Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎

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第64話 襲撃の結末1

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「待ちやがれぇえぇ!このクソがぁぁぁあ!!」


鼻毛さん……ハッナン・ゲーヴォルグが怒声を叫びながら猛然とロン毛を振り乱しながらこちらの馬車に迫ってくる。
子分達を全滅させられて怒り心頭の様だな。
俺が鼻毛さんの立場なら、子分全員やられた時点で逃げるけどなぁ……こいつは自分の実力に余程の自信があるのだろう。


「パンツ殿!?全員仕留めたのか?」
「いえ、後1人……多分、リーダーの奴ですね。」
「!?そうか!では私が相手をしよう!!」
「え?このまま走り続けてくれれば、俺が魔法でちょちょいっとやりますよ?」
「いや、奴には一度足を掬われている。私の仲間も奴にやられたんだ。パンツ殿。申し訳ないのだが、騎士としての我儘を聞いて貰えないだろうか。手出しは無用だ。すまないが、私に何かあれば……お嬢様を宜しく頼む。」


ファムはそう言うと馬車を路肩に止めてお姫様を一瞥すると御者台から飛び降りて鞘から剣を抜き中段に構える。
お姫様を宜しく頼むって言われても、どうすりゃいいんだよ。
保護したしても誰を頼りにしていいのか全く分からないんだが……。
手出しは無用とか言ってたが、ファムさんに何かありそうになったら何が何でも助太刀させて貰う!お姫様の子守とか扱い方なんて知らないし!!

こちらが止まった事を確認したからなのか、野盗リーダーの鼻毛さんは馬をゆっくりと進めてくる。
ほぅ……ブラッドボアから咄嗟に後ろに隠れた際には、顔を良く見てなかったが、鼻毛さん……名はたいを表すじゃないが、かなり……いや、結構ボーボーじゃないか。
遠目から見ても、鼻孔から黒いフサフサしたものが確認出来る。


「どうしたんだ?逃げるの諦めたのかぁ?女騎士さんよぉ!!」
「…………。」
「なんだ?ビビっちまって声もでねぇかぁ?ああ!?」


野盗リーダーの鼻毛さん……ハッナンは馬から降り剣を抜きながら大声を上げてファムを威嚇する。
しかしファムはそんな事を意に介さないかの様に、剣を中段に構えピクリとも動かずにハッナンを睨み付けている。


「貴様の実力は分かっているつもりだ。油断も見くびるつもりもない。我らの仲間達を切り伏せた男だからな。」
「……ケッ。だから何だってんだよ。おめぇが油断してもしなくても俺の力は変わらねーんだよ。」
「最後に聞いておきたい。貴様ら……何者だ。」
「………まぁいいか。どーせお前はここで死ぬんだし。教えてやるよ。俺は現役の白金級プラチナ冒険者。盗賊団『龍の巣』って言えば分かるか?」
「何!『龍の巣』だと!?」
「知ってるみてぇだな。ここら一体の裏社会を牛耳っている犯罪組織。そこで俺は幹部として働いてるのさ。」
「冒険者が犯罪組織に加担するなど……クズが……!」
「はっ!何とでもいいな。俺達冒険者だけじゃねぇぞ?俺達の構成員には騎士や貴族連中もいるんだぜ?」
「馬鹿な!!そんな事が信じられるものか!」
「おめぇが信じようと信じまいと事実なんだよ。……あららぁ?そー言えば、おめぇ達の護衛騎士の一人が見当たらないなぁ?あれれー?どーしてなのかなぁ?」


そうだ。俺がファムさんの助けに入った時、既に2人の騎士が命を落としていたが、ファムさんは『騎士4人』で護衛していたと言っていた。


「!?そ、そんな……ロリンズの奴が……裏切ったと言うのか!?」
「ヒヒヒ!どーだろうなぁ?どーこいっちゃったんだろーなぁ?不思議だなぁ?」


ファムさんが口走った『ロリンズ』と言うのは恐らく一緒に護衛をしていた今姿の見えない騎士の名なのだろう。
かなり狼狽えているのが分かる。


「さぁて無駄話が過ぎたな。……姫様は……まだあの馬車に乗ってんだろ?
さっきの場所に死体も無かったし、おめぇさんが失望している様子を見せてない所を見るとブラッドボアに食われたって事でもなさそうだしな。
さっさとおめぇをぶっ殺して姫さんとマンツーマンでお楽しみタイムと行かせて貰うぜ?イッヒヒヒ!楽しみだぜぇ!!」


ハッナンは剣先で馬車を指し、下卑た笑い声を上げながらファムへと近づいて行く。


「この……下衆がぁ!お嬢様に指一本触れさせるものか!!セァァァァァアアアア!!!!」


ファムはそう叫ぶと、上段に構えてハッナンに斬り掛かる。
その斬りかかる速さはルク・スエルの副ギルマスのリッターさんにも匹敵する程に見えた。


「ヒヒっ!やっぱ騎士様は単純な挑発に乗ってくれるから与し易いぜ。」
「!?」


ハッナンは素早く後方に下がり距離を取りながら左手を翳すと、緑の魔法陣が展開され魔法が発動する。


乱流風タービュレンド!!」


するとハッナンの掌の魔法陣から竜巻状の突風がファムに放たれる。


「!?この程度の風魔法で私を傷つけられると思っているのか!!」
「……へっ、これだから教科書通りの戦い方しか知らねぇ騎士様はやり易いぜ。」
「何ぃ!?……………!?グッ……ぎ、ぎざま……貴様、何を、した!」



ハッナンに猛然と斬りかかった筈のファムが、風魔法の突風を受けた直後に苦しげに喘ぎながら跪いてしまった。
何だ!?何が起きたんだ!?
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