本当はグドに対する罪悪感で心が締め付けられる
グドは僕を守って2回も死んだ
大切な人を傷つけたく無いと願うなら、1番距離を置くべきはグドだろう
それでも僕は想像できなかった
グドがそばにいない生活を
『そのうち帰ってくる』
そう自分に言い聞かせているけど、いつ帰ってくるかわからないだけですごく怖い

「とりあえず、貴方もしばらくは絶対安静です。しっかりと回復するまではここから出しませんからね」
「は、はい……ですよね………」

ずっと体に力が入らなくて、体を起こすことすらできない
横になったまま喋るのがやっとだ
体に痛みは無いけど、ベッドに固定されてるかと思うくらいには体を動かせない

ある程度自力で動けるようになるまで1週間
体を起こせないから飲食すら自分でできない
介護を受けてるみたいな1週間だった
何もかも他人にしてもらうことに、ここまで罪悪感と羞恥を感じるなんて
アズが僕の世話をしてくれてるから、余計に罪悪感も羞恥も大きい
なんか、今までの愚行の罰を受けてる気分だ
もう悪いことしません………




……………たぶん。
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