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二度目の話
ブラコンは辛いよ
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お義兄様は図書館から帰る時、いつものようにエスコートしてくれた。
図書館にいる他の利用客や司書さん達が、みんなこっちを見ているような気がする。
ふふっ!私のお義兄様、カッコいいでしょ?
カッコいいだけでなくて、勉強も出来るし、バイオリンも上手で剣術もすごいのよ!しかも、すごい優しいんだからー!
心の中で義兄自慢をする私だったが…
お義兄様は、もう私だけのお義兄様ではなくて、秘密の恋人に取られてしまったんだった…
ブラコンはどうしたら卒業出来るんだろう…。
一人で勝手に落ち込む私だった。
その後、邸に帰って来た私は、久しぶりにお義兄様と一緒にお茶をしている。
「アナは殿下とも知り合いだったのか?」
「知り合いだなんて、畏れ多いですわ。
実はこの前、ブレア様と学園でご一緒させて頂いた時に、殿下がブレア様に声を掛けて来られたのです。その時に、一緒にいた私のことを偶然覚えて下さっていたようですわ。
先程も、偶々お声を掛けて頂いただけなのです。」
「…殿下から令嬢に話し掛けるなんて、信じられないよ。
しかも、あんな風に楽しそうに令嬢と話をする殿下のお姿を、私は初めて見た。」
「友人のブレア様の知り合いだからと、気を遣って話し掛けてくれただけではないでしょうか?
殿下は親切そうなお方でしたし。」
私の話にお義兄様の表情が険しくなるのが分かった。
「アナ…。殿下とブレア公爵令息は、王家と筆頭公爵家という近い間柄だから、関係は悪くはないとは思うが、特別な友人と言えるほど仲が良さそうには見えない。
ブレア公爵令息は殿下の側近候補を辞退したらしいし、殿下は殿下で別の人間を近くに置いている。」
……はあ?
また一度目の人生とは違ったことが起きているのー?
一度目の時は、お互いを信頼し合っている仲間みたいな関係だったじゃないの!
頭が痛くなってきたわ…。
「アナ、どうした?そんな難しい顔をして。」
「…何でもありませんわ。
ところでお義兄様、今はテスト期間なのでしょうか?いつもより、お帰りが早いような気がしますわ。」
「テストは明後日からだな。」
なるほど…。テスト前だから殿下は生徒会がお休みだったということなのね。
「明後日からいつまでテスト期間なのでしょう?」
「三日間だ。そこまで難しいテストではなさそうだから、特別な勉強はしなくても大丈夫そうだな。」
お義兄様からしたら、何のテストでも簡単なのでしょうけど。
それよりも、今週はテスト期間ってことらしいから、殿下に会わないように図書館通いはやめよう。
「さすがお義兄様ですわ。私もお義兄様の義妹として、恥にならないように頑張りますね。」
「アナ、それは違う。私の方がアナの義兄として頑張らないといけないんだ。
アナは努力家で優秀だって、家庭教師の先生方がみんな褒めているんだぞ。
少しおっちょこちょいだけど、それがアナの魅力だしな。
だから、もっと自分に自信を持つんだ。」
おっちょこちょいは余計だけど、嬉しい言葉だわ。
一度目と違うことぼかり起こるけど、お義兄様の優しさはあの時と変わらないわね。
あの時のお義兄様も、至らない私を責めることはしなかったし、頑張りを認めてくれる優しい義兄だった。
ハァー。ブラコンがやめられそうになくて辛いわ。
世のブラコン達は、こんなにも苦しんでいるのかしらね…。
「ありがとうございます。
私、お義兄様の義妹で良かったですわ。」
「……それは良かった。」
次の日、図書館に行けない私は、買い物がしたいと言って、王都の街中を散策していた。
「お嬢様、あまり裏道に入るのはお勧め出来ません。」
さり気なく護衛騎士に注意を受けてしまう私。
「ごめんなさい。」
いざという時に身を潜められそうな場所も知っておきたかったのだけど、やはり裏道は危険ってことなのね。
次に図書館に行ったら、王都の街中を細かく記してある地図がないか探してみようかしら。
その数日後のテスト期間が終わった日、私は王宮図書館に来て、地図を広げて見ていた。
私が地図を探していることを司書さんに伝えると、すぐに探して出してくれたのだ。本当に親切な人達だわ。
しかしこの地図、すごい細かく書いてあるわね。裏の細い道ってこんなにあったなんて知らなかったわ。
うちのタウンハウスから、乗り合い馬車乗り場に行くための最短ルートとは…、えっと……
またまた夢中になって地図を見ている私。
「アナ、君はやはり家出を計画していたのだな。」
「…ひっ!…お義兄様、どうして?」
私が地図を見ているすぐ後ろには、なんとお義兄様が立っていたのだった。
いつの間に来ていたのよ?怖すぎだから!
