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第二章
2 【R18】
しおりを挟むアリシティアが高級娼婦のお姉様達から聞いたこの世界のセックス事情は、女性はとにかく受け身だと言う事だった。
淑女の閨教育など「殿方にされるがままに、ただ身を任せなさい」が、定番らしい。
お姉様方でさえ、攻める側に回る事などなさげで、基本は言葉や仕草、感じた演技で相手を興奮させるという。
体位も女性から誘導するような事はない。
そもそも、お上品なお貴族様達は、使用する体位が極端に少ないのだとか。
その話を聞いたアリシティアは、ここは私の出番だとばかりに、お姉様方に覚えている限りの八十八手の話をした。もちろん異国の話として。他にも色々。
アリシティアから話を聞いたお姉様方は、さくらんぼのようにぷるんとした唇を半開きにしたまま、完全に固まっていた。
前立腺責めとシックスナインについては、「嘘だわ、下品すぎる」と絶対信じてもらえなかった。ちなみに、フェラは存在はするという。だが、貴族の婦女子や高級娼婦にたいして、そういう行為を求める男性はいないらしい。
アリシティアからすれば、物理的に仕掛けるよりも、お姉様方が使う心理戦の方が、かなりの高等技術だと思う。
何にせよ、ここは女性から物理的に攻めるような習慣もなければ、そんな発想もない世界。ならば、間違いなくアリシティアが前世で読んだ指南書(愛読雑誌のSEX特集)に書いてあった方法は効果的なはずだ。
だが、あまりやりすぎると、倒錯的な変態扱いされるかもしれない。その限界ラインを見極めるのは難しそうだ。
経験豊富な女王様的なガチ攻めは禁止して、あくまでも初々しさを織り交ぜておこうと、アリシティアは心の中で計算する。
そんなわけで、フェラやパイズリといった、技を繰り出すのはやめておくことにした。
アリシティアの手は優しく高ぶりを握り、ルイスのはだけた胸元へと唇を滑り落とす。胸にキスをし、小さな突起を舌で転がす。軽く歯をあてて、唇を離したあと、鎖骨に唇を滑らせた。
そして、その皮膚に軽く吸い付く。
「アリス…」
ルイスが吐息をこぼすようにアリシティアの名前を呼んだ。
ルイスの体からゆっくりと顔を離したアリシティアは、わずかに色づいた鎖骨を見て、その指先でそっとなぞってつぶやいた。
「うまくつかなかったわ…。難しいのね」
ほんの少し困ったような表情で、上目遣いにルイスを見つめる。
ゆるいカーブを描いた青紫がかった銀糸が揺れた。そしてそのままわずかに色づいた鎖骨を、顔の角度を変えて再び軽く吸い上げた。
薄いハート型の花びらが、白い肌に浮かび上がる。アリシティアはそれを確認して、唇をほんの少しだけ離し、囁くように問いかけた。
「本当は喉につけたかったのだけど、見える所につけるのはマナー違反なのよね?」
思わず息を呑んだルイスの喉仏が、大きく動いた。
「…アリスが好きなようにしてもいいよ」
「…そういうものなの?」
「そうだよ…」
「ふーん……」
右手は柔らかい刺激を送りながら、アリシティアは首を傾げた。見えるところに跡などつけられて、困るのはルイス自身だ。
そんな事を考えながら、「えいっ」と、小さな声を漏らして、軽く両手でルイスの体を押す。
殆ど力も入れていないのに、ルイスはトサっと音をたて、あっけなくソファーの上に倒れ込んだ。アリシティアはその体の上に、四つん這いで覆い被さる。
長い髪が、ルイスの顔にかかる。彼はくすぐったそうに身を捩った。
「あ、ごめんなさい…」
アリシティアは膝立ちで上体を起こして、少し後ろに下がった。
それを引き止めるように、ルイスの手が腰に伸びてくる。
だが、彼女はその手に指を絡めて遮った。
「…触っちゃだめ。あなたが言ったのよ? 僕を楽しませてって」
透明な声は、甘い毒を含んでいる。
アリシティアは伸びてきたルイスの手を、唇に持っていく。
「お仕置き…」
そう囁いて、軽く指先をかみ、もっと強い刺激を欲して熱を持った昂りを、右手でぎゅっと強めに掴む。
甘い刺激に、ルイスは短く「うっ」と、呻いた。
それを見て満足したように、アリシティアは微笑みを零す。そんな彼女を下から見上げながら、ルイスが口を開いた。
「僕がほんの少し触った位で、君は何も出来なくなるの?」
ルイスの声は、わずかに挑発するような色を含んでいる。ここにきて、なんとか自分の調子を取り戻したようだった。
今まで与えてきた物理的な刺激は、ゆるいものばかりだ。
だったら…と、アリシティアは妖艶に笑った。
「そうではないけれど、この先の事がやりづらくなるでしょう?」
「この先?」
問い返す言葉に返事を返す事はなく、行動で示唆する。
アリシティアは滑るように体を後ろにずらして、足の間に腰をおとした。
そして、ルイスの太股へと手を伸ばす。布地の下で膨れ上がったものを先程までよりも強く摩りあげると、それに答えるように、手の中の昂りがより固く、大きさを増す。
「あっ、くっ……」
ビクリと小さくその体を震わせ、ルイスは苦しげに眉根を寄せる。
だが、アリシティアはそのまま硬くなった欲望の象徴を、手のひらの中に、しっかりと握り込んだ。
ルイスは驚いたように瞬き、アリシティアを見て、咄嗟に手を伸ばして抗う仕草をみせる。そんな手を払いのけて、邪魔なトラウザーズをくつろげ、下着を引き下げた。途端に先程まで窮屈そうに抑えつけられていた、はちきれんばかりに膨れ上がり硬さを持った塊が、勢いよく飛び出してくる。
彼の美しい顔にはあまりにも似つかわしくない。その凶悪なものを、初めてまじまじと見て、『さすがは、18禁TL小説のヒーローの一人ね』と、アリシティアは真顔で考えてしまった。
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