Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎

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第65話 襲撃の結末2

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乱流風タービュレンド!!」


ハッナンの掌の魔法陣から竜巻状の突風がファムに放たれる。


「!?この程度の風魔法で私を傷つけられると思っているのか!!」
「……へっ、これだから教科書通りの戦い方しか知らねぇ騎士様はやり易いぜ。」
「何ぃ!?……………!?グッ……ぎ、ぎざま……貴様、何を、した。」


ハッナンに猛然と斬りかかった筈のファムが、風魔法の突風を受けた直後に苦しげに喘ぎながら跪いてしまった。
今は涙や涎、鼻水を垂らしながら息も絶え絶えな状態になり今にも倒れ込んでしまいそうだが辛うじて剣にもたれ掛かかり膝立ちの状態だ。


「ヒッヒヒヒ!バカ正直に突っ込んで来てまともに魔法を正面から受けるとか頭の中まで脳筋かよ!ほんと騎士ってバカばっかりだなぁ!」
「………グッ…うグぅ……。」
「ファムさん!!」
「……う、うぅ……ぐ、ぐるな……はぁ、ふ、ぅ、はぁ。」


俺は溜まらず馬車の上から飛び降りてファムさんに加勢しようとするが、ファムさんは意識が朦朧としているにも関わらず俺を手で制する。


「あぁん?何だ?おめぇは?……おめぇ……ブラッドボアに追いかけられてた奴か。まさかおめぇがあの妙な土魔法や火魔法、水魔法を使ったのか?なぁ?あぁ?」
「………。」
「……ダンマリって事は肯定と捉えるぜ。マジでおめぇがやったのか。まさか複属性魔法マルチプルキャスター使いだったとはな。驚いたぜ。」


ハッナンはそう言い剣を肩に乗せて苦笑いを浮かべ、頭をポリポリ掻きながら俺に向かって歩み寄って来る。


「あの時、殺しとけば良かったなぁ。俺の判断が間違ってたみてぇだな。」


『あの時』とは恐らく俺がブラッドボアから逃げてこいつの後ろに隠れた時の事を言っているのだろう。


「ブラッドボアはどうした?ここでヒーヒー苦しんでるこの間抜けな女騎士がやったのか?まさかおめぇが倒した訳ねぇよな?ブラッドボアの死骸を見たが真っ二つになってたしな。」
「そんな事を聞いてどうする。」
「別に。俺の手下を殺した奴の事を知りたかっただけさ。ま、別にいいさ。おまえも殺す事に変わりはねぇ。複属性魔法マルチプルキャスター使いだろうが魔法使マジックキャスターいを殺すのは容易いからな。遠距離ならいざしらず、態々、姿を現すとはな。バカな奴だぜ。」


ハッナンはそう言うと、ピョンピョンと軽くステップを踏む。
ウェアウルフも言っていたが、普通の魔法使マジックキャスターいは体術が劣る為、懐に入られるとあっさりと仕留める事が出来る職種と認識されているらしい。


「……ぐッ、ぅぐぐ……ま、で……貴様の相手……はぁ、はぁ、わ、わたし…だ。」
「あぁ~ん?頑張るねぇ?騎士さんよぉ。おめぇさんがさっき食らったのはよぉ、ギガントパイソンの毒だぜ?しかもその毒袋から更に濃縮した特級品だぁ。」


ハッナンは腰の収納袋ストレージバッグから中身が紫色の液体で満たされている霧吹き状の小瓶を取り出しファムさんと俺に見せつける。
ギガパイさんの毒!?
そう言えば、先日ギガパイさんとの戦闘の際に、オースフィギス王国の騎士が毒息ポイズンブレスを食らい1発で麻痺して戦闘不能になっていたが……あれを風魔法で拡散させて人偽的にギガパイさんの毒息ポイズンブレスの効果を作り出していたのか。
それならファムさんのこの状態も納得出来る。


「イヒヒ……。普通の奴がこいつを食らったら1分と経たずに死んじまう即効性の毒なんだがなぁ……。おめぇ……化物だな。おっと、これ褒め言葉だぜ?」


ハッナンは今にも崩れ落ちそうなファムに近付き、足裏で顔面に容赦ない蹴りを入れる。


「ガッ!!」
「そらそら!まだお楽しみは終わってないぜ!イヒヒヒ!!」


ハッナンは倒れているファムに向かって蹴りを浴びせ続ける。


「ファムさん!!」


ハッナンは倒れているファムの長い髪を掴み、強引に立ち上がらせ下卑た笑みを浮かべる。


「イッヒヒヒヒ!高慢な貴族や騎士をいたぶるのって最高だぜぇ!!イヒ……アアッァァ……アガッカ……!!」


勝ち誇りファムの髪を掴みあげていたハッナンが突然呻きだす。


「フッ。奇遇だな。私も貴様の様な下衆をいたぶるのは大好きだぞ。」
「ガガッ……ゴガッ!グッ……ぐぼぉ……て、てめぇ……。」


先ほどまでギガントパイソンの毒を浴びて辛うじて意識がある状態だった筈のファムの左手には剣が握られ、ハッナンの腹部に深々と根本まで刺し貫き貫通している。


「どうした?私をいたぶるんじゃなかったのか?え?」
「ッツ……ゃぁあッ……止めろぉぉおおお!!」


ファムは冷笑を浮かべながら剣を突刺したままグリグリと捻りながら前後に抜き差しする。


「……グッ……何で動ける……んだ……。てめぇ!」
「簡単な事よ。これのお蔭さ。」


ファムはそう言いながら胸の青い宝石が埋め込まれているネックレスを持ちあげる。


「………!?マジックアイテムかよ……。クッソ。あいつの情報じゃそんな……グッ……無かったは……ず。」
「『まぁいいか。お前はここで死ぬんだし教えてやる。』だったか?貴様の先ほどの台詞は?フフ。
貴様の推察通り、これは毒を浄化するマジックアイテムだ。動けるまで多少時間が掛かるが、ギガントパイソンの毒でもこの通り問題なく浄化可能だ。これは私の家の家宝でな……。いつも身に付けているアイテムではないが……今回は用心の為に持ち出したのさ。」
「ち……ぐ……しょう。こ、こんな筈………じゃ。」
「フッ……油断し過ぎだ。幾ら毒を食らったからと言って得物を持たせたままにするなど……愚の骨頂だ。バカめ。
貴様の様な下郎は誰知れずこの森で死んで行くのだな。フフ……。ハァァァアアアア!!!」
「クソがぁぁぁあ………!!」


ファムがハッナンの耳元でそう呟くと腹部に突刺している剣に力を込めて腹から頭部に向けて真っ二つに切裂き、命を一瞬で刈取った。

……。
……………。
ファムさん……コワい……。
物凄い冷たい目で止めを刺したな。
正に汚物を見る様な目で躊躇いもなく。
めっちゃ怖ぇ!!
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