上 下
78 / 133

閑話 キャンベル公爵令嬢 3

しおりを挟む
 久しぶりに社交の場に出る私。

 今まで国王陛下主催のパーティーなら、最低限のエスコートは王太子殿下がしてくれた…。愛されてなかったけど、それでも私は嬉しかった…。

 感傷に浸りたいのを我慢して会場入りする。

 沢山の令嬢たちから挨拶を受ける。そう、私は名門公爵家の令嬢。皆んなが私の機嫌を伺うのは当然のこと。今までは、私に対して礼儀のなっていない令嬢には、取り巻きの令嬢を使って潰してきた。しかし、令嬢達は挨拶には来るものの、ただそれだけだった。私の取り巻き達はいなくなっていたのだ。

 ヒソヒソ…

「王太子殿下の婚約者とは言っても、一時的なものだというのは、貴族派以外の者はみんな知っていたのに、あんなに傲慢に振る舞っていらしたから…。」

「貴族派達は、婚約は解消されないように持っていくつもりだったから、一時的だとは考えてはいなかったと聞きましたわ。」

「あり得ないわよ。反国王派閥の人間と婚姻なんてしたらねぇ…。」

「そうとは知らずに可哀想な方。危篤だとも知らされなかったらしいわ。」

 なっ!私のこと?あれは国王派閥の令嬢達ね。許さない!

「貴女達、随分と楽しそうね。」

 我慢出来ず、令嬢達に話しかけるが…

「まあ!キャンベル公爵令嬢ではありませんか。お元気そうで何よりですわぁ。」

「楽しそう?戦勝パーティーですから、勿論、楽しい気分で参加させていただいてますわ。」

「キャンベル公爵令嬢、次の国王に即位される王子殿下がどの方か知っていまして?今日、その発表が国王陛下から発表されるらしいですわ。戦勝パーティーで、次に王位を継ぐ方を発表されるなんて、とてもおめでたい場ですから、楽しく参加してましたのよ。」

「キャンベル公爵令嬢は、今日はお一人?珍しいこともありますのね。」

 クスクスと笑いながら、令嬢達は去って行った。

 王太子殿下の婚約者という肩書きを失った、嫌われ派閥の令嬢。恐らく私はそう見られている。そんな私からは、取り巻き達はあっさり離れていったということか…。

 パーティーが始まると、戦争で活躍した騎士達を紹介される。そして国王陛下からは、次の王位を、戦争で活躍してきた第二王子殿下に継がせることを明言していた。

 王太子殿下と仲の良かった、第二王子が次の国王…。



「リサ!第二王子殿下に挨拶をしに行くぞ!」

 次の国王に決まった第二王子殿下には、我先に取り入ってやろうと、沢山の貴族達が挨拶をしに行っているようだ。しかし、あんな関係だった私は何と挨拶すればよいのか…。
 しかし、お父様はそんなことは全く気にしていないようであった。お父様を止められず、第二王子殿下に挨拶に行く私。


「第二王子殿下。本日はおめでとうございます。」

「…キャンベル公爵か。これからも、よろしく頼む。」

 第二王子殿下は私達に対して無表情だった。

「リサ、お前も殿下に挨拶しな……」

「公爵!その必要はない。キャンベル公爵令嬢は、私が大嫌いなんだ。大嫌いな人間に挨拶するなんて、令嬢が可哀想だ。」
「キャンベル公爵令嬢。生きて帰ってきて、悪かったな。兄上が亡くなって、私のような者が生きていて気分が悪いかもしれないが、これからも家臣の1人としてよろしく頼む!」

 お父様は顔色を悪くして言葉を失っていた。次期国王に娘を嫁がせたくて、挨拶させようとしたのに、その前に全否定されたのだから。

 第二王子殿下の話す声は、他の貴族達にも聞こえていたのだろう。クスクスと笑う声や、騒めきなどが聞こえる。

 次期国王に嫌われた公爵令嬢…。その場にいた人なら、そう感じたに違いない。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...