巻き戻り令嬢は長生きしたい。二度目の人生はあなた達を愛しません

せいめ

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二度目の話

私が守る

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 お義兄様にガシッと手を繋がれたまま、馬車に乗せられた私。
 いつも優雅にエスコートしてくれていたお義兄様は、そこにはいなかった。

「…お義兄様、そろそろ手は離して頂けますか?」

「ダメだ。」

 私の顔を見ることなく、即答するお義兄様が怖いわ。
 

 屋敷に着くと居間に連行される。

「アナ、そこに座りなさい。
 人払いしてくれ!」
 
 使用人達はサッと部屋から出て行ってしまった。

 今から私は、お義兄様からお説教されるらしい…
 
「お義兄様、ごめんなさい。」

「ごめんなさいと言わなければならないことをしていたと認めるのだな?」

「………。」

「アナ、君はしばらく外出は禁止だ。
 どうしても外出しなければならない時は、私が付き添う。」

 嘘でしょ?そこまで怒っているの?

「お義兄様、それは酷いですわ!」

「…酷い?私の気持ちも考えずに、家出をしようとしていたアナが言える言葉ではない。
 留学を認めてもらえないからと家出をするのか?
 それとも、ブレア公爵家との縁談を避けたくて家出がしたいのか?どっちだ?」

 相変わらず鋭い人だわ…。
 絶対に敵にしてはいけない人よね。
 
「……両方ですわ。」

 お義兄様が恐ろしくて、弱々しく答える私。

「両方って…、ハァー…。」

 ため息が出るほど呆れているのね。
 でも、私の人生に関わる大切なことなのよ!

「アナ、私を信じろ。アナは私が守るから大丈夫だ。」

 ブラコンとしては嬉しい言葉だけど、お義兄様の秘密の恋人が引っかかっていて、複雑な気持ちになるわね。

「お義兄様に迷惑は掛けられませんわ。」

「家出を計画している時点で、すでに迷惑を掛けているのだから、今更な言葉だな。
 おっちょこちょいなアナが可愛すぎて、結局は許してしまうが…。
 それより家出なんてしたら、義父上と義母上は侯爵家と親族の力を駆使して、アナを探し出そうとするだろうし、もし見つかれば、もう好きに外出は出来なくなる。
 最悪、軟禁されるかもしれないな。」

 あり得るわ…

「挙句の果てに、そんなアナが行き遅れにならないようにと心配して、無理に縁談話を進めようとするかもしれない。
 アナがブレア公爵家を嫌がっても、そのタイミングで、ブレア公爵家から縁談の申し込みが来てしまったりしたら、あの二人は喜んで縁談を受けてしまうだろうな。」

 確かに…。結婚第一主義の両親なら、私が結婚出来なくなることを心配して、私の意思に関係なく強引に結婚させるかもしれない。

「…私は、完璧に逃走しなければならないということですね。」

「アナはおっちょこちょいだから、完璧な逃走なんて無理だ。諦めなさい。」

 そこまでハッキリと言い切らなくても…

「ブレア公爵令息が学園に在学している間は、アナは学園に行きたくないのだろう?
 だから留学したいと考えたのだな?」

 全てバレバレなのね…

「はい。」

「分かった。私に良い考えがあるから、アナは今まで通りに勉学に励むようにしてくれ。」

「え?」

「大丈夫だ。とにかく、しっかり勉強はしておいてくれ。」

 結局、またガリ勉するのね…。




 それから二週間くらい経ったある日、お父様とお母様から呼び出しを受ける私。

 ハァー。もしかして、ブレア公爵家に遊びに行ってこいとか言われるのかしら?
 行きたくないわー。家出がダメなら修道院かしら?


「アナ。留学の件だが、勉強をサボらずに真面目に頑張るって約束出来るかい?」

「……へっ?」

 つい間抜けな言葉が出てきてしまった私。

「アナの頑張りをうちの家庭教師の先生方が褒めてくれてはいたのだが…。
 それが…、我が国の家庭教師協会長の耳にまで入ったらしくてな。教育界の重鎮と呼ばれるすごいお方なんだよ。
 その方が、家庭教師の先生方を通して手紙を下さったんだ。
 これからの次世代を担う若者には、やる気があるならば、性別に関係なくどんどん学ぶ機会を与えてあげて欲しいと手紙に書いてあった。
 更に、他国では女性が爵位を継いでいたり、国家の要職に就いていたりすることが珍しくない時代なのだから、令嬢が他国に留学する機会があってもいいだろうと書いてあったんだ。」

「それは…、マニー国への留学を認めて下さるのですか?」

「お父様もお母様も、アナ達と離れるのは寂しいから本当は反対したいが…、一年だけなら認めることにした。
 そのかわり、しっかり学んでくるように。
 一年の留学期間を終えたら、我が国の貴族学園に転校してもらう。
 マニー国で好きな人が出来たから帰りなくないと言っても、それは絶対に許さないからな。」

 ……やったわ!

「ありがとうございます!」

「アナ。留学から帰ってきたら、本格的に社交が始まるのだから、貴女の婚約者探しもしますからね。」

「お母様、それは分かっております。ぜひ、王族と公爵家以外でお願いしますわ!
 迷った時は、お義兄様の決めた方にします。」

「アナはルークの言うことは聞くのよね…。
 もし縁談の話がきたとしても、高貴な身分の方からの縁談話を即答で断ることは出来ないわよ。
 でも、相手が誰であっても縁談の話がきたら、アナには必ず相談するから大丈夫よ。」

「お母様、その約束は絶対に守って下さいね。」


 両親の話の後、私はお義兄様の部屋に向かっていた。
 部屋に訪ねて行くと、お義兄様はいつものように、優しく迎えてくれる。

「お義兄様のお陰で留学の許可がもらえましたわ。
 お義兄様が裏で手を回してくれたのですね。
 ありがとうございます。
 大好きなお義兄様と離れるのはとても寂しいですが、私、頑張ってきますわ。」

 お義兄様は、フッと微笑むと私を抱きしめるのであった。


 

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