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第二章
3 【R18】
しおりを挟む「動かないでね?」
熱の塊の先端から溢れだした透明な液体に、アリシティアが触れる。同時にルイスの体がぴくりと跳ねた。ルイスに視線を向けると、彼のタンザナイトのような色をした瞳に見つめ返される。
視線が絡み合い、アリシティアは小さな笑みをこぼした。
つっ…と彼の熱の塊を、裏筋に沿って撫であげる。
ルイスは唇を噛みしめた。
声を押し殺しているのがわかる。
普段は甘い微笑一つで他者を翻弄する妖艶な青年が、快楽に耐え、苦しげに悶えている。その姿に、アリシティアは嗜虐心を揺さぶられた。
ぴくりと跳ねる熱塊を、彼女の手で包み込む。アリシティアは小さな手のひらをゆっくり上下に動かした。
強弱をつけて手のひら全体を使って握りながら、徐々に官能をひきだしていく。
指先に透明な液体を絡めて、先端を刺激した。くびれから上を手のひらで包み込み、再び熱くて硬い欲望をさすり上げる。
食いしばった唇から途切れ途切れに漏れ聞こえる声が、わずかに増えた。
「エル、我慢しないでイって…」
囁くような脳を揺さぶる甘い声に、ルイスは耐えきれなくなったのか、手の動きにあわせて腰を突きあげて大きく震えた。
「くぅっ!!」
びくびくと脈打つ欲望の塊から、白濁が吐き出され、勢いよく飛び散る。
アリシティアはあえて手のひらで受け止める事はせず、自然のままにまかせた。
何度かビクビクと震えたものが、やがて手の中で大人しくなる。
それをもう一度強く擦り上げると、「ぐっ!!」と声を漏らして、ルイスは奥歯を噛み締めた。
「………汚れちゃったわ」
しばらくの間ルイスの荒い息だけが響いていた室内で、アリシティアが呟く。
呼吸を整えるようにルイスは深い息を吐き出した。改めてアリシティアに視線を向けると、あらわになった胸元と、口の横に、白いねっとりとした液体が散っていた。アリシティアは指先で口の横を拭う。
そして白濁を絡めた指先をじっと見て、おもむろに舌先で舐め上げた。
瞬間ルイスが大きく目を見開く。
「アリス!? だめだ!!」
咎めるような声には、かすかな狼狽が含まれている。アリシティアはそんなルイスを気にも留めていないかのように、
「……苦い」
と小さくつぶやいた。
呼吸を整えてぐったりとソファーに身を預けたルイスは、熱に浮かされたような眼差しをアリシティアに向ける。
「ごめんなさい、手で受け止めるつもりだったのに、失敗しちゃったわ……」
殊勝な面持ちで嘘をつけば、
「そんなことしなくていい……」
ルイスは目を閉じて、額に手を当て深く息を吐いた。
アリシティアは身を起こし、脱ぎ捨てたドレスに手を伸ばしてハンカチを取り出した。そして、力を失いかけ、ほんの少し柔らかくなったルイスの昂りをハンカチで拭う。
「ねぇ……こんな事どこで覚えてきたの……?」
ルイスの声には、わずかな怒りや嫉妬が入り混じっていた。柔らかくなった欲望の象徴が、再び固さを取り戻していく。
白濁を拭いとるように見せかけて、ほんの少し力を込めてこすれば、ルイスの呼吸がわずかに荒くなる。
「こんなこと?」
「……こんなふうに、男を弄ぶ方法」
「弄ぶ?」
「くっ……」
アリシティアは、ハンカチで包み込んだ昂りを掴んだ手に力を込めた。再びルイスの体が小さく跳ねる。
息を吐き出したルイスは身を起こし、アリシティアの手からハンカチを奪い取り床に捨てた。
「気持ち良くなかった?」
アリシティアは少女が大人へと変わっていく、その刹那的な色香を纏わせ、微笑みを浮かべながら問う。
「いや、気持ち良かったよ」
その姿に魅了されるように、ルイスは短く答え熱のこもった視線で、アリシティアを見つめた。
────── 勝った…
アリシティアは表情には出さなくても、内心歓喜していた。なぜなら彼女はこの勝敗を決定づける、とてつもなく重要な情報を握っている。
実は、ルイスはティーンズラブ小説のヒーローの一人であるにもかかわらず、最もポピュラーな絶倫設定がない。
そして、間違いなく賢者タイム持ちだ。
なぜなら、今まで一度も2回目に突入した事がないから。
『そんなんで、逆ハーエロ小説のヒーローが務まるのか』と言いたいが、まあ、現実はこんなものなのだろう。
アリシティアは、勝手に勝利の余韻に浸っていた。
ルイスは自らのトラウザーズのポケットからハンカチを取り出し、彼女の口元と胸元に飛び散った白濁を優しく拭き取る。
「聞かなきゃいけないことが増えたし、仕方ないよね?」
ルイスは潤んだ目に仄暗い欲望を含ませて、見るものの脳を揺さぶる程の淫靡な色香を纏い、妖艶に笑った。
彼の甘さが溶け込んだ声音に、アリシティアの鼓膜が震えて、ずくりと子宮が疼く。瞬間、本能的な危険を察知して逃げだそうとしたアリシティアの腰を掻き抱いて、ルイスが引き寄せた。
彼女の全身がぶわりと熱を持つ。
「逃げるなんて許さないよ。次は僕の番だよね?」
あざと可愛いドS淫魔が、麗しい顔でアリシティアの腰を抱きこんで自分の上に座らせる。そのまま足の間に熱を持った硬いものをぐっと押し当て、こてんと首を傾げた。
「んあっ…」
ルイスは抱きしめた腕に力を篭めてアリシティアを引き寄せ、その柔らかな双丘に、再び硬くなった情欲をゴリゴリと押し当てる。その小さな動き一つで、アリシティアの中に生まれた快楽が、子宮から脳に駆け上がっていく。
薄い下着一枚を挟んでお互いの秘部が擦れ合い、溢れ出た蜜液で下着が濡れて、ぐちゅりと粘り気のある水音がする。
「はぁ、気持ちいい…」
恍惚とした甘さを含んだ声が、アリシティアの脳幹を麻痺させる。想定外の戯れに、嬌声と共に彼女は思ったままの言葉をつぶやいた。
「な…んで? 賢者タイムは何処に行ったの?」
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