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31 新しい恋人?
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お嬢様の専属メイドとして約一年が経過した。今ではメイドの仕事にも慣れ、お嬢様だけでなく公爵夫人やメイド長、他の使用人達からも働きぶりを認められ、給金も増えて充実した毎日を送っている。
貯金も順調に増えているし、実家に毎月仕送りをしているからなのか、田舎の両親が煩いことを言ってこないから嬉しい。このペースでお金を貯めていけば、もし一生独身だったとしても、何とか一人で生きていけるかな?
実家からの手紙には、仕送りで余裕が出来たから弟と妹を町の学校に行かせようか迷っているということが書いてあったし、これは今後も王都でしっかり働けってことよね?
『早く帰ってきて村の男と結婚しろ』とか言われると思っていたけど、今のところは結婚を急かしてこないから本当に良かった。
ある日、マリアを含むお嬢様の専属メイドや護衛騎士、従者達はメイド長と家令から重要な話をされる。
「クレアお嬢様と第二王子殿下の婚約が正式に決まりました。
お二人は一年後に婚姻し、第二王子殿下は臣籍降下されて公爵家に婿入りされます。
これから婚姻までの一年間、準備などでゴタゴタしますが各自しっかりと務めを果たすように」
「「はい」」
クレアお嬢様は第二王子殿下の婚約者候補として、定期的に王宮で開かれるお茶会で交流を重ね、正式に婚約者として選ばれたと聞いた。クレアお嬢様以外に、名門の侯爵家や伯爵家の令嬢たちが候補だったらしい。
第二王子殿下は見目麗しいだけでなく、人望も厚くて優秀、令嬢達の憧れの王子様で、殿下を狙う人は沢山いたと貴族出身のメイドたちが教えてくれた。
そんなに凄い方と大好きなクレアお嬢様が結婚するなんて、嬉しくてマリアの胸の中まで熱くなってしまう。しかし、そんなマリアにメイド達は……
「マリア、気を付けなさい。
第二王子殿下とお嬢様の婚約を僻む者は沢山いるわ。それだけでなく、公爵家と王家の繋がりを警戒する家門もあるの。
お嬢様だけでなく、専属メイドである私達も狙われる可能性があることを忘れないでね。
知らない人物が近付いてきても信用しないこと。お嬢様を陥れるために私達から秘密を聞き出そうと、カッコいい男の子が話しかけてくるかもしれないわ。騙されてお喋りをしてはダメよ」
「はい。気を付けます」
貴族の世界って本当に怖いと思った。大好きなお嬢様の幸せを願いながら純粋に祝福したいのに、婚約に横槍が入りそうだから気を付けなければならないだなんて。
貴族はお金持ちで美味しいものを食べて、綺麗な格好でいられるから幸せってわけではないのね。
お嬢様の婚約が決まった後、マリアは今までと変わらず忙しい毎日を送っていた。
休みの日には王都の街中にある平民も利用可能な図書館に行き、のんびりと読書をすることで気分転換をしている。図書館の帰りにはお気に入りのカフェに行き、美味しいスイーツとお茶を楽しんだ後、アンにお土産を買って帰るのだ。
私はもう田舎で生活できないわね。今の生活が本当に幸せだもの。
その日の休日も、図書館の帰りにカフェで一人でお茶をしていた。
すると、窓側のテーブルに座る一組のカップルらしき男女が目に入ってきた。
あの女の子、どこかで見たことがあるような……
「ドーリィー、お茶が終わったら次はどこに行きたい?」
「お買い物に行きたいわ。欲しい物があるの。
今度、アルのご両親に挨拶に行くでしょう? その時に着る服が欲しいのよ」
ドーリィーって……、まさかテッドの恋人だったドリスさん?
そうよ、間違いない。でも、一緒にいるのは騎士服を着ているけどテッドではないわ。アルって呼んでいるし、テッドとは終わってしまったのね。
マリアは意外と冷静だった。昔のマリアだったら感情を爆発させ、ドリスを睨みつけて大騒ぎしていたかもしれない。しかし、公爵家で働き色々な人と出会って社会経験を積んだことで、大人に成長して落ち着いた性格になった。
そして、テッドに未練はないので正直どうでもよかった。
あのテッドのことだから、新しい恋人を作ってそうね。騎士って凄いって聞くもの。
私達が育った田舎では、恋人を取っ替え引っ替えは出来なかった。そこまで沢山の人がいなかったし、狭い村でみんな知り合いだから、何を噂されるか分からない。
でも、ここは大都会の王都で若い男女が沢山いて知らない人ばかり。恋愛は自由に出来るから、テッドも好きにやっているのね。
ドリスに気付かれたくないマリアは、急いでお茶を飲んでさっさと帰ることにした。
貯金も順調に増えているし、実家に毎月仕送りをしているからなのか、田舎の両親が煩いことを言ってこないから嬉しい。このペースでお金を貯めていけば、もし一生独身だったとしても、何とか一人で生きていけるかな?
