【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
70 / 161
転生した意味

69話 泡沫の意識

しおりを挟む
「それじゃあ始めるよ」

グドが呟いた
両手をしっかりと繋いで、瞳を閉じて額を合わせた
周りの水の気配が強くなる
状況が気になり目を開けてみると、周囲では水が逆上していた
凪いでいた水面は波に覆われ、細い水の柱が立っている
時間が経つにつれて柱は大きく多くなっていた
そしてそれらは僕とグドを包む

「落ち着いて、少しの間水の中に入るよ」

条件反射で目を閉じて息を止めた
グドはそれをクスッと笑って、僕にキスをした
それと同時に全身が水の中に入る
口の中から強い魔力が少しずつ流れ込む感覚
例え少量でも、あまりの強さに押しつぶされそうだ
段々と意識が薄れていく
手に力が入らない
なんとかグドが支えてくれたけど、僕の意識は簡単に消えた




ーーーーー

“来たか、人の子らよ”

目が眩むほど眩しい、天も地も無い空間
目の前に唯一あるのは現実離れした大きさの大樹
銀の幹と枝、そして青々とした葉
その根本には、床に着くほど長い銀髪と異様なまでに大きな緑の光る瞳の美しく恐ろしい誰かがいた
人にしか見えないけど、本能が『あれは人では無い』と判断する

“そなたらの望みを、我は知る。そして我はそれを叶え得る”

僕たちの望み…
そんなもの、キリがない程に沢山ある
それでも僕たちの最大の願いは同じ

“我に代わり、我の手の者として、役割を果たすのであれば、それを叶えよう”

なら…答えはたった一つだけ

“無論、役目を果たすその時まで、誓いを破らぬよう呪いを掛ける”

それでも構わない
僕たち2人が、孤独にならないようにそばにいれるのなら

人を殺すことだって厭わない



不思議だ
これは夢だとわかってるのに、この後が分かる気がする
でも、夢は目覚めと共に忘れるもの……
覚えないと行けない気がするけど、思い出さないと…………


ーーーーー




目が覚めると僕はベッドの上だった
どれくらい眠っていたんだろう……

「丸一日くらいだよ。回復は成功したけど眠っちゃうし、水の処理が間に合わなくて溺れちゃうしで少しぐだったけど…ま、完全復活おめでとう!」
「そ、そか。ありがと……」

きゅるるる………

………
……………

タイミングの悪い腹の虫
確かに丸一日眠ってたら普通はお腹減るよね
グドは目の前で腹を抱えて笑っている

「ははは…はぁ……なんか軽いもの持ってくるよ。食事が終わったら神殿の庭園にでも行こう!」
「そっか、もう外に出れるんだ」
「あぁ!でも神殿の敷地内までだからな。表向きは死んでるんだから」

グドは急いで厨房に向かった
僕はベッドから降りて、御神木の方へ歩いた
目に優しい光を放つ、少し背の低い樹木
美しいのに落ち着かないこれはなんだろう

…ふと、考えついた
なんでただの人間だった僕が神子になったんだろうか
その答えを知ってる筈なのに思い出せない
それでも、きっといつか分かるよね?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

処理中です...