「最近、義父上や義母上、私のことまで避けたりして、アナの様子が変だと思っていた。
外出が増えて、やたら徒歩で歩き回っていると報告を受けてはいたし、図書館では夢中になって何かを調べていることも知ってはいたんだが…。
アナ…、私は君の一番の味方だと言っただろう?
私はこんなにアナを愛しているのに、どうして分かってくれないんだ…。家出なんて許せるわけないだろう!
今日は今すぐに帰って私と話し合おう。」
お義兄様がサラっとシスコン発言を連発しているのが気になるけど、近くに人がいないから誰にも聞かれていないわよね。良かったわー。
…じゃなくて、お義兄様の顔が怖いし、あっさりと私の逃亡計画がお義兄様にはバレていたなんて。
私のこんなところを、お義兄様はおっちょこちょいだって言っているのね。
私が絶句している間に、お義兄様は手早く地図をたたむと、ガシッと私の手を繋いで歩き出す。
「ひっ…!」
これって連行?いや、こんな図書館で流石に逃げないわよ!
「地図をお返しします。ありがとう。」
隙のない笑みを浮かべで、司書さんに地図を返すお義兄様は怖かった。
ああ、その表情は一度目の時によく見たわね…。
図書館にいる他の利用客や司書さん達が、みんなこっちを見ているような気がする。
ふふっ!私のお義兄様、カッコいいでしょ?
カッコいいだけでなくて、勉強も出来るし、バイオリンも上手で剣術もすごいのよ!しかも、すごい優しいんだからー!
心の中で義兄自慢をする私だったが…
お義兄様は、もう私だけのお義兄様ではなくて、秘密の恋人に取られてしまったんだった…
ブラコンはどうしたら卒業出来るんだろう…。
一人で勝手に落ち込む私だった。
その後、邸に帰って来た私は、久しぶりにお義兄様と一緒にお茶をしている。
「アナは殿下とも知り合いだったのか?」
「知り合いだなんて、畏れ多いですわ。
実はこの前、ブレア様と学園でご一緒させて頂いた時に、殿下がブレア様に声を掛けて来られたのです。その時に、一緒にいた私のことを偶然覚えて下さっていたようですわ。
先程も、偶々お声を掛けて頂いただけなのです。」
「…殿下から令嬢に話し掛けるなんて、信じられないよ。
しかも、あんな風に楽しそうに令嬢と話をする殿下のお姿を、私は初めて見た。」
「友人のブレア様の知り合いだからと、気を遣って話し掛けてくれただけではないでしょうか?
殿下は親切そうなお方でしたし。」
私の話にお義兄様の表情が険しくなるのが分かった。
「アナ…。殿下とブレア公爵令息は、王家と筆頭公爵家という近い間柄だから、関係は悪くはないとは思うが、特別な友人と言えるほど仲が良さそうには見えない。
ブレア公爵令息は殿下の側近候補を辞退したらしいし、殿下は殿下で別の人間を近くに置いている。」
……はあ?
また一度目の人生とは違ったことが起きているのー?
一度目の時は、お互いを信頼し合っている仲間みたいな関係だったじゃないの!