実家からの手紙には、仕送りで余裕が出来たから弟と妹を町の学校に行かせようか迷っているということが書いてあったし、これは今後も王都でしっかり働けってことよね?
『早く帰ってきて村の男と結婚しろ』とか言われると思っていたけど、今のところは結婚を急かしてこないから本当に良かった。
ある日、マリアを含むお嬢様の専属メイドや護衛騎士、従者達はメイド長と家令から重要な話をされる。
「クレアお嬢様と第二王子殿下の婚約が正式に決まりました。
お二人は一年後に婚姻し、第二王子殿下は臣籍降下されて公爵家に婿入りされます。
これから婚姻までの一年間、準備などでゴタゴタしますが各自しっかりと務めを果たすように」
「「はい」」
クレアお嬢様は第二王子殿下の婚約者候補として、定期的に王宮で開かれるお茶会で交流を重ね、正式に婚約者として選ばれたと聞いた。クレアお嬢様以外に、名門の侯爵家や伯爵家の令嬢たちが候補だったらしい。
第二王子殿下は見目麗しいだけでなく、人望も厚くて優秀、令嬢達の憧れの王子様で、殿下を狙う人は沢山いたと貴族出身のメイドたちが教えてくれた。
そんなに凄い方と大好きなクレアお嬢様が結婚するなんて、嬉しくてマリアの胸の中まで熱くなってしまう。しかし、そんなマリアにメイド達は……
「マリア、気を付けなさい。
第二王子殿下とお嬢様の婚約を僻む者は沢山いるわ。それだけでなく、公爵家と王家の繋がりを警戒する家門もあるの。
お嬢様だけでなく、専属メイドである私達も狙われる可能性があることを忘れないでね。
知らない人物が近付いてきても信用しないこと。お嬢様を陥れるために私達から秘密を聞き出そうと、カッコいい男の子が話しかけてくるかもしれないわ。騙されてお喋りをしてはダメよ」
「はい。気を付けます」
貴族の世界って本当に怖いと思った。大好きなお嬢様の幸せを願いながら純粋に祝福したいのに、婚約に横槍が入りそうだから気を付けなければならないだなんて。
貴族はお金持ちで美味しいものを食べて、綺麗な格好でいられるから幸せってわけではないのね。
お嬢様の婚約が決まった後、マリアは今までと変わらず忙しい毎日を送っていた。
休みの日には王都の街中にある平民も利用可能な図書館に行き、のんびりと読書をすることで気分転換をしている。図書館の帰りにはお気に入りのカフェに行き、美味しいスイーツとお茶を楽しんだ後、アンにお土産を買って帰るのだ。
私はもう田舎で生活できないわね。今の生活が本当に幸せだもの。
その日の休日も、図書館の帰りにカフェで一人でお茶をしていた。
すると、窓側のテーブルに座る一組のカップルらしき男女が目に入ってきた。
あの女の子、どこかで見たことがあるような……
「ドーリィー、お茶が終わったら次はどこに行きたい?」
「お買い物に行きたいわ。欲しい物があるの。
今度、アルのご両親に挨拶に行くでしょう? その時に着る服が欲しいのよ」
ドーリィーって……、まさかテッドの恋人だったドリスさん?
そうよ、間違いない。でも、一緒にいるのは騎士服を着ているけどテッドではないわ。アルって呼んでいるし、テッドとは終わってしまったのね。
マリアは意外と冷静だった。昔のマリアだったら感情を爆発させ、ドリスを睨みつけて大騒ぎしていたかもしれない。しかし、公爵家で働き色々な人と出会って社会経験を積んだことで、大人に成長して落ち着いた性格になった。
そして、テッドに未練はないので正直どうでもよかった。
あのテッドのことだから、新しい恋人を作ってそうね。騎士って凄いって聞くもの。
私達が育った田舎では、恋人を取っ替え引っ替えは出来なかった。そこまで沢山の人がいなかったし、狭い村でみんな知り合いだから、何を噂されるか分からない。
でも、ここは大都会の王都で若い男女が沢山いて知らない人ばかり。恋愛は自由に出来るから、テッドも好きにやっているのね。
ドリスに気付かれたくないマリアは、急いでお茶を飲んでさっさと帰ることにした。
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