頭が痛くなってきたわ…。
「アナ、どうした?そんな難しい顔をして。」
「…何でもありませんわ。
ところでお義兄様、今はテスト期間なのでしょうか?いつもより、お帰りが早いような気がしますわ。」
「テストは明後日からだな。」
なるほど…。テスト前だから殿下は生徒会がお休みだったということなのね。
「明後日からいつまでテスト期間なのでしょう?」
「三日間だ。そこまで難しいテストではなさそうだから、特別な勉強はしなくても大丈夫そうだな。」
お義兄様からしたら、何のテストでも簡単なのでしょうけど。
それよりも、今週はテスト期間ってことらしいから、殿下に会わないように図書館通いはやめよう。
「さすがお義兄様ですわ。私もお義兄様の義妹として、恥にならないように頑張りますね。」
「アナ、それは違う。私の方がアナの義兄として頑張らないといけないんだ。
アナは努力家で優秀だって、家庭教師の先生方がみんな褒めているんだぞ。
少しおっちょこちょいだけど、それがアナの魅力だしな。
だから、もっと自分に自信を持つんだ。」
おっちょこちょいは余計だけど、嬉しい言葉だわ。
一度目と違うことぼかり起こるけど、お義兄様の優しさはあの時と変わらないわね。
あの時のお義兄様も、至らない私を責めることはしなかったし、頑張りを認めてくれる優しい義兄だった。
ハァー。ブラコンがやめられそうになくて辛いわ。
世のブラコン達は、こんなにも苦しんでいるのかしらね…。
「ありがとうございます。
私、お義兄様の義妹で良かったですわ。」
「……それは良かった。」
次の日、図書館に行けない私は、買い物がしたいと言って、王都の街中を散策していた。
「お嬢様、あまり裏道に入るのはお勧め出来ません。」
さり気なく護衛騎士に注意を受けてしまう私。
「ごめんなさい。」
いざという時に身を潜められそうな場所も知っておきたかったのだけど、やはり裏道は危険ってことなのね。
次に図書館に行ったら、王都の街中を細かく記してある地図がないか探してみようかしら。
その数日後のテスト期間が終わった日、私は王宮図書館に来て、地図を広げて見ていた。
私が地図を探していることを司書さんに伝えると、すぐに探して出してくれたのだ。本当に親切な人達だわ。
しかしこの地図、すごい細かく書いてあるわね。裏の細い道ってこんなにあったなんて知らなかったわ。
うちのタウンハウスから、乗り合い馬車乗り場に行くための最短ルートとは…、えっと……
またまた夢中になって地図を見ている私。
「アナ、君はやはり家出を計画していたのだな。」
「…ひっ!…お義兄様、どうして?」
私が地図を見ているすぐ後ろには、なんとお義兄様が立っていたのだった。
いつの間に来ていたのよ?怖すぎだから!
「最近、義父上や義母上、私のことまで避けたりして、アナの様子が変だと思っていた。
外出が増えて、やたら徒歩で歩き回っていると報告を受けてはいたし、図書館では夢中になって何かを調べていることも知ってはいたんだが…。
アナ…、私は君の一番の味方だと言っただろう?
私はこんなにアナを愛しているのに、どうして分かってくれないんだ…。家出なんて許せるわけないだろう!
今日は今すぐに帰って私と話し合おう。」
お義兄様がサラっとシスコン発言を連発しているのが気になるけど、近くに人がいないから誰にも聞かれていないわよね。良かったわー。
…じゃなくて、お義兄様の顔が怖いし、あっさりと私の逃亡計画がお義兄様にはバレていたなんて。
私のこんなところを、お義兄様はおっちょこちょいだって言っているのね。
私が絶句している間に、お義兄様は手早く地図をたたむと、ガシッと私の手を繋いで歩き出す。
「ひっ…!」
これって連行?いや、こんな図書館で流石に逃げないわよ!
「地図をお返しします。ありがとう。」
隙のない笑みを浮かべで、司書さんに地図を返すお義兄様は怖かった。
ああ、その表情は一度目の時によく見たわね…。